フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

チャンピオンたちのボランティア。

こんにちは、フランコです。
みなさんはどんな新年を過ごされましたか?
不景気で、お祭り気分になれなかった、って?
イタリアも、それは同じです。

不景気とはいえ、このページを訪れるみなさんは、
まだまだ余裕があると思うのですが、
世の中には、本当に貧しい人々が増えつつあります。
僕は、少しでも余裕のある人は誰でも、
お金持ちならなおさらのこと、
自分より恵まれていない人々を援助することは、
道徳面からしても「義務」と言えるだろうと思っています。

イタリアのサッカー選手たちは、
この事についてどう思っているでしょうか?
彼らについて日頃言われているのは、
若く、ちやほやされ、甘やかされ、偶像化され、
その上に美しく、裕福であり、
従ってわがままである‥‥などなど。
どうも褒め言葉は多くないようです。

確かに彼らは、世界のなかでも
とりわけ裕福でしょう。
金持ちであることに慢心している選手は
いないとは言い切れませんが、彼らの多くは
「稼ぎ過ぎじゃないか」と
少々申し訳なく思ってもいるのです。

うーん、どうしましょうか?

「そうだ、僕らのように
 幸運をつかめないでいる人たちを助けよう!!」
というわけで、多くの選手たちが率先して
慈善のための行動を起こしたのです。
そうすることで、実は、
「僕らは同じ世代の中では通常の何百倍も稼いでいる。
 僕らは、特別な存在だ。」
という奢りの感情から彼ら自身のピュアな魂を
救いだすことにもなるのです。
先に書いた悪評の数々から自分を引き離し、
本来の自分たちの姿を
とりもどすことができるのかもしれません。

今週は、そんな動きをレポートしてみます。

 

ミランはブラジルに、
インテルはアルゼンチンに、
ユベントスはイタリアの子供たちに。



ローマのアイドルであるフランチェスコ・トッティは、
自分についてイタリアで流れている笑い話を自ら集め、
本にして出版し、売り上げをユニセフに寄付しました。
去年のことです。

それで終った訳ではありません。
その後、彼はFIATのスポットCFの契約金も、
障害を持つ子供たちの学校に贈りました。
このCFは、イタリアの全テレビ局で、
毎日のように流れています。
彼のこの行動は大変な評判をよび、
大成功を納めましたから、
彼の仲間たちも早速これに習いました。

ACミランでは、
ブラジルの孤児たちを援助すべく
「ミラン基金」を立ち上げました。
日本でもプレイしたことのあるブラジル人の
レオナルドが、目下この基金の会長です。
マルディーニ、シェフチェンコ、ガットゥーゾ、
インザーギを始めとするミランの全員が、
レオナルドが会長をつとめるこの基金に、
毎月の給金の一部分を寄付しています。

インテルでも、
これに近い行動を起こしました。
ミランがブラジルの子供たちを助ける一方で、
インテルは多方面に少しづつ寄付を分配しているのですが、
アルゼンチンに向けて特に多くを贈っています。
インテルの今のキャプテンである
ハビエル・ザネッティはアルゼンチン人ですからね。
みなさんも御存じでしょう、アルゼンチンは今、
大変な経済的困難のまっただ中にあります。
その結果、家もなければ食べ物にも事欠く子供たちが、
半端じゃない数でいるのです。
ザネッティは、このことをよくよく知っています。



インテルの選手たちは、
キャプテンの祖国の子供たちのために
立ち上がりました。
ヴィエリ、マテラッツィ、トルド、レコバなど
もちろんみんなが協力していますよ。
中には里親になった選手も何人かいます。
子供たちはアルゼンチンに居続ける形で、です。
彼らは特に貧しい家庭に毎月の仕送りをします。
そして、アルゼンチンの貧しい家庭の子供たちは、
遠いイタリアでサッカーをしながら大金を稼ぎ、
自分たちを援助してくれる会ったこともない若者たちに、
手紙や写真を送って感謝しています。

ユベントスは、
この2チームとは異なる、第3の道を選びました。
彼らはイタリアの病気の子供たちを
援助することにしたのです。
昨年のことになりますが、
デル・ピエロ、ブッフォン、トゥラム、
トレセゲ、モンテーロが、
なんとカンツォーネのCDを吹き込みました。
その売り上げは、
ジェノヴァのガスリーニ病院に寄贈されました。
今年は何をするかというと、
彼らの写真で2004年版カレンダーを作りました。
その売り上げをトリノの聖アンナ病院に寄付する予定です。
この病院では貧しく病んだ子供たちの治療を続けています。
その数は年間5000人を上回るそうです。

試合に勝つこと、より優れたプレイをすること、
サッカー選手として登りつめることなど、
ともすれば他者を蹴り落とす立場におかれることで、
他者のために何かをするという意識を失いがちな
イタリアのサッカー選手たちに、
変化が起こりつつあるということです。

良いことだと、僕は思います。
貧しく病んでいる人に善行を施すのは、
単にそうすれば天国が近付くというようなことに終らず、
善意を持って行動する本人の意識をも整えます。
人間的に整った意識は、
プレイにもきっと反映されるはずです。
気持ちの良いプレイがたくさん出てくると良いですね。


訳者のひとこと

昨年イランでの自爆テロの犠牲になった
イタリア人の中にも、イランの孤児の
里親になっていた人がいたのです。
キリスト教的な道徳感が根底にあると
思いますが、不法入国してくる難民の
扱いに、苦慮しつつも最善を尽そうとする
真摯な面がイタリアという国にはあります。
派手でお気楽、ではイタリアは表し切れません。

翻訳/イラスト=酒井うらら


フランコさんのくわしいプロフィールはこちら、

フランコさんのホームページはこちらです。(日本語もあるよ!)

フランコさんへの感想などは、
メールの表題に「フランコさんへ」と書いて、
postman@1101.comに送ろう。

2004-01-12-MON

BACK
戻る