YAMADA
おとなの小論文教室。
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Lesson 277  就職ってなんだ?


そもそも就職ってなんなのか?

多くの人が、
中学 → 高校 → 大学 → ときて、
次のハコを探す、ありつく、
ととらえているかもしれない。

この場合は「就社」などといわれる。

あるいは、
スポーツライターとか、アナウンサーとか、編集者とか、
なりたいものになる、ととらえているかもしれない。

いわゆる「自己実現」。

自分も就職のときに、バクゼンと
そんなふうに考えていたと思う。
でも、いまになって、それはちがうと思う。

就職とは自分を社会にエントリーさせることだ。

おととい、
名古屋で半日間の就職講座をやった。
その最後のステージが、
「自分を社会にエントリーさせる企画をつくる」で。

各自が、プロデューサーの目線になって、
自分という人材を、
社会にエントリーさせるための基本設計書をつくり、
発表してもらった。

みんな、あまりにもうまくできるので
私のほうが、びっくりしてしまった。

最初のほうのステージで、
まだやりたいことがみつからない、
と言っていた学生たちのスピーチにも、
WILL=意志が出てきた。

私は、あらためて、いまの若い人の抽象思考
のセンスのよさにうなってしまった。

自分を社会にエントリーさせる企画を立てるのに
学生に与えた時間は、わずか15分程度。
私は、当然、完成度など期待していない。

私は発表の間、ただ1点だけをチェックしていた。

「関係づけ」の力だ。

自分を社会にエントリーさせる企画の
立て方は、いたって簡単。

1.いまの社会をどうみているか?(=現代社会認識)
2.やりたい仕事をどう理解しているか?(=仕事理解)
3.自分はどういう人間か?(=自己理解)

この3つを、それぞれ200字くらいに
シンプルにまとめた上で、

ここからが肝心、

この3つの関係をよく考えて、
自分がプロデューサーだったら、
この人材を、世に送り出して、
4.人や社会にどのように貢献させるか?(=WiLL)
仮説をつくる。

この、1,2,3,4の
関係づけがちゃんとできているかどうかが肝だ。

学生たちは、最初のほうのステージの、
あのモラトリアムはなんだったのか? と思うほどに、
みごとに、
「候補としてあげた仕事」と、「いまの社会」、
「いままでいきてきた自分」、
の3つをうまく関係づけて、
そこからWILL,
「自分を社会にエントリーさせるベクトル」を割り出した。

たいしたものだった。

改めて、頭がいいというか、
いまの学生は、それなりに情報もあるし、
それなりに思っていることはあるし、
でも、その「出し方」を知らされていないんだなと思う。

つまり、「関係づけ」の力はあっても、
「関係づけ」てアウトプットすることが必要なんだと
知らされていない。

そして、
「自分」と「社会」を「関係づける」作業こそが、
まさに「就職」なんだと私は思う。

どうやって、人・モノ・金が
激しくぐるぐるしている社会に、
自分をエントリーさせるか?

自分から何か貢献しないとエントリーできない。
では、どんな貢献なら、
自分は苦じゃなくやり続けられるのか?
人に歓んでもらえる可能性が高いのか?

自分がエントリーすることで、
社会を1ミリでも2ミリでもよくしていけるとしたら
どうしていきたいか?

自分と一人の他人、その先の社会をつなぐものが、
仕事であったり、志に共感できる会社であったりする。

自分の腹に聞きながら、
少しでもやる気のでる仮説を立てて
実際に自分を世に送り出してみる。

仮説はあくまで仮説に過ぎない。
現実の中で崩されていくけれど、
自分を世に送り出す初期設定の部分だから結構大事だ。

そこに自分の意志が少しでも反映されていたら、
その後の納得感も高い、と私は思う。

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『考えるシート』講談社1300円


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房1400円




『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
山田ズーニー著 PHP新書660円


内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの
痛みと歓びを問いかける、心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)

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2005-12-07-WED

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