YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson238 こんな時こそ、小論文を書こう!

タイトル見て、
「あ、おれ、小論文カンケイないや」と思った人、

ちょ、ちょっと待って!

いまどき小論文はだれにもカンケイあります。
小論文を書こう、ということは、

「あなたの意見」を言おう!

とほぼ同じだからです。
生まれてきてから今までに、思う存分、

自分の「意見」を言ったことがありますか?

「意見」はあなたの中にあります。
でも、それを出したことがない人は多い。

小論文は「意見」の文章です。

これほどまでに自由に
「自分の意見」が言い切れる文章は、
他にありません。

しかも、一部の学者のためのものでなく、
こどもも、おとなも、だれもが対等に、
たった600字ほどの日本語の組み合わせの中に、
存分に、「自分の意見」を
浮かびあがらせることができる、
それが小論文です。

出会いと別れ、
進退、卒、入、転……そして、新。
胸が痛いほど、なにかかきたてられる3月、
想いが千千(ちぢ)に乱れるという言葉がぴったりする
いまだからこそ、雑感でなく、

あなたに、
「自分の意見」を表明してほしいなと思いました。

「悩む」、ということは、
あなたの感性とか、感想じゃなく、
「意見」が出番を迎えているということです、
社会もそれを待っています。

「あなたの意見」の出番です。

こんなときだからこそ、
自分のために、思いきり、
自分の意見を書いてみましょう。
きょうは、超カンタン!小論文の書き方をご紹介します。

小論文って何?

ずっとこのコラムを読んでいる人は
もうわかりますね。そう、小論文とは、

「意見と論拠」

の文章です。
自分の「意見」をはっきりさせ、
なぜそう言えるか、理由や根拠を
筋道立てて説明して、読み手を説得する文章です。
なぜを考え、なぜを書く、「なぜ」の文章とも言えます。

小論文のゴールは?

そう、「説得」です。
感動させる必要も、泣かせる必要もない。
相手が、「なるほど」と思ったら、
そこがゴールです。

試験でなく日常に書く小論文は、読み手の、
ほんのちょっと「なるほど」、を目指せばいいのです。
小さな納得感。
日常では、その積み重ねが
人を動かし、状況を切り拓いていると思います。

小論文の主役は「あなたの意見」です。

「意見」とは何か?

ある「問い」に対して、
あなた自身が、考えて打ち出した「答え」です。

これは、すっごいことです。

あなたの答えを、あなたが自由に決めていいんです。
「自由とは何か?」
「女性はどう生きるべきか?」
「お父さんは単身赴任をするべきか?」
など、答えが無い問題に、独自の答えを出していい。

ただひとつ、読み手を「説得」することさえできれば。

本当に正解なんてありません。
どこかに模範解答があるだろうと思って、
一般論を書くと、人と同じになって
だれも、わざわざ
読む意味のない小論文になってしまいます。

答えは自分の中にある。

人と違っていていい、むしろ独創的な意見ほどいい。
自分の頭で自由に考え、
自由に「自分の意見」を打ち出せる。
それが小論文です。

他にそんな文章があるか?

作文は?

出来事と、その「感」・「想」が中心です。
答えを考える・決める、と少々、理屈っぽくなりますね。
それよりは、情景の描写が主役です。

レポートは?

ゴールを考えればよくわかる。
そう、「報告」です。
自分の意見よりも、「事実」が主役です。
調べて得た「事実」と、
その事実から言えること(=「考察」)
を正確に相手に報告する。
考えるよりは、「調べる」が作業の中心です。

論文は?

「結論と論拠」で、とってもよく似てますが、
「結論」には、小論文ほど自由に、
自分の意見が打ち出せるわけじゃありません。
論拠で立証・分析されている方法にのってやれば、
「だれもが同じ結論を出せる」、
というものでなくてはなりません。
「立証」が主役になります。

社会に出るまで、自分の意見なんて求められました?

私は、逆に「親に意見するな」と叱られました。
会社に入ってから、いっぱしに意見を言っていましたが、

どこまでが「自分の意見」だったのか?

実は上司の意向だったり、会社の方針だったり。
していたのは、「説明」にすぎなかったかもしれない。

私たちは、実は、「意見」を言ってないのでは。
っていうか、
求められてこなかったから、
出し方がわからない、のかもしれません。

でも、思考という運動がないから、
「意見」を外にだせなかっただけ。
その運動を意識的にやれるのが小論文を書くことです。

では、もっともカンタンな小論文の書き方です。

時間は60分。タイマーで計ってください。
600字(ワープロ、20字×30行)。
とにかく、次の空欄を埋めることだけ考えてください。



「問い」には、
自分にとって切実なことを、
はっきりした「疑問形」で書くこと。

切実なこと、とは、
ついついそのことを考えている、
考えずにおられない、
考えだしたら夜も眠れない、というようなことです。

たとえば、「異動について」とか
「フジテレビ・ライブドア問題」
というような書き方ではだめです。
はっきりした問いの形に絞り込んでください。

たとえば、
「異動先で、一番先に、自分がすべきことは何か?」
「自分がフジテレビの社長だったらどうするか?」

問いが具体的であるかどうか、
自分に切実であるかどうかが、
小論文の出来を左右します。

「意見」には、
問いについて、
現時点での自分の「答え」を出し切ってください。

あいまいなもの、複数の答え、
感想や気持ちを書いただけのものはダメです。

「答えをひとつ、決めきる」ことです。

「異動先で、
 私がやるべきことは、他でもないコレである!」
「自分がフジテレビの社長だったら、最優先でこうする!」

答えは、腑に落ちるところ、
「自分の納得感」のようなところを目指してみてください。
あくまで時間内にです。

「理由」は、
ここが「考える」という作業で
とてもひと口には言えませんが、

白い大きめの紙の真ん中に、「問い」を書いたら、
そのまわりに、気になることを
ぜんぶ洗い出していってください。

ひととおり出してつきたら、

過去。
今まで生きてきた自分をふりかえって、問いに関連して
強く違和感を持った経験、見聞などを洗い出してください。

次に、現代の社会。
問いに関連した最近のニュースや、
世の中の動き、知識や情報なども書き出してみてください。

そして未来。
問いに関して、理想とする人や社会は
どうあったらいいか?
自分は将来どうあったらいいか?

最終的に文章にまとめる段には、
自由にやっていいのですが、
論拠を、どうしていいかわからない人は、
まず、「事実とその分析」のカタチでまとめてみましょう。

さきほど、洗い出し、考えたなかで、
最も象徴的な事実(=経験や見聞)をひとつ採り上げ、
その要所、要所に
「なぜ?」「なぜ?」「なぜ?」
と問いながら分析していきます。

問い
象徴的な事実
その分析
自分の意見

あまりにもカンタンですが、
これを筋道立てて、説明していけば、
まずは、小論文が書けます。

切実で具体的な問題設定。
答えを決めきる。
経験に基づいて書く。

初心者は、まず、ここからはじめてください。

時間がきて、
不消化、不完全でもOK!
書き上げてください。

あとは、気持ちの悪いところに向けて
自然と頭が動いていきます。

「考える」ようになります!




『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房1400円




『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
山田ズーニー著 PHP新書660円


内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの
痛みと歓びを問いかける、心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)

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2005-03-09-WED
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