フランコさんのイタリア通信。
アズーリにいちばん近いイタリア人の生活と意見。

レッジーナの中村俊輔くんのこと。

カラーブリア!
その青さは空と海の色、
その熱気は太陽の熱、
その愛は大切な人のためへの、
南イタリアのとっておきの情熱。

いろいろなタイプの愛がある中で、
サッカーのファンが彼らのアイドルのために育んでいく愛は、
父のような愛、母のような愛、兄弟のような愛を
ぜんぶ盛りこんだカクテルと言えます。

南イタリア唯一のセリエAのチーム、
レッジーナのサポーターたちは、
年令によって様々に異なる方法で、
中村俊輔の愛し方を見つけました。

カラーブリアの人たちは
俊輔のとりこになりました。


育った所とあまりにも違う、
自分の現実とは思えないくらいの別世界に
やってきた人の持つ、寂しげな眼差し・・・
その眼差しはシャイな微笑みに変わり、その微笑みが
やわらかい優しさをもたらします。

イタリアでもとりわけロマンティックな
カラーブリアの人々は、
あっという間にそんな中村俊輔の虜になってしまいました。

レッジーナの色、「深紅」のファンたちの熱気ときたら、
誰に対してもスペシャルなのですが、
中村に対してはスペシャリッシモです。
 (スペシャルの最上級ですよ、ご存じですよね)

もう若くはないオジさんたちは、
彼が息子だったら良いのにと思っているらしく、
まったくもう、オバさんのようです。

一方、少年や若者にとって、24年前に神奈川で生まれた
若いShunsukeは、文句無しのアイドルになりました。

中村がレッジーナにスカウトされた時、
彼のテクニックの才能を
イタリアで最も有名な選手と比較し、
「日出ずる国のバッジョ」と明言した記者もいました。

イタリア人にとって日本といえば、
その存在を知られて以来ずっと、
「太陽の生まれる国」と決まっているのです。
そこより東には、もう国はない・・・と。


まさに、バッジョのごとし。


たしかに中村の技術的な動きのいくつかは、
ロベルト・バッジョを彷佛させます。

ボールをその足でとらえた時、次は右に行くかと見せかけて、
敵のバランスを崩しながら左へ行ったりするのですが、
その動きたるや、バレリーナのヌレエフや
ニジンスキーのエレガンスと軽やかさに匹敵するものです。

ロベルト・バッジョと、同じです。

こんなふうに誰かがほめると、中村は赤くなります。
「ロベルト・バッジョは世界的大選手です。
 僕はまだまだ勉強しないと・・・」
と言ってね。

でも中村は水準の高いサッカーにおいて、
ファンタジーや創造力に満ちた大変に強い選手です。

ペナルティー・キックを一本もはずさないこと、
まさに、バッジョのごとし、です。
蹴る足が中村は左、バッジョは右、というのが唯一の違い。

イタリアのサッカーでは、往々にして体力や走りが
テクニックやファンタジーより
優先されたりしますから、中村は慣れるのに苦労しました。

最初のころ、まだ国内リーグ戦が始まる前ですが、彼は、
カラーブリアの街のビデオを見て
レッジーナを選んだと言っていたのです。
「すごくきれいな空と海と、情熱的な人たちを見たんだ。
 僕にとっては新しいこのサポーターたちに、
 僕も愛されるようになりたいと思った。」

初期の大変さの後、このユニークで情熱的な
サポーターたちの熱気に支えられて、
中村は彼の優秀さのすべてを見せ始めています。

数カ月前に彼をロベルト・バッジョに例えた人物も、
自分が書いたり言ったりしたことを嘆かずにすみました。

ふたりともサッカーを、テクニック面でも
ファンタジーにおいても、
アートや創作として表現します。

そうしてこそ、この最高に美しいスポーツは、
誰にでも分かりやすく
誰からも愛されるものとなるのです。

なぜってサッカーの「言語」ではない「言葉」は、
国を超えて全世界に通じるものですから。
バッジョや中村のサッカーが、それなのです。

訳者の一言
みなさん、はじめまして。酒井うららです。
フランコさんのイタリア語を翻訳したり、
イラストを描いたりしながら感じたことを、
私にも言わせて、と出て参りました。
訳者註、などという堅苦しいことではなくて、
イタリア留学の経験から、
みなさんにイタリアをもっと知って頂くお手伝いが、
少しでもできたら嬉しいです。どうぞ、よろしく!
イタリアは、南と北では生活習慣や気質もすごく違い、
人の顔だちも、慣れれば会ってすぐ分かるほど違います。
言葉は南へ行くほど粘っこい発音になるのですが、
俊輔があの顔で南なまりのイタリア語をしゃべったら、
すごく可愛いと思います。楽しみ。  
翻訳/イラスト=酒井うらら


フランコさんのくわしいプロフィールはこちら、

フランコさんのホームページはこちらです。(日本語もあるよ!)

2002-12-09-MON

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