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智慧の実を食べよう。
300歳で300分。

「ほぼ日」創刊5周年記念超時間講演会。

本日より
「智慧の実を食べよう。
 300歳で300分
 ほぼ日コンプリートBOX」の
1000セット 限定予約販売を開始します。

イベントが終了して2ヶ月がたちますが、
ようやく「ほぼ日コンプリートBOX」として、
みなさんに9月13日のイベントを
もう一度味わっていただく準備ができてきました。

ほぼ日コンプリートBOXの詳細はこちら


「智慧の実を食べよう。300歳で300分」という
イベントは「ほぼ日」が誕生してから5年間の
集大成とも言える大きなイベントでした。

講演をしていただいた方々は
コンテンツを通してご紹介してきましたが、
今回は「ほぼ日コンプリートBOX」に含まれる
DVD、本、パンフ、CD、特製BOXを
語るにあたって欠かすことができない方々に
「智慧の実を食べた人々」として
糸井重里をはじめ、十文字美信さん、
MAYA MAXXさんなどに
話を聴いていこうと思います。




智慧の実を食べた人々1 糸井重里(1)
〜 「声の力」を感じてほしい〜

トップバッターは
イベントで企画・制作、司会という三役を
つとめたdarlingです。

イベントの直後の「今日のダーリン」では
このように書いていました。

【9月14日】(イベント翌日)
 よかったです、やって。
 いや、やらせていただいて、ほんとによかったです。
 夜の7時半過ぎまでイベントは続きましたが、
 観客席にいた人からの感想にもあったけれど、
 「このまま続いていればいいのに」とさえ思えました。
 
 「ほぼ日」にとっても、なにか他の意味でも、
 この日のイベントは、歴史的だったと思っています。

【9月15日】(イベント翌々日)
 なんやかんや言っても、やっぱり
 「知」の場だったとは思うんです。
 その「知」を「明るさ」と結びつけられたということ。
 「明るさ」と、「軽さ」かなぁ。
 それが、とても大事なことだったと思うんです。

 とにかく、ここ数日は、頭がいっぱいで、
 ぐるぐるしちゃったままになりそうです。
 そのくらいぼくにとっても大きな一日でした。


そして、2ヶ月がたちました。
今はどのよう感じているのでしょうか。


●「親切」が仕事なんです。

── イベント直後は
「まだ整理ができない」と
書いていましたが
今は「智慧の実のイベント」を
どのように位置づけていますか。
 
糸井 大きい意味で、
ぼくの仕事は「親切」だと思うんです。

例えば、知り合いに
モノマネがおもしろいコージー冨田が
いたとするじゃないですか。
絶えず「あのモノマネしてよ」って
言われているでしょうし、
モノマネをしてもらって、
一緒に遊んでいると楽しい人ですよね。

もしくは、イチロー。
彼に弟がいたとして、
弟の友達に野球が大好きな少年がいる。
冬休みに実家に帰省をして、
グローブを持っている弟の友達がいたら、
やっぱりキャッチボールをするじゃないですか。

そんなことを
ぼくは結構イチローでもコージー冨田でもない
ジャンルですっごくしているんですよ。

昔ながらの考えだと
自分を伸ばすためだけに勉強をしたり、
自分をみがいたりして、
自分ひとりの中で終わらせていたものだったんです。

それが、だんだん自分ひとりで
イチローとキャッチボールしたり、
コージー冨田と遊んだりするのが
いたたまれなくなってきて、
人にも「親切」をするようになったんです。
 
── すごい「親切」ですよね。
絵を描くと言えば横尾忠則さんを連れてきたり。
普通の人が触れることができないところにいる人を
連れてきて「握手してごらん」と
言ってしまっているような感じというか。
 
糸井 「歌だったら、
 ぼくの知っている人で
 美空ひばりって言う人がいるから、
 その人に聞けばいいじゃない」みたいに、
人が思いつきもしないことを言い出したりしているんです。
もともとそういうことをしたかったんでしょうね。
ふだんもそうしているつもりなんですよ。
今回はそういうことを一気にやってしまった。

思えば「足の不自由な人」(吉本隆明さん)とか、
「ブラジルに一年の半分は行っている人」
(小野田寛郎さん)とか、
「週に三回、病院に通っている人」(藤田元司さん)とか。
それぞれがふつうは呼びにくそうな人ばっかりなんです。

声をかけたら悪いかなと思う人に声をかけて、
「申し訳ないけど、本人さえよければぜひ来てほしい」
という強い意志があったので会えたんですよね。
しかもひとつのところで、休みの日に、一同に。

ほんとうにすごいモノだったら
みんなが手に入れるように加工し直せばいいじゃない。
9月13日に東京国際フォーラムという場所を
設定したことだったり、
DVDや、本という他のメディアとして
もう一度、のせなおすということだったり。

イベント直後は整理ができないって言っていたけれど、
それはお客さんがあの場に来るんだろうか
来ないんだろうかって気にしていたから
整理できなかったんだと思う。

来ようが来るまいが
ものすごくぼくは「親切なこと」を
みんなにやったんだって思えば、
整理も何もなかったんだね。
 
── 会場に来たお客さんはすごく若かったですよね。
この人の話が聴けるという単独のファンじゃない人が
集まったみたいじゃないですか。
 
糸井 大きく言えば「ほぼ日」を
毎日やっている力だったんじゃないかな。
名付けようのないものに名付けるというのが
ぼくの一番やりたい仕事で、
やってきてうまくいった仕事ってそういうものです。
今回も年長者の話をちゃんと聴くということに
「智慧の実を食べよう。」という名前をつけたんですよね。
そのコンセプトに人が集まったんだと思う。


●「声」の力を感じてほしい

── 今回は最初から
DVDにするということを
決めていたじゃないですか。
それはどうしてですか。


 
糸井 とにかくもったいないからです。
会場に入ることができる1500人って数は
多そうだけど、やっぱり少ないよね。
ぼくが仮に北海道に住んでいる人で、
その日、会場に行くことがやっぱり無理だなって思ったら、
その場にいないんです。
でも、何が行われていたんだろうって
すごく気になると思う。

「智慧の実を食べよう。」というコンセプトで
あの場所に集まるということは
年表にはのらないけど、
「大火事」ぐらいの事件だったと思うんです。
「大火事」はふつうだったらニュースで見られますよね。
あの場では見られないんだったら、
あの場であったことを
少なくとも10倍ぐらいの人に伝えられる方法がほしい。
それが、今だったらDVDだなって。
ビデオだとすごい本数になってしまうじゃないですか。
DVDだったら2枚ぐらいでなんとかなる。
それをしたかったんでしょうね。
 
── 書籍も出ますよね。
講演会の内容の言葉を拾うという意味では
書籍として文字で追いかけるということが
わかりやすい気もします。
あえてDVDもつくったのはなぜなんでしょう。
 
糸井 それはもうぼくが「声」の力を信じているからです。
「ほぼ日」みたいにテキストをつかって
ずっとやってくるとなおさらわかるんだけど、
「あぁぁっー」って声を出すだけで
誰がどんな風な気持ちで出しているか
全部違うんだよね。
その力をもっと信じたいなって。
若いヤツの言っていることに説得力がないのって
声に力がないからなんだよね。

落語でもそうだけど、
小学生でも落語はやれるわけなんだよ。
「おまえってひとはほんとにしょうがない人だよ」って
言うことはできるんだけど、
小学生の声で聴いても
「しょうがない人」って思えない。
でもどんなに口ごもろうが何しようが
年をとった人が言うと「なるほど」って
説得力をもつんですよ。
そういう「論理を組み立てる言葉」じゃなくて
「感情を揺さぶる声」というものに
ぼくはどんどん重きを置くようになってきたんです。

「これをしちゃだめでしょ!!!」って
怒った声を出したら犬はビクってなるよね。
「オマエはほんとに言い子なんだから!!!」って
同じような勢いで言ったら、
やっぱり犬はビクってなる。
人間もそうなんですよ。
みんなが吉本さんの「声』をあの場で聴いて
やっぱり感じたわけだよね。
心ってやっぱり「声」なんですよ。
「文言」じゃないんですよ。


●とにかく緊張した司会役だった

── 糸井さんは今回、司会として出ていましたけど、
糸井さんが緊張してるなぁって
横で見ていて思ったんですよね。


 
糸井 緊張してたよー。
いつもとぜんぜん違った。
ぜんぜん違った理由は、
あとで構成できるようになにか
準備しておこうって前日まで思ってしまったこと。
やんなきゃよかったって思う。

原稿を書きかけたり、余計なことをして、
いっつも失敗するんですけど。
まあ、はじめての試みだったし、
それぞれの方々に精一杯に
その人のよさをお客さんに伝える仕事を
ぼくがひきうけているって、
責任ある立場みたいに思っちゃったの。

それでこの人ではこう言おうとか
ここではこうやろうとか準備をして、
前日の夜中にやっててやめたんですよ。
「もうわかんねーや」って。
やりかけててやめたから、
今度はなんにもなくて舞台にたつわけだよ。
で、「うわーーなんにもない」って気持ちで。
一夜漬けで勉強したらそのまま寝ちゃって
試験の日だったって気分。
 
── ひらきなおりきれてもいないんですね。
 
糸井 そう。客席がはじめ、シーンとしてたし。
ちょっと小さい笑い声とかが聞こえると
自分の場所だって思えるんだけど。

あと、昔からの長老の読者とかファンとかもいるから
「おまえ失礼じゃないか」って思われたくないって
ちょっと優等生のところもでちゃった。
そういうの全部忘れるまでに
自分自身がなっていなかったんでしょうね。


●このイベントを感じること。
 それが一番大切。


── このイベントは、
友達5人で誘い合ってくるとかできないものでした(笑)。
多くても二人なんですよ。
よくわからないけど
信頼してついてきてくれる人がいたら
二人できているって感じで、
そうではない人はひとりでした。
 
糸井 このイベント、
ほんと困っちゃうのは誰かを誘えないんだよね(笑)。
これが客をいれられたってことを
今思い返してみれば、すごいと思う。
「こういうすごいものだから行こうよ」って
友達に言いにくいもんな。
まさにONLY IS NOT LONELYイベントですよ。
それぞれがひとりで来てるんだ(笑)。
二人できている人もひとりでいるんだよね。
「ほぼ日」らしいよなぁーーー。
 
── 連れてくる人もかなり人を選んだと思うんですよ。
気軽に「チケットあるから行こう!」って
誘いにくいですから。
「待てよ。この時間! 300分!」って。
おじいさんたちだし。
何があっても大丈夫な人しかつれてきてない(笑)。
 
糸井 途中で帰ってもいいさみたいなことを言ってもね。
吉本さんを見ちゃったら、
もう帰ってもいいって考えは飛ぶよね。
ひきずりこまれる。

講演の内容については
もう忘れちゃってもいいんですよ。
あそこに中学生がいて
「何やってたの?」「わかんない」でもいい!
 
── わかっている中で、
講演のアンケートで8歳の方からいただいたのが
最年少でした。
「つまんなかった」って書いてくれましたが(笑)。
 
糸井 ウケるね(笑)。
それでもいいんだよ。
8歳にしてあの場にいたというだけでもすごい運だよ。
 
── 舞台袖のインターネット中継のアクセスが
すごく高かったんですよね。
ストリーミングで中継するという企画に対して
糸井さんが「絶対面白いよ」って言っていたのを
覚えているのですが、
どうしてそう思ったんですか。


 
糸井 中継をするメンバーですね。
 【註】
 舞台袖でネット中継を担当していたのは
 アナウンサーの今泉清保さんと
 感心力の男、田中宏和さん。
 途中でゲストとして日本テレビのT部長や
 darlingを交えての中継でした。


田中君がいて、今泉君がいて、
土屋さんが言ったり来たりしてくれて。
そこでもう姿が見えたんですよ。
田中さんも今泉さんも
教養だとか知性みたいな
価値を隣りの椅子に座らせることが
できる人たちなんですよ。
ぼくがやりたいのは
向こうにキャバクラのおねえちゃんが座ってて、
その手前に小野田さんが座っている。
そういうことなんです。
それをあのひとたちはできるだろうなって。
尊敬を失わせずにそれができるって
おもしろいに決まってるんです。
そのまんま受け止めるよりも割って飲む。
ハイボールとか水割りみたいな飲み方。
おいしい水割りになったんじゃないですか。
 
  <続きます。>

2003-11-17-MON

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