アースダイバーの経験論!
経験論について プロフィール
11 質問:
編集者として、これまで、
どんなふうに本を作ってきましたか。
最初に通った企画は
ジャマイカでラスタの研究をしている
文化人類学の先生の企画でした。
学生時代によく聴いていたのがレゲエで、
レゲエの本を作りたいと思って
探した方なのですが、企画会議で
「レゲエはただの南国の音楽ではなくて、
 ラスタファリズムという
 思想が貫かれていて、虐げられた
 黒人のメシアニズムがその背景に……」
とプレゼンすると通りました。
どうすれば企画が成立するのかといった
初歩の初歩から掴んでいくところからの
スタートだったんですけどね。
結局その先生とは
まだおつきあいはありますが、
本にはなっていません(笑)。
毎週編集会議時代は、約一年で終わりました。
というのは依頼した原稿が書きあがりはじめ、
いよいよ創刊ということで、
実際の入稿作業が始まったからです。
ここで実際の編集作業に入ります。
ここでいう編集とは、
読みにくい漢字を開いたり、
小見出しを入れたり、
タイトルを考えたりというような
わりと小手先のものでした。
最初はとにかく
書いてもらうというだけで必死でしたから。
ただだんだん、
すごくおもしろい人の原稿とかを読むうちに、
どんなテーマであれ、なんとかおもしろくして
読者に届くようにしたいという気が出てきて、
原稿をおねがいする時の誘導の仕方に
力を入れるようにはなりました。
そういう工夫でできあがってくるものが
変わったりするとわかったので。
まぁ、まともに働けるようになるには
六〜七年はかかったと思います。
  実はメチエの創刊時に
第一巻を丸山圭三郎先生にお願いしていました。
一巻は、個別のテーマではなく
大きな視座を与えてくれるようなものを
考えていたからです。
ところが創刊の半年前、
丸山先生が急逝されました。そこで急遽
第一巻を今村仁司先生に書いてもらおう
ということになりました。
(今村先生は、別のテーマですこし後に出す予定でした)
  しかし今村先生も
そんなにすぐには書けないと仰られ、
では講義をしていただき
それを起こして本にしようと
創刊も数ヵ月前に迫った秋の日に、
二日間にわたって
「近代とはなにか」
についてのお話をうかがいました。
その講義を拝聴したとき、
もやもやしていたものがはっきりとした像を結ぶ
快感があったことをよく覚えています。
その後、
池田清彦先生の『さよなら、ダーウィニズム』
高山宏先生の『奇想天外! 英文学講義』といった
一連の講義ものを企画しました。
書くと難しくなるものを語りにすることで、
わかりやすくできる。
また人を前にして語ることで、
臨場感も出てきますし。
しかも、早くできるというのが
編集者にとってはありがたいんですね。
談話は、今日で終わりです。
ご愛読いただいて、ありがとうございました。
感想などを、ぜひ、お送りくださると幸いです。
『アースダイバー』
◆著者:中沢新一
◆講談社
◆定価:1890円(税込)
◆ISBN:4062128519

タモリさん、中沢新一さん、糸井重里による
『アースダイバー』座談会は、
近日「ほぼ日」に登場します!

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Photo : 大森克己
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2005-08-01-MON

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