質問:
町田さんにとっての「音楽」は
どのようなものですか?
音楽には「通じた」という感触があります。
人間と人間の回路が
開けるようなところがありまして、
よろこびという感情がいちばん強く出るんです。 言葉も何もわからない国で
話が通じた時のうれしさ……
それだと言語的社会的ですけど、
それをもっと体に近づけたようなよろこびが、
音楽にはあるんです。
ひとりでギターを弾いていて
和音が鳴っているだけでも
そのよろこびがあります。
音楽には人間と人間の調和だけではなくて
音や世界との調和があって、
その調和は人の精神や社会に必要な、
とてもいいものだと思うんです。 今も好きな小説は読んでいますが、
職業になってからは
かつてほどは読まなくなりました。
むしろ映画や音楽といった
他の分野に興味があるほうです。 同じジャンルだけハマると
血が濃くなるというか、
文章を書くために文章を読むよりも、
人と会ったりわけのわからない事態に
遭遇して悩んだりするほうが
刺激にはなりますね。
文字を読んだり描いたりするのは
ある種の専門分野で、言葉は既に誰かが
「こういうものでした」とまとめたものだから、
そこで一度決着がついているといいますか、
更に小説にはなってゆかないといいますか。
世界の誰もが決着をつけられないまま
残っているものが、
これから小説になるものなのではないでしょうか。
明日に続きます。
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2005-06-12 
Photo : Yasuo Yamaguchi [Hobo Nikkan Itoi Shinbun] 
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