フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

お騒がせベルルスコーニ氏、
またもや大金を積んで・・・。


僕が仙台でバカンスを過ごしている間に、
イタリアでは毎度お騒がせの
シルヴィオ・ベルルスコーニ氏が、
またもや世間を騒がせていたようです。

彼は、彼のチームであるACミランの
ティフォーゾ(サポーター)たちを喜ばせましたが、
大多数のイタリア国民からはブーイングされています。

こんどは何をしでかしたのか・・・?
まず、イタリア政府の頭である首相の立場としての彼は、
この経済不況と闘うための「痛み」を国民に要求し、
大ブーイングを受けています。
もうすでに、あちこち痛いんですから、国民は。
お前こそがしっかりしろ、と怒るのも当然です。

そして、ミラン会長としての彼は、
大きな一撃を命中させました。
カルチョメルカート(サッカーマーケット)の最終段階で、
なんと1100万ドルをはたいて、
世界チャンピオン、ブラジルの
若い星であるカカを買ったのです。

日本での素晴らしいバカンスの後、
(地震も台風もあったけど、素晴らしいことに
 変わりはなかったですよ)
僕がもどったイタリアでは、何も変わりはありませんでした。
歴史に残るであろう記録的な猛暑は別として。

すべては相変わらず「イタリア式」に
進んでいることに気付きましたよ。
つまり、あらゆる問題にたいする解決方法が、
いつも見つかったような格好にはなるのですが、
解決方法はあくまでもただの方法にしかすぎず、
言葉はただの言葉でしかなく、
どう事が運ぶかは別問題、というのが
「イタリア式」なんです。
口ばっかり、行動が伴わない・・・ってね。
これは、この先もずっとそういう印象で行くでしょう、
イタリアは。

まずは横浜マリノスから
カフーを奪う。


去る5月28日に
ミランがUEFAチャンピオンズ・リーグで優勝し、
ヨーロッパチャンピオンになったことは、
ここでも記事にしましたね。
でも、イタリア・リーグ戦(カンピオナート)では、
優勝したユベントスや、
ミランにとってのもうひとつのライバルチームの
インテルに、成績のうえで
大きく遅れをとってしまいました。

これは埋め合わせをせにゃならん、というわけで、
ミランは財布のひもをほどいて、
選手をふたり買い入れました。
世界チャンピオンのブラジルから、
カフーとカカを仕入れたのです。

カフーといえば、すでに横浜マリノスと
折り合いが付いていたはずでしたね。
ところが、このカフーのほっぺたを札束でたたくようにして、
ベルルスコーニがミランに持って行ってしまったのです。

しかも、日本からFIFAへの申し立てがあった場合、
国際的な仲裁の結果は
日本の正当性を認めるであろうと考え、
まことしやかな言い訳まで用意してありました。
中国で発生し世界の半分を恐怖にふるえあがらせた
SARSを理由に、
カフーが横浜へ行くことは難しくなった、
というものです。

そういうわけで、カフーはイタリアで、
カンピオナートの来シーズンを、
ミランの選手としてプレイすることになったのです。

彼はもう若いとは言えませんが、
なんといっても豊富な経験のある
地位の高い選手です。
W杯に3回も出場し、うち2回は優勝、
という経験をもつ選手は
世界広しといえども彼だけです。

そして“バービー”カカを獲得。
情報操作に打って出るか!?


ミランが買った、もうひとりのブラジル人選手は
「若きカカ」です。
サン・パウロの大きな才能であり、
日本でのW杯では試合の一部分に出て、
その高いレベルの個性をはっきりとアピールしました。

彼と同じポジションには、
「誰も触れることのできない」
リバウドとロナウディーニョがいましたから、
さすがに彼らを押しのけての出場はなりませんでしたが、
もし必要とあれば、いつでも充分に
彼らの代わりが出来ることを、しっかり示しましたね。

「カカ購入」の交渉は、6月の末ころに、
立ち消えになるかと思われていました。
理由は、カカが自国のブラジルで、
敵側のティフォーゾたちから
「バービー人形」と呼ばれていることでした。
ミランには、これが気にいらなかったのです。

でも、イタリアで彼を買ったのは、
情報コントロールはお手のものの
メディア王であるシルヴィオ・ベルルスコーニです。
テレビ、新聞をコントロールしまくって、
「バービー人形」よばわりを排除するでしょう。

しかもベルルスコーニはイタリア首相です。
彼に逆らってまでカカを「バービー人形」と呼ぶ人は、
島流しにされかねません。
(冗談ですよ、でもちょっと本当)

来る8月31日には
カンピオナートの新シーズンが開幕します。
ふたりの強力なブラジル人選手を加えたミランは、
もっかイタリアチャンピオンであるユベントスの前に、
ライバルのナンバーワンとして登場するでしょう。

ミランはヨーロッパのクラブ・チームとしては
チャンピオンですから、
次はトヨタ・カップに優勝して、
世界一のタイトルも欲しいでしょう。

価値ある到達点をめざしての持ち札は、そろいました。
ジーダ、 ホッキ・ジュニオール、リバウド、カカ、
そしてカフーです。
世界チャンピオンの国からのレギュラー選手を、
ここまでそろえているチームは他にありません。

「一番」になるには、優秀さの裏付けがなくちゃね。
いえ、皮肉じゃありませんよ。
でもちょっとは・・・
えーっと、今週はこれで、Ciao ciao!!

訳者のひとこと

イタリアの猛暑はついに
40℃代を記録したようです。
救急車の要請も新記録とか。
あちらではボランティアの救急隊が、
街角の専用電話の前で、
本を読んだりしながら控えています。
でも、そんなに暑くては、炎天下で
電話を待つ救急隊もあぶなそうですね。
一般の家庭では
冷房はあまり普及していません。
ふつうはなくても我慢できるくらいの
暑さだからです。湿度も低いし。
ふつうでない今年は、
インターネット・ラジオによると、
バカンス返上でオフィスで仕事、という
暑さ対策もあるらしい。
オフィスには、さすがに冷房がありますからね。

翻訳/イラスト=酒井うらら


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2003-08-18-MON

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