怪・その19

「鍵を閉めないでいたら」

私が大学1年生の頃、
一人暮らしをしていたマンションでの出来事です。

そのマンションは古い建物でしたが
立地条件もよく、間取りの割に
安い物件だったので
喜んで入居したのですが、
高層ビルに囲まれていたため
日当たりは最悪でした。

おかげで頻繁に金縛りにあっては、
不可解な物音を聞いたり、
見えるはずのないものを見てしまう
という日々を送っていました。

実害といえるようなこともなかったので、
大して気にすることもなく
すごしていたのですが、

ある夜、
引っ越しを決心した出来事がおこりました。

ど田舎育ちの私は鍵を閉める習慣がなく、
その日の夜も
玄関の鍵を閉めずに寝ていたのですが、
その日だけは
鍵を閉めていない玄関が
無性に気にかかり
夜中に目を覚ましたのです。

鍵を閉めようと
体を起こそうとしたのですが、
思った通りの金縛り。

「何か来る!
 鍵閉めないとヤバい!」

その一念だけで
あらん限りの力を振り絞り、
金縛りから脱出し
鍵を閉めました。

するとその直後

「がちゃがちゃがちゃ」

ドアノブが激しく
音をたてはじめたのです。

ドアののぞき穴を覗いても
外には誰もいません。
のぞき穴を覗いている間にも
ドアノブはけたたましく
音をたてていました。

しばらくすると
音をたてていたドアノブも、
徐々に静かになりましたが、

鍵をかけるのが少しでも遅れていたらと思うと
今でもゾッとします。

このマンションでは
夜中に目を覚ましたら
大勢の人に取り囲まれて見下ろされていた
という体験もありましたが、
この時ほど
背筋が凍った出来事はありませんでした。

施錠されていない部屋には、
幽霊と呼ばれる存在のものも
入って来やすいのだ
という話を後になって耳にしました。

(h)

こわいね!
2016-08-19-WED