怪・その3

「顔を見に来た」

小学生になってまもなくの頃の話です。

当時、私の家は
木造平屋の住宅に
父母と兄と、父方の叔母と住んでました。

ある日のことです。
お昼すぎに、学校から帰ると
家には誰もいませんでした。

部屋で何をすることもなく、
畳の上に寝転び
天井を見上げてボーッとしてました。

その時、

頭の方にあった茶箪笥の上から

とつぜん、見知らぬおじさんが

深い穴を覗きこむようにぬっと出てきて、

私を見ても表情をかえることなく

すっと顔を引っ込めました。

一瞬泥棒かと思い驚いた私は、
そのまま家を飛び出し
家族が帰るまで家に入れませんでした。

その後、落ち着いて考えると
いくつもの奇妙な点に気付きました。

まず、何の音もしなかったこと。

それから、茶箪笥は壁際にあり
奥行きも70センチ程しかなく
どう考えてもおじさんが乗っかるには
スペースが狭すぎます。

それから、
おじさんと目が合って驚いたけれど
なぜだか恐怖は感じませんでした。

子供ながらに、
あの人は血の繋がった
ご先祖様なのかな、って直感しました。

あれから、40年ほど過ぎて
自分もすっかり年を取り
おじさんになりました。

この頃、ふっと思うのです。
あのときのおじさんって
もしかして自分だったのかなって‥‥。

この世を離れる瞬間に、
子供の頃の自分を覗きに来たのかなって。

毎朝、鏡に映る自分の顔を見るたび
思うのです。

(ポンポコピー)

こわいね!
2017-08-19-SAT