質問:
保坂さんは、今も、
マイナーでやる時間の積み重ねが
大事だと思いますか。
うん。
小説家のデビューというのは
とにかくそんなに急ぐ必要はないと思っています。
ぼくは四十九歳ですけど、
もう他の仕事をできないし
世間もさせてくれないわけでしょ。
今さら店番とか日給の仕事とかもできないし、
やったとしても
いわゆる「肥やし」にも
ならないだろうなぁとか思うんです。
工事現場に行ってみても体力的にキツイし、
他の仕事をして
夜はうちで書こうとかいうのも無理になるし……
ぼくがもし今どこか場違いなところに行っても
「何コイツ?」と見られるに決まっているし、
困ったことにぜんぜん
「何コイツ?」と見られなければ
それはそれでがっかりしたりするわけだ。
でも、若い時ならそれがぜんぶオッケーじゃない?
それでほんとに肥やしにも経験にもなるじゃない?
世間から色眼鏡でも見られない
「ただの若いヤツ」としていられるからね。
二十代って、本人は弱いと思っているけど、
やっぱりタフなんだよね。

そういうことをできるのが二十代だから、
はやくから何かに
なろうとしない方がいいように思うんです。

 

明日に続きます。

 
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2005-07-26

Photo : Yasuo Yamaguchi All rights reserved by Hobo Nikkan Itoi Shinbun 2005