フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

ブラジル人選手たちの
「想いあふれて」。


イタリアには故郷を遠く離れた
ブラジル人たちもたくさんいますが、
彼らは自分たちが道に迷い、失望し、
親から離れた子どもみたいに感じ、
彼らの毎日の生活も憂鬱な日々の連続、
ということになる場合が少なくありません。
それはそうでしょう、
外国で暮らすということは
不便なこともいっぱいありますから。

彼らはこの感情を言い表わすのに
「サウダージ」という言葉を使います。
うーん、この言葉はイタリア語にも
他のどの国の言葉にも、翻訳不可能ですね。

「ノスタルジー」よりも強いのですが、
「悲しみ」よりは甘いニュアンスもあります。
うーん、そうだな、ジョアン・ジルベルトの
「想いあふれて」を聞いてもらえると
そんな気分がおわかりになるかもしれません。

そして「サウダージ」に落ちこんだ
ブラジル人が思うことは、ただひとつです。
あの美しい砂浜や、音楽、トロピカルな色、
どこにでもいる人たちの根っからの陽気な国。
──ああ、あそこに帰りたい、ってね。


だからでしょうか、ブラジル人サッカー選手たちが
イタリアのチームと契約する場合に、
彼らは他のブラジル人選手たちを
一緒に連れてきたがります。
サンバのディスクや、
凍ったように冷たいビールや、
忘れ去ることの出来ない
思い出の数々を共有できる仲間が
必要だというわけです。

彼らは仲間どうしで笑いあい、ふざけ、楽しみ、
彼らの住むイタリアの街に、
まるでリオ・デ・ジャネイロみたいな空気を
まきちらします。

イタリアのブラジル人たちといえば‥‥


ACミランにはディーダ、カカ、カフー、
セルジーニョなど、
多くのブラジル人が在籍しています。

彼らはいつも練習に一緒にあらわれ、
腕を組みあって笑い話をしながら、
北の街ミラノのこの寒さの中にも
コパカバーナの太陽があるみたいに、
陽気に振舞っています。
ぼくはこの目で、それを見て知っています。

一方、ローマ時代の最も有名な皇帝と
同じ名前のブラジル人選手アドリアーノは、
ミラノのもうひとつのチームである
インテルの選手です。
彼はティフォーゾたちのアイドルであり、
くりかえしプレイし点をとっているのですが、
彼自身が楽しんでいるようには思えません。

そのアドリアーノがレアル・マドリードに移籍か?
というニュースを、
1月31日付けでここに書きましたね。
ことを憂慮したマンチーニ監督と
チームオーナーのモラッティは話し合いました。
レアル・マドリードにはブラジル人である
ロナウドとロベルト・カルロスもいる。
このこともアドリアーノの気持ちを動かすかもしれない。
彼にレアルからのオファーのことを忘れさせる為には、
彼が陽気になれる解決法を見つけなければ、
という結論に落ちついたようです。

「ブラジル人たちは陽気と相場が決まっているが
 アドリアーノは悲しげだ。
 ブラジル人たちはサンバを聴きながら暮らすらしいが
 アドリアーノはどんなタイプの音楽にも
 興味がないように見える」

マッシモ・モラッティは
レアル・マドリードからのオファーが来ることを
とても心配しているのです。
マンチーニ監督も同様で、
インテルの幸運が
アドリアーノのゴールに
かかっていることを知っています。

アドリアーノをインテルに
とどまらせる方策とは?


インテルは他にも問題もかかえていますが、
とにかく「アドリアーノの問題も」解決しようと模索し、
彼のベビーシッターをしてくれるようにと、
1月から2月にかけて2人のブラジル人を購入しました。
彼らは6月から正式に
モラッティのチームの選手となります。

2人ともアドリアーノの友だちです。
彼らは一緒に、昨年7月のアメリカ杯で
優勝しています。

最初に購入したのは、ゴール・キーパーでした。
アドリアーノがローマ時代のヒーローと
同じ名前をもっているように、彼もまた、
むしろもっと有名なヒーローと同じ名前の
ジュリオ・セザール(ジュリアス・シーザー)です。
モラッティはフラメンコから彼を購入し、
手続き上すぐにインテルに
登録することができなかったので、
6月まで彼をキエーヴォに貸すことにしました。

二番目の購入はディフェンダーのルイザオで、
600万ユーロでリスボンのベネフィカから買いました。

ルイザオもまた条例の定めに従って、
インテルの選手になれるのは6月からです。

そして、このニュースは2月17日に
アドリアーノに届けられました。
その日は彼の誕生日ですから、
良いプレゼントになったことでしょう。

このブラジル人アタッカー、
アドリアーノは感激し、
インテルへの永遠の愛を誓ったそうです。
「ここが、ぼくがずっとプレイし続けるチームだ、
 ぼくはどこにも行かない」
彼は目に涙を浮かべて、そう言ったらしいです。

モラッティとマンチーニは
以前よりは心おだやかになったろうと思います。
現時点で、インテルは6月から
4人のブラジル人選手を擁することになりました。
アドリアーノ、ゼ・マリア、
ジュリオ・セザール、そしてルイザオです。

そしてアドリアーノは、
サンバやボサノバのリズムに囲まれれば、
もう「サウダージ」に苦しまないでしょうし、
ミラノの街がリオ・ディ・ジャネイロみたいに
なるかもしれません。
向こうよりかなり寒いですけどね。



訳者のひとこと
ミラノの冬は本当に寒いです。
毛皮やブーツも、おしゃれのためというよりは
「必需品」なのねというくらい、寒いです。
お天気も悪いし、湿度も高いし、雪は
多くはありませんが、ときどきドカッと来ます。
そんなミラノの冬には、
コーンスターチでちょっととろみをつけた
ホット・チョコレート(チョコラータ・カルダ)が
おすすめです。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2005-02-21-MON

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