怪・その18
「音か声か」
もう15年以上前、大学生だった頃。
友達に肝試しに誘われ、
車で山の中にある林の近くに行きました。
夜10時か11時ごろだったと思います。
二人一組でため池の横を通り、
林まで行って帰ってくるだけの簡単なルール。
懐中電灯を持って、
ひとつ下の後輩と進んでいくと、
「○○さん(私)、
なにか聞こえませんか?」
と後輩。
促されて耳をすますと、
池の方から何かが聞こえるのに私も気づきました。
まるで男性が低い声で
『ああああああ』
と呻いているような音。
蛙や鳥の鳴き声かな?
とも思ったのですが、
こんな声で鳴く蛙や鳥はちょっと記憶にありません。
しかし聞こえてくる方向は真っ暗な池の方角、
そしてどうも
私たちの膝より
下の方向から聞こえてきます。
もしこれが人間の声だとしたら、
その人物は、
夜10時に真っ暗な池の中で
肩まで浸かって
顔だけ出して呻いていることになります。
私たち2人は
懐中電灯で音の聞こえてくる方向を照らし、
一体何の音なのか確認しようとしましたが、
結局何も見えず、
やがて諦めてそのまま肝試しを続けました。
その間も、
音はずっと同じ調子で
聞こえ続けていました。
『ああああああ』
しかし他のメンバーは
誰もそんな音は聞かなかったとのこと。
いまだにあの音が何だったのか分かりません。
(O)