フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

2005年のデル・ピエロ。


アレッサンドロ・デル・ピエロが、
おしゃべりだったことはありません。
自分をインタビューしてもらおうとして
知り合いのジャーナリストに頼んだり、
人気の高い番組に呼んでもらおうと
テレビ局相手にぺこぺこしたこともありません。
イタリアのティフォーゾたちから
とても愛されてきたサッカー選手の
アレッサンドロ・デル・ピエロは、
もちろん今も愛され続けています。
彼はユベントスのアイコンであり、
キャプテンであるだけでなく、
もっとそれ以上にシンボルそのものなのです。

デル・ピエロを特別扱いしない
カペッロ監督。


ユベントスは今年、
監督がファビオ・カペッロになりました。
この監督はデル・ピエロを特別扱いしません。
彼は「優秀なひとりの選手」ではあるが、
他の選手たちと同じだ、という判断です。
デル・ピエロは特別な男だから
彼の要望は何としても満たさなければならないとは、
思っていないというわけです。
カペッロは、カンピオナートや
UEFAチャンピオンズ・リーグの試合中に、
デル・ピエロを他の選手たちよりも多く交代させました。
彼をスターティング・メンバーに入れておきながら、
途中で他の選手と交代させることが27回もあったのです。
それでもアレッサンドロ・デル・ピエロは、
カペッロ監督にむかって議論をふっかけたり、
暴言を吐いたり言い逆らったりすることも、
ただの一度もありませんでした。

そして5月8日の日曜日、
デル・ピエロは見事に雪辱をはたしました。

この日、ユーべが宿敵ACミランに勝利した試合で、
デル・ピエロはピッチ上で文句なく最優秀な選手でした。
そして今、この白黒シャツのチームは堂々と
28個めのスクデットに向かって進んでいます。

デル・ピエロは、ユベントスの勝利の立て役者です。

その試合の行われたサン・シーロ競技場では、
ボールに触れる彼の能力の高さや
ドリブルで相手をかわしながらすり抜けて行く様子、
トレセゲに勝利のゴールを決めさせた
彼の素晴らしいアシストぶりなどに、
観衆たちが酔いしれました。

デル・ピエロは一瞬にして10才くらい
若返ったように見えました。
完治までに1年間以上もかかった、
膝のひどい故障を負う以前の、
世界の偉大なサッカー選手のひとりに
数えられていた頃の彼が、帰って来たのです。

日本のチームへの譲渡は、
どうやらなさそうですね‥‥。


2002年の日本でのW杯や、
良いプレイのなかった昨年のポルトガルでの
ヨーロッパ選手権の後では、
デル・ピエロのサッカー人生における
秋が始まったかのように見えました。
実際、シーズン中のある時期、
カペッロ監督はトレセゲや
イブラヒモヴィッチを好んで使い、
デル・ピエロ自身もあきらめてしまったのかと
思えるほどでした。

その後、トレセゲが負傷し、
デル・ピエロが続けてプレイするようになりました。
(先に書いたように、
 ほとんどいつも交代させられましたけどね)
そして、
彼がユベントスを後にするという噂は、
どこかへ消えてしまいました。

彼が日本のあるチームに譲渡される、
という話もささやかれていました。
デル・ピエロは日本でとても人気がありますから、
ユベントスやイタリアサッカーの東洋での親善大使の役を
果たせそうですからね。
日本へ行ったとしても、ユベントスには
数年後に指導者として、また戻れるだろう、
というような話でした。
でも今や事態は変わりました。
デル・ピエロはユベントスに
ふたたびスクデットを勝ち取らせることの
できる選手らしいというわけで、
彼がユーべを出て行くなどということは、
もはや論外となりました。

それどころか、
デル・ピエロにもどってきた若々しさが、
ここ数カ月というもの
ローマからのカッサーノ購入を協議していたユベントスの、
メルカートでの駆け引きをさえ左右するかも知れません。

7月の、カルチョ・メルカートの熱い日々に、
カッサーノがユベントスに買われるとしても、
その価格は今から数週間前まで予想されていたものより
ずっと安くなる可能性が高いです。

いまやユーべにとってカッサーノは
「どうしても必要な選手」でもなさそうです。
若返ったデル・ピエロがいますからね。
彼の「復活」は、次期メルカートで
大きな買い物をしたも同然の計算になりそうです。

 

訳者のひとこと
5/8の試合は、首位に並んだ
ユーべとACミランの直接対決でした。
この記事にあるようにユーベが勝ち、
この時点では僅差で1位に立ちました。
3位はインテルですが、
得点はユーべやACミランを上回っています。
なのになぜインテルは3位なのかというと
失点も多く、引き分け数がすごく多くて、
上位2チームに勝点で離されています。
大量得点でも大量失点とは、
インテルらしいと言えばインテルらしい?
翻訳/イラスト=酒井うらら

2005-05-16-TUE

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