フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

イタリア政府、サッカーに介入!


イタリアという国には、
サッカー以上に大切なことがないんだろうか???
と、僕は今、考えこんでおります。

で、それに対する僕の答えは、
いまのところ「ノー」。
イタリアという国には、
サッカー以上に大切なことなんてありません、です。
なにしろ、セリエA(日本でいうとJ1ですが)の
新シーズン開催日を8月30日(土)に早める、
と決めたのは「イタリア政府」なんですから。
(他の試合は通常通りに日曜日に開かれます)
僕の書きまちがいでも、
みなさんの読みまちがいでもありません。
イタリア政府です。
来期のカンピオナート(リーグ選手権)の
運命を決定づけたのは、
ほかならぬ「イタリア政府」なのです。
どうです、イタリアという国にとって
サッカー以上に大切なことはない、
と言った意味が、わかっていただけましたか?

政府、サッカー裁判の判決も
「無効」にする!


政府はこの他のことでも、サッカー界に介入しています。
8月19日には、新たに特別な法律を立ちあげました。
この法律によると、カンピオナートでの
クラスの昇格、降格についての
裁判所からの判決は無効になってしまいます。
例えば、裁判所の下していた
「ナポリ(チーム)はセリエCに降格、
 カターニャはセリエBに残留」という評決が
無効となりました。

この件についての、もともとのカンピオナート側の判断は、
裁判所の判断とはことなり
「カターニャはBからCへ降格、ナポリはBに残留」
というものでした。

カターニャは、ある試合に資格のない選手を
起用したということで、
敗戦ならびに降格、が申し渡されていたのです。
これを拒否したのが、カターニャとペルージャの
両チームのオーナーであるルチアーノ・ガウッチです。

ガウッチは、その選手には資格があったとして、
裁判を起こし、勝訴していました。
その判決を、政府が立ちあげた新法律が
無効にしてしまった、ということです。

セリエBはセリエAと同様に、
イタリア全国リーグのプロ選手権です。
セリエCへの降格は、すなわち、
莫大な経済的損失を意味します。
(Cリーグになると、イタリア南北の
 2リーグに分かれます)
その選手に本当に資格があったのかどうかは別としても、
政府が相手では、
しょせんガウッチ氏に勝ち目はありません。
でも、なんで政府が? という疑問には、
もっと先でお答えしましょう。

政府が新法律を立ちあげた24時間後のこと、
さらに大きな衝撃がイタリアサッカー界を襲います。
フェデレーションが
「セリエBの登録チームを24チームに増やす」
と発表したのです。
しかもその24チームのなかに、
C2からやっとC1に昇格したはずだった
フィオレンティーノが、含まれていました。

これはいったいどういう事だ?!
と、火をふいたのは、下位に居並ぶ弱小チームたちです。
フィオレンティーナのデッレ・ヴァッレ会長が
ベルルスコーニ政権の支持者だからなんだ、
えこひいきもいいところだ、と怒っているわけです。

そして、どういう訳か、新シーズン開幕日まで
政府が勝手に早めてしまったのです。
フェデレーションは、すでに、いつも通り日曜日から、
と予定を公表していたのですから、
この決定はイタリア・サッカー界を、
これ以上ないカオス(渾沌)におとしいれました。

セリエA? セリエB?
さっぱりわからないイタリアの夏。


混乱のもとは、まだあります。
実はローマ市のチームであるローマが、
来期のセリエAでのカンピオナート参戦に必要な
経済的裏付けを、
期日までに提出していなかったのです。

規約的には、このローマの不手際は、
セリエAからは抹消、
セリエC2に転落、という結果を生んだはずでした。

ここでも、そんなはずはない事が起こります。
ローマはセリエAに留まるのです。
ローマはイタリアサッカーにとって、
あまりに重要なチームなので、例外とする、ということで。
ローマのセンシ会長が、提出が遅れたのは
銀行のせいだと弁解したからでもあります。
彼によれば、彼こそは、
支払いを保証しておきながら実際には
必要な額を振り込んでくれなかった銀行何軒かに
だまされた被害者であるとのことでした。

とにかく、8月19日までは、
どのチームがセリエBなのか、
いったいローマはセリエAに残れるのか、
だれがどうなって要するになんなのか、
なにも分からないぐちゃぐちゃな状態だったのです。

そこで政府が乗り出し、強引な介入におよんだ訳です。
まず、サッカーに関するあらゆる要素についての
総ての権限をフェデレーションに帰する、
という新しい法律を作り、
それによって、逆に裁判所については、
サッカーに関する限り一切の権限を認めない、
としたのです。
つまり、今でている判決も無効ですよ、と。

そして、フェデレーションの
「セリエB登録24チーム」の発表へと、
ばたばたと事が展開しました。

これはこれで新たなカオスを生みましたが、
とりあえず、数々の問題の責任をとわれていた
フェデルカルチョ(サッカーフェデレーション)会長の
フランコ・カッラーロ氏は、
政府が介入して救ったという事態です。
まったくもって「イタリア的」な展開です。

ひらたく言ってしまえば、
ACミラン会長のベルルスコーニが、
彼にとって都合の良いカッラーロを、
政府の頭の首相という立場を使って、
フェデレーション会長の座に留めおいた、
ということです。

ミランの会長はベルルスコーニで、
副会長がリーグ会長でもありますから、
なんらかの命令を下せる立場の人物は、
あらかたミランによって調整できる配置になりました。
こんな状態で、イタリアサッカーの来期のリーグ戦、
カンピオナートは正規の姿を保てるんでしょうか?

政府の介入と新法律は、たしかに様々な混乱を整理し、
カンピオナートの新しいシーズン開幕への
道をひらきました。
でも、本来のイタリアサッカーにふさわしい
清廉潔白な姿はどこへ行ってしまったのだろうと、
僕は心配でなりません。

訳者のひとこと

‥‥‥‥‥‥。
これは困りましたね。
外国人の私といたしましては
「内政干渉」的な発言はできないし、
かといって、我が愛するイタリアよ、
いったい何が起こっているの? という感じです。
金と権力とカリスマ性、
どこぞの首相には無いものばかり・・・か?

なおイラストは、イタリア式タロットの
LA GIUSTIZIA ラ・ジュスティツィア(正義)
の札をイメージしてみました。

翻訳/イラスト=酒井うらら


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2003-08-25-MON

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