おさるアイコン ほぼ日の怪談2009
怪・その6
家族に混じって


私が小学生の時のことです。
家族が全員家にいたので、
多分日曜日だったのだと思います。
朝起きて茶の間に行ったら、家族に混じって
知らない女の人が座っていました。

白い着物を着て、長い髪で、
頭に三角の布をつけていました。
今から思えば、
まるでセオリーそのものの幽霊の格好ですが、
不思議と子どもの私は怖くありませんでした。
座っているその姿が、
母方の祖母にそっくりだったからだと思います。
でも、祖母はその頃まだ存命していて、
遠く離れて暮らしていました。
こんなところにいるわけない‥‥
しかも家族で見えているのは私だけみたい‥‥
いろいろ事情があって、
あまり会話のある家族ではありませんでした。
私は何も言わずパジャマのままご飯を食べました。

食後、私が箪笥をあけて何を着ようか選んでいたら
その女の人が横に来て、
私と一緒に引き出しをのぞきました。
その向こうにいるはずの家族が全く見えなかったから、
確かにその人はいたんです。

着替えて鏡を見たら、鏡の向こうにいました。
本か何かを読んでいるときも、
視界の端に座っていました。

午後、外に遊びに出た私は、近所の友だちに、
朝から白い着物の知らない女の人が
家の中にいて私を見ているのだと話しました。
そしたら、次の瞬間その場にいた友だち2人が、
私の後方の空中を見上げて凍り付きました。

「どしたの?」
「今、(私の)後ろに、白い影がふわふわ飛んでた、
 2回くらい手を振るような仕草をして、消えた!」
‥‥同じものを見たようでした。

打ち合わせている時間は勿論なかったし、
子どもがそろって
あんな完璧なお芝居が出来るはずないから、
多分本当のことだったんでしょう。
そのあと家に帰ったら、
その人はいなくなっていました。
それ以来一度も会っていません。

(Po)


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2009-08-06-THU