フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

連載1周年を越えました。ありがとう!!

人生に欠くべからざるもの、それは幸福な思い出です。
思い出は人生を豊かにしてくれるし、
「経験」というレンズはあなたに未来を覗かせてくれます。
思い出は人生の一部分。そう言ってもいいんじゃないかな。

僕の日本の思い出は、甘く優しく僕の胸をしめつけます。
日本を思い出すたびに、
なにか幸せな未来が見えてくる気が、
僕にはするんです。

そういえば、おめでとうございます!!
Congratulazioni !!
このサイトは5周年を祝ったのでしたね。
僕がこのサイトに
初めて記事を書いたのも、1年前でした。
僕には今朝のことのようにも思えます。

あれから1年がすぎ、このページを通じて、
僕はたくさんの方と知り合いました。
お会いしてはいませんけれど、皆さんの下さるメールが、
皆さんとの言葉を超えた絆を僕に信じさせてくれます。

残念ながら
「watashi ha nihongo wo hanasemasen」です。
(でも、メールは日本語でOKですよ、
 訳してくれる友人がいますからね)
この記事も書かれた言葉でしかない、
と言えばそれまでですが、
言葉の根っこには「感情」というものがありますから、
これはイタリア語、日本語の垣根を超えて
伝わるはずだと僕は思います。
皆さんを近くに感じながら、
このサイトに記事を送り続けてきた
この12ヶ月は、僕の誇りです。

仙台のことを、
毎日のように思い出します。

僕はイタリアで、新聞や雑誌に記事を書き、本を出し、
テレビ番組に出たりもしながら暮らしています。

そのテレビ番組のひとつ
「Novantaunesimo minuto (第91分)」は、
衛生放送でイタリア中に流されています。

僕はこの番組で、
愛すべき聴視者からの質問に答えています。

電話をかけてくるのは、もちろん知らない人たちです。
電話ですから顔も見えません。
でも僕らは友達みたいに話をします。

このサイトの読者である皆さんとだって、
お会いして話をしているのではありませんが、
僕はコンピューターのキーボードの向こうに
皆さんのことを感じながら、
これを書いているんですよ。

孤独にキーボードを打っているわけじゃありません。
皆さんのことを思いながら書く事は、
仕事を楽しく充実したものにしてくれます。
これは僕の誇りなんです。

思えば12ヶ月前の僕は、日本にいたんですねえ。
W杯の記事を、せっせと書いていました。

僕はおもに仙台にいましたが、
仙台で友達になった人たちも
イタリアが大好きでした。

カフェで、公園で、スーパーマーケットで、道ばたで、
僕が首から「プレス・イタリア」のプレスパスを
ぶら下げていたものだから、
みんなが寄ってきては
アズーリの情報を聞きたがったものです。
それもシャイに遠慮がちにね。

イタリアの選手たちは日本人に愛されていました。
イタリアが韓国に負けた時には、
韓国まで来ていた日本人のサポーターは
クタクタになるまで応援して、
男性も女性も、みんな一緒に泣いてしまったほどです。

日本も負けてしまったのに、
「韓国は勝っていなかった
 イタリアの負けは正しくない」
そう言って、日本の皆さんは僕をなぐさめてくれました。

優しい励ましの言葉で、
僕の嘆きを分かち合おうとしてくれました。
(これが友情でなくて何でしょうか?)

僕がここに記事を書き始めてからの1年は
ほんとうに充実した1年であり、まるで皆さんとは
昔からの知り合いのような気もします。
この12ヶ月は実は12年だったんじゃないのかな、
というくらい、たくさんの思い出を共有しました。

その反面、日本の思い出があまりに強く大きいので、
12ヶ月たった今も、
まるで昨日の事のように鮮やかなんです。

日本がトルコに負けた日は、
宮城の競技場には雨が降っていました。
こぼれ落ちる雨の粒は、天からの涙のようでした。

でも日本のサポーターたちは、
心の底の悲しみはともかく、
あの試合の結果を喜びをもって
引き受けようとしていましたね。

日本人とイタリア人は文化、言葉、習慣、
表現のしかたなど、いろいろな違いはあっても、
サッカーを通して分かりあえるんです。
このシンプルで国境も超えて受け入れられているスポーツは、
あらゆるバリアーを破って人々をつなぎます。

ひとつの試合には、たとえ負けたとしても
観るべきこと、賞賛し、
ゆっくりと味わうべきことが、いっぱいです。
一枚の素晴らしい絵、花の咲き乱れる庭のように、
隅々までね。
サッカーを、出来たての料理のように味わいましょう。
お腹をいっぱいにするだけではダメですよ。
サッカーという料理は、味わうほどに喜びを繊細に
洗練されたものにしてくれるはずです。

12ヶ月前に、僕はW杯のために日本に行きました。
そして、あなた達の素晴らしい国、日本と
僕が結んだ美しく愛情にみちた友情を、
このサイトに書くということを通して、
僕は誇りとともに今も保ち続けています。

僕の今年のバカンスを、来月ですが、
どこで過ごすか決めました。
どこだと思いますか?
仙台です!!
去年の忘れがたい日々を、ふたたび過ごすために。

みなさん、この1年をありがとう、
本当にありがとう。
次回からも楽しい記事をお届けしますからね!
またメールくださいね。
Grazie, grazie davvero.

訳者の一言

私も、孤独にキーボードを
たたいているわけではありません。
皆さんのメールにはげまされ、
フランコさんの思いに後押しされ、
私は9月からですが、ここまで来られました。
みなさん、ありがとうございます。
フランコさんの文章は上品で
愛情があふれていて、
翻訳するのは楽しい作業です。
これからも「フランコさんらしい」文章を
隅々まで味わいながら、
より洗練された訳文をめざし続けます。
改めまして、どうぞ宜しく!!
 
(しかし蒸し暑いですね。
 なにが嫌って、この湿気、
 どうにかしてって感じです。
 イタリアは、ネットラジオによると
 「猛暑、旱魃」らしいです。
 北のミラノでも36度、
 体感温度40度近く、とか言ってます。
 イタリアの猛暑は火曜日くらいまで
 続くらしいです。
 とうとうヴェネツィアのある
 ベネト地方では、
 お年寄りの死者まで出ました。
 ドクターが「まずどこかへ逃げろ」
 と言ってから、
 暑さ対策をアドバイスしてました。)

翻訳/イラスト=酒井うらら


フランコさんのくわしいプロフィールはこちら、

フランコさんのホームページはこちらです。(日本語もあるよ!)

2003-06-16-MON

BACK
戻る