怪・その23

「見えない3階」

私の友人A子ちゃんが
子供の頃に体験した不思議な話です。

「A子ちゃんは、小さい頃
神隠しにあったことがあるのよ」、

と、Aちゃんの家に友達たちと遊びにいっていた時、
たまたま来ていた彼女の叔母さんが言いました。

「え? どういうこと、どういうこと?
教えて教えて!」

としつこく聞くと、
今まで怪談話を避けていたA子ちゃんが
重い口を開けてくれました。

A子ちゃんが小学校の頃、
近所によく遊ぶ友達がいました。

その子の家には小さな工場があって、
その2階に、
機械類を置いている大きな部屋があったそうです。

そこで2人はかくれんぼをしたり、
絵を描いたり、毎日遊んでいました。

その部屋の奥には、上に続く階段がありました。

A子ちゃんはずっと
上にはどんな部屋があるのか気になっていました。

でも、
その階段を覗くと、
いつもおじさんがいて、

「ここから上には行ってはいけないよ。」

と、言うのだそうです。

ある日、いつものように遊んでいたら、
階段におじさんがいないことに気づきました。

これはチャンス、とばかりに階段を上がりました。

上がった、
ところで記憶がなくなって、
気付いた時には

自分の家の押入れの中にいたそうです。

お昼ご飯を食べてすぐに遊んでいたのに、
すっかり暗く、夕方になっていました。

遊んでいる途中で急にいなくなったので、
友達がA子ちゃんのお母さんに話し、
家に帰ってないから、
とお母さんも一緒に
A子ちゃんを探し回ったそうです。

結局、いないと思ったA子ちゃんが
押入れから出てきたので、2人はびっくり。

A子ちゃんは、3階に上がったこと、
気付いたら自分の家の押入れにいたことを話しました。

すると、友達が、

「うちは2階までしかないよ。
あの部屋には上に続く階段なんてないよ。」

と言いました。

その後、一緒に工場の2階に確かめに行きましたが、
いつも見えていた階段はなく、
外から見ても
2階までしかなかったそうです。

A子ちゃんに、
何があったか全く覚えてないの? と尋ねたら、

「覚えてない。

ただ、その時、覚えていてはいけない、

という気持ちがあった。

覚えていると良くない、

思い起こすのが怖い、と思った。」

と答えました。

一体何があったのか、
なぜA子ちゃんにしか見えない3階があったのか、
すべてはA子ちゃんの固く封印された記憶の中です。

A子ちゃんはその頃、
ほかにも同じような経験をしたことがあるそうです。

A子ちゃんは、
あれは住んでたあの山、あの地域が
何かそういうことが起こりやすい場所だったんだと思う、
と言っていました。

(a)

こわいね!
2017-09-01-FRI