怪・その16

「車窓から乗り出す」

これは一週間ほど前に友達から聴いた話です。

その日友達は、
翌日の朝早くから用事があるため、
間に合うようにと
その用事のある場所の
近くにとったホテルへ向かって、
夜、仕事が終わってから
１時間ほど車を走らせていました。

片側一車線の道で
前に自動車が一台だけ走っていたそうです。

その車は急に遅くなったり早くなったり、
少し対向車線をまたいだりするので、
危なくて、追い越そうかと思ったけど、
片側一車線でなかなか追い越せなかったそうです。

そうこうしていると、
後ろの座席の左窓から
小学校４、５年生くらいの男の子が
体半分窓から乗り出して、
出たり引っ込んだりして遊び出したそうです。

体半分出た状態で、後ろに振り返りそうにしたり、
スピードも普通に出ているし、
道路横の家の塀や植木に当たりそうで
大事故になるのではと、ヒヤヒヤして、
なぜ親は怒らないのかと、
友達は腹まで立ってきたそうです。

それから男の子は
後ろの右側の座席の窓からも
体を乗り出して遊びだし、
友達は危ないから距離をおいて走ったそうです。

そして信号で前の車が止まり、
友達の車もその後ろに止まりました。
するとゆっくり前の車が右折専用車道に移動し、
友達は前に詰めて
その車と並ぶ形になったそうです。

どんな非常識な家族が乗ってるのかと
怒り半分でその街灯に照らされた車の中をのぞくと、
後部座席には
誰も乗っていなく、
おじいさんが一人、運転してたそうです。

（ｉ）