フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

トッティの処分。


対戦相手に勝つために、
頑固で実直で強烈な手段をもちいるのが
スポーツというものですが、
そこに不正があってはいけません。

相手より弱いサッカー選手が
しばしばわざとやるファウルには、
押す、足をすくう、時には殴る、などもありますが、
どの行為も審判によって罰せられます。
イエロー・カードやレッド・カードが出されますね。

プレイ上のはずみで起きたファウルは、
そのファウルを偶然にうけた相手の選手に対して
無礼な事ではありますが、
カードが出されたとしても、
心情的には大目に見てもらえるものです。
はずみであって、悪意はなかったということで。

一方で、つばを相手に吐きつけたとなると、
事は選手に対するというよりは、
ひとりの人間に対する無礼となってしまいます。

あきらかに相手をねらって、つばを吐きかける行為は、
根底的な侮蔑を意味しますから、
スポーツマンの取りうる行為のなかで
最も憎むべきことです。
スポーツの対戦は喧嘩ではありません。

ところが、ローマの王子フランチェスコ・トッティが、
これをやってしまいました。

「一瞬のあいだ、
 コントロールを失いました‥‥」


6月14日にポルトガルで行われた
UEFAヨーロッパ選手権の試合中のことでした。
世界的レベルのチャンピオンタイトルのかかる、
神聖ともいうべき大事な試合中に、です。
トッティにつばをかけられたのは、
デンマーク人選手のパウルセンです。

その時は誰もそれを目撃しなかったので、
この憎むべき行為は数日のあいだ
本人たち以外の誰も知りませんでした。
しかしその後、6月16日の朝、
デンマークのテレビ局が
このおぞましい行動を放映したのです。



この放映でフランチェスコ・トッティの、
スポーツマン精神にもとる行為が発覚し、
彼はヨーロッパサッカー組織の最高峰である
UEFAの審判にかけられ、
3日間の資格剥奪に処せられました。

この行為はトッティのイメージを汚してしまいました。
その日までの彼のイメージといえば良いものばかりで、
サッカーのプレイがうまい、
子供にやさしい
(大成功を納めた2冊の『笑い話』の本の売り上げは
 ユニセフに寄付されています)
何に対してもおおらかで自由でこだわらない、などなど。
(もちろんそんな彼をよく思わない
 皮肉屋も、たくさんいることはいるのですが。)

しかし、パウルマンにつばを吐きかけたという
おぞましい行為はヨーロッパ中のテレビに流され、
フランチェスコ・トッティのイメージを
深々と傷つけたのです。



彼はテレビカメラの前であやまりました。

「ぼくは自分が何をしているのか
 理解していませんでした。
 ぼくの同僚と、イタリアや総ての
 スポーツファンのみなさんに、
 おわびします。
 ぼくは怪物ではありません、
 ただの若者なんです。
 一瞬のあいだ、
 神経のコントロールをうしないました。
 どうぞ僕を許して下さい」

そのとき、チャンピオン・トッティは子供のようでした。
流れた涙はにがかったことでしょう。
彼は後悔しているようでした。

しかし、イタリアが彼を許したとは思えません。
彼を許すには長い時間がかかるのではないでしょうか。


訳者のひとこと
今週は先に速報したインテルの監督交代の、
もっと詳しい内容が来るのかと思いきや、
トッティガ事件を起こしていたのですね。
トッティをかばうわけではありませんが、
彼の属するローマの経営難や
彼自身の移籍問題もあって、
精神的にピリピリ状態なのかもしれませんね。
翻訳/イラスト=酒井うらら

2004-06-21-MON

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