おさるアイコン ほぼ日の怪談2006

怪・その9
「山門の写真」

いまから20年くらい前のことです。
自宅からクルマで1時間ほどの山の中にある寺に、
親父とわたし、二人で参拝に出かけました。

渓谷から山へ登っていくその寺は、
途中に山門があります。
渓谷から山門まで20分ほど、
山門を過ぎてから本堂まで、さらに20分もかかります。

私たちは急坂を「ぜいぜい」いいながら
登っていきました。

無事、本堂でお参りをすませ、
また参道を引き返し、
登る途中に通り抜けた山門にさしかかりました。

親父は先に下って行き、わたしは山門の中で、
その古びた風合いに興味がわいてきたので、
周りを眺めていたのです。

そこで、ふと目にとまったものがありました。
格子状の木がはいった窓の下、横木のところに、
キャビネサイズほどの写真立が
裏を向けて置いてあるのです。

何気なく表を向けてみると、ガラスは割れ、
中の写真は薄くなりつつありました。
よく見ると5人ほどの集合写真です。

(ふーん‥‥、なーんだ‥‥。
 しかし、なんでこんなところに置いてあるのだろう)

と思いつつ、裏を向け、
元の位置に戻そうとしたときです。
わたしはあることに気がついたのです。

一人の顔の位置がおかしい‥‥。

何人かの後ろに、
宙に浮かんだ人の顔が、写っていたのです。
普通の表情だったので、
ほかの人物と見分けがつきませんでしたが、

首だけで体が無く、よく見ると不自然です‥‥。

「心・霊・写・真‥‥?」

あわてて、元に戻しましたが、
もう怖くて怖くてたまりませんでした。
あんな人の通行するところに置かないでほしいよ。
ほんとに。

はじめてのナマ心霊写真体験でした。
それ以後は、ナマで見たことはありません。
(テレビや雑誌ではありますが)

10年ほどあと、その寺に行くと山門は新築され、
きれいになっていました。
写真はきちんと処理されていることを祈りつつ‥‥。

(Y)


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2006-08-09-WED