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(※前回にひきつづき、
 山岸俊男さんと糸井重里の会話をおとどけします)
山岸俊男さんプロフィール
糸井 山岸さんが前にやっていた
「評判」の研究も、おもしろかったです。
山岸 あの実験を通して、評判には
二種類の動きがあるんだとわかったんです。

例えば、私たちは、
「悪い評判が立たないように行動する」
ということで、ある集団を
コントロールできるんだと考えがちですよね。
ところが、それだけではなかった。
糸井 それは、芸能界の人たちは、
肌で知っていることでしょうねぇ。
山岸 (笑)そうかもしれない。

悪い評判が立つと終わりだという典型例は、
江戸時代の株仲間なんです。
株を持っている仲間どうしでしか、
取引をしないという組織。

これは東大の岡崎先生という
経済史の先生が書かれている話ですが、
幕府のえらい人は、そういう談合が
物価を釣りあげるからけしからん、と、
二度ほど、株仲間の禁止令を出しています。

ところが、株仲間の禁止がなされると、
物流が止まってしまい、江戸にも大阪にも
モノが入ってこなくなるんです。

だから、禁止令を取り下げざるをえなくなる。

江戸時代の庶民にとって、
株仲間は必要だったんです。
取引でだまされても、
当時は幕府も藩も大名も
基本的には民事不介入ですから、
庶民はどこにも訴えられませんでした。

自分たちで、なんとか、
詐術が起きないように作ったシステムが、
株仲間だったんです。

だますような人間は
すぐに株仲間から追い出してしまう。
追い出されると商売できないから、
それぐらいなら、
悪いことしないほうがいいということで。

「あいつは悪い」
そういう評判が流れると、
誰も相手をしてくれないので、
みんなが身を慎む……ところが、
こういう意味での評判は、
「集団が閉ざされているから
 意味のあること」
なんですよ。

追い出されても
別の集団に行くことができるのなら、
効果がないですから。

いまの、インターネットの
オークションサイトなどでは、
江戸時代のように
集団を閉ざすことができないわけです。

だから、インターネットの世界では、
評判が効かないはずなんです。
ところが、実際には、評判が効く──。

悪い評判の効果も、もちろん効くのですが、
もうひとつ、
「いい評判」というものがモノを言うんです。

実験結果から言うと、
「あいつはウソをつく」といった
ネガティブな評判は、最初には効くけど、
ある時期から急に効かなくなっちゃいます。

それに対して、「あいつはいいよ」という
ポジティブな評判は、
だんだんだんだん、効いてくるんです。

悪い評判がついた人は、
名前を変えられるのが
インターネットの世界ですが、
「だったら、どんどん名前を変えたらいい」
というよりは
「一度ついたいい評判は、
 絶対に取っておいたほうがいい」

という実験結果が出ました。

開かれた社会では、
ポジティブな評判こそが、大切になるんです。
ネガティブな評判は追い出しに効くのですが、
ポジティブな評判は、呼びこみに効くわけで、
開かれた社会では、いい評判を取ることで、
人々が寄ってくるわけでして。
糸井 ブランド論の話としても、
考えなおせる実験結果ですね。
山岸 開かれた社会というのは、
個人がブランドを作っていくことになるんです。

株式市場について、
ドイツの人が実験をしたことがあるんです。
ある会社がどれだけ知られているか、
ということだけで投資先を決める場合と、
プロが投資した場合を比べてみたんです。

そうしたら、ブランドだけで投資したほうが、
投資結果がよかったという……。
糸井 なるほどなぁ。会社としても、
いい評判を、細かく積みあげてゆくことが、
いいんでしょうねぇ。
山岸 閉ざされた世界ではない場合には、
特にそういうことが
重要になってくるんだと思うんです。
集団が固定している場合には、
悪い評判がついたら、
もうほとんどどうしようもないんですけどね。
一回だけ改心できるという条件を入れても、
何にもならないという
実験結果が出るぐらい、ひどいんです。

いい評判というのは、
かならずしもつける理由はないはずなんです。
自分がいい取引に満足した場合、
その相手を敢えて褒めないで、
自分だけが取引をしようと考える人だって、
いないとも限らないですよね。

例えば、小さくて、
おいしいレストランを見つけたら
「ちょっとみんなには黙ってようかなぁ」
と思うじゃないですか(笑)。

だけど、実際には、みんなどこかで、
いい評判をつけることになるんです。
そこが、おもしろかったんですよ。
  (山岸さんと糸井重里の会話は、今回までになります。
 次回の特集も、たのしみにしていてくださいませ!)





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