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“WONDER SCHOOL !”
ほぼ日刊イトイ新聞 presents 超時間講演会。



(前回につづき、
 糸井重里による談話をおとどけします)

学問をやっている人って、
自分さえもその結果に驚くような結論に、
ときには、たどりついちゃうじゃないですか。

アルキメデスが風呂から飛び出したエピソードも、
あれは、何より、自分が驚いたんですよね。
きっと、ニュートンもアインシュタインも、
驚きと共に、数式を整えていったんだと思います。
もう、魔力に近いものに、惹かれる瞬間があったはず。

魔法なんだか、勉強なんだか、
もう、役に立つのかさえわからないところに、
「知る、ということの輝き」
が、きっとある。ぼくはそれを、実感しているんです。

「知る、ということの輝き」に照明を当てたい。
客席で、もう眠ってしまおうと思っていたのに、
つい、驚いて目が覚めてしまうような時間を作りたい。

きっと、それぞれの方のしゃべることのなかの
一部は、本にもなっているんだとは、予想ができます。
だけど、本と声とは、やっぱり違う。そこを感じてほしい。

ふだん、仕事や対談なんかでぼくは実感しているんだけど、
「ナマで聞くことの驚き」は、ことのほか、強烈なんです。

惑星物理学の松井孝典さんと、こないだ
このイベントのための打ちあわせをしたんですけど、
ニヤニヤしながら話している惑星についての情報が、
もう、芸能スキャンダルを聞いているときと
同じように、耳に、すべりこんでくるんです。

松井さんとぼくだけじゃなくて、
その打ちあわせの現場には、協力をしてくれている
ぴあの関係者、日本テレビの人たちが取材で訪れてくれてた。
でも‥‥みんな、笑いがこらえきれないように聞いている。

「え! まさか! あの俳優とあの女優が結婚したの?」

それと、そっくりな対応なんです。

「うわぁ、そんなこと知っちゃっていいのかよ、オレは!」

そのうれしさが、将来的に、何につながるかは知りません。
でも、その感動を、ほんの一部でも、覚えていたとしたら、
何かが、急に見えてくるときが、いつか来るかもしれない。

どこが開くかわからないけど、
ピカピカ光っているカギ、みたいなものを、
今回登場してくれる4人の先生がたは、
もう、チャランチャラン、チャランチャラン、
放りなげるように、客席に向かって投げてくれるんですね。

「また、拾っちゃった!」

その輝いたカギは、自分の中のキーホルダーに、
それぞれ、いっぱい、つけておけばいいじゃないですか。

木星が、太陽のまわりをまわるのに、14年かかる。
だけど、木星はとてもデカいから、
デカさの引力の影響を、太陽にもおよぼして、
太陽が、そのたびにちょっとずつ、ぶるぶる、ブレてゆく。

‥‥太陽が、ブレんのかよ!

まぁ、こういうのが、
松井さんとのミーティングの話の、前提なんです。

「‥‥ま、ブレるじゃないですか。だから‥‥」

「え! ブレるんですか?」

「‥‥えーっと、オーストラリアと日本が
 そのうち合体するのは知ってると思いますけど」

「くっつくのかよ!」

前提条件からして、ついつい、ニヤけちゃうんです。
弱っちゃうんだけど、その後に続く話を聞いていると、
これが、さすがに、ヒザを打っちゃうような展開にもなる。

すごい水準の高い学者のおもしろさって、
「吉本隆明さんが鍋奉行をすると、いつも大失敗する」
ということに、すごく似ていると言いますか。
吉本さんは、毎年、花見の鍋に、
いっぺんにぜんぶ、具を入れちゃうんですけど、

「去年もやったじゃないか! おととしも!」

そう言われても、「ああ、そっか」って、澄ましてるんだ。
ときどきツッコミどころがあるのも、一流、なんですよね。

ドーンと来るような、
芸能スキャンダルに似た知的興奮、これも、
もちろん、たのしみにしていてもらいたいなぁと思います。


(糸井重里による談話は、明日に、つづきます!)





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2004-03-18-THU

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