フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

カンピオナート2005〜2006。

10年ほど前まで、
イタリア・サッカーのカンピオナートは
世界で最も美しく、最も裕福で、
そして最も道が険しいものでした。

2005年〜2006年のイタリアのカンピオナートは、
8月27日の土曜日に開幕します。
(正確に言うと土曜日に行われるのは繰り上げ2試合で、
 それ以外の多くの試合は日曜日に行われますが。)

今回のカンピオナートは
“世界で最も美しいもの”となるでしょうか?
──ちょっと難しいでしょう、
たしかに“役者たち”の中には
バロンドール最近の受賞者である
ネドヴェドとシェフチェンコも居ますけれども。

そして“最も道が険しい”とも言えません。
優勝をかけて闘うことになるのは
ユベントス、ACミラン、インテルの
3チームだけであろうことが確実だからです。

“裕福さ”においても、
レアル・マドリードやチェルシーのほうが
より高い給金を支払っていることを見れば、
もはや世界一でないことは明らかです。



ベルルスコーニの大きな買い物。


ただし、イタリアのカンピオナートが
テレビ的に世界一であることは確実です。

イタリアサッカーの歴史の中で
こういう事態は初めてなのですが、
今年から、試合直後に映像を放映するのは
Rai(国営放送局)ではなく、
民放のメディアセットという局になります。
この局は、イタリアの首相であり、
偉大なACミランのオーナーであり、
メディア王でもあるシルヴィオ・ベルルスコーニが
所有するネットワークのひとつです。

スポーツと政治に関するベルルスコーニの言動を、
ここでも何回も書きましたね。
イタリアでは来春に選挙があり、
首相に再選されないこともあり得るベルルスコーニが
様々な機会に
「私はイタリアを勝ち組にする、
 まさに私のACミランのように」
とくり返し言っていることも。

この発言は、ACミランと同様に
イタリアサッカーの大チームである
ユベントスやインテルの経営陣たちのお気に召しません。
まさに、
「多くの新聞や、
 あらゆるテレビをコントロールすること」で、
ベルルスコーニが国の政治だけでなく
サッカー界の政治でも
途方も無く大きな権力を持つであろうことを、
彼らは危惧しているのです。

いっぽう「ベルルスコーニのACミラン」は、
オーナーである彼を実質的に援護することが
要求されています。
つまり彼の発言を実行することで、
ベルルスコーニの再選へのはずみを
つけなければなりません。
そして実際に、ACミランが優勝するだろうと
多くの人が考えています。
昨年のカンピオナートでは
ユベントスに完璧に打ち負かされたにもかかわらず。

ACミランはカンピオナートでも
UEFAチャンピオンズ・リーグでも、
昨年度は2位に甘んじました。
そしてチーム強化のために、
今年のカルチョ・メルカートで
アルベルト・ジラルディーノと
クリスチャン・ヴィエリという、
ふたつの大きな買い物をしました。

イタリア政府の首相に、
あと一息で逃した大きな喜びを与えるための、
ひとりの若者と、
ひとりの年配者(サッカー界では)というわけです。

ユーベとインテルの買い物は?


ACミランが必要に迫られて強化したのなら、
もともと非常に強いチームであるユーべも
ヴィエイラを買うことで一段と強化しています。

この数年間そうであったように、
スクデット獲得のための決戦は
今年もACミランとユーべの対戦になるのでしょうか?
その対戦は、あり得る事ですが、確実とも言えません。
イタリアサッカーの3番手に控えるインテルも、
カルチョ・メルカートで大量の買い物をしています。
いつもそうとは言えませんけれど、
たぶん今回は良い買い物だったと思います。

インテルは昨年度は
コッパ・イタリアで優勝していますが、
今年度は何かもっと重要な勝利が欲しいところです。

石油業者でありインテルのオーナーである
マッシモ・モラッティが買ったのは、
レアル・マドリードから
ソラーリ、サミュエル、フィーゴの3人、
ウディネーゼからチームの中心的人物ピッザーロと
ゴールキーパーのジュリオ・セザールです。
セザールは昨年、
ブラジル代表としてアメリカ杯に勝利しました。
60年代に、やはりインテルと共に
可能な限りの勝利をおさめた
父親アンジェロのように、
息子マッシモはイタリアにおいても
ヨーロッパにおいても
ずば抜けた存在にもどりたいと思っています。

イタリア・カンピオナート2005〜2006。
ユベントス、ACミラン、インテルの
優勝争いとなるでしょうか。
それとも逆境から這い上がって、
スクデット争奪に参戦するチームが
現れるでしょうか?
開幕は間近です。

訳者のひとこと
Raiはイタリア国営放送局ですが、
コマーシャルも流します。
日本では、ひとりの人物が
多数の放送局を持つというのは
考えられないことですね。
あ、もしかして日本のだれかさん、
ベルルスコーニのようになりたいのでしょうか?
気が付いたら首相になっていたりして‥‥?
翻訳/イラスト=酒井うらら

2005-08-23-TUE

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