YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson219 志望動機をかためる
----高校生のための一発でわかる小論文講座(4)


あなたは、なぜそれをやりたいのか?

という「志望動機」は、
進学だけでなく、
就職、オーディション、異動、転職など、
一生を通じて、新しいことをはじめるとき、
聞かれる質問です。

でも、ヘンだと思いませんか?

受験生は、まだ、高校生なわけで、
まだ大学のことはよく知らない、わからない。

学生は、まだ働いたことがないわけで、
仕事のことはよく知らない、わからない。

まだやってないことに対して、人は、
どうして「志望動機」を聞くのでしょうか?

どうすれば、
「志望動機」をうまく人に説明できるのでしょうか?

「志望動機」は、小論文入試の定番テーマです。

志望動機をかためておけば、
別のさまざまなテーマが出されたときにも、
結論などで、活躍します。

小論文対策として、
「どのテーマから手をつけようか?」
と悩むなら、まず、
自分の「志望動機」から固めていくことをおすすめします。

今日は、それをやってみましょう!

まず、大学は、なぜあなたに「志望動機」を聞くのか?

意欲のある学生を、選んでとりたいからです。
動機がしっかりした人には、意欲がある。
意欲がある人は、大学に来てよい学問をする。

ということに、大学側は、
追跡調査などして自信をもっています。

ですから、志望動機を書くとき、
細かいことよりも、まず、
読んだ人にあなたの意欲が伝わる
ということが大事です。

読み手はだれですか?

そう、
あなたの志望する学部の先生ですね。

何の意欲でしたっけ?

そう、
その学部・学科で学ぶ意欲です。

あなたの志望動機を読んだ先生が、
「この生徒なら、うちの学部・学科に来て、
かならず熱心に学問に取り組む! まちがいない」と
うなずいているところをイメージしてください。

そこが、志望動機のゴールです。

では、まだやったことがない学問に対して、
どうやって、先生を説得しますか?

ポイントは、下準備にありそうです。
必要な材料はそろっていますか?
次の3つの方向から材料をそろえましょう。

1. あなた自身を知る
2. 行きたい学部・学科について知る
3. いまの社会を知る

1の自分について。

とくに、いままで生きてきた自分をふり返って、
その学部・学科をめざすきっかけとなった「経験」は、
人に説明できるようにしておきましょう。

ポイントは、事実と考察の2段がまえで説明することです。

事実:小学2年の時、このような尊敬できる先生に出会った。
 ↓
だから教師を目指したいと教育学部を選んだ。

では、読み手は納得しません。
事実から、あなたがどう感じ、何を考えたのか?

事実:小学2年の時、このような尊敬できる先生に出会った。
 ↓
考察:そこから私は、教育についてこう考えた。
 ↓
だから私は、教師を目指したいと教育学部を選んだ。

というふうに。
考察のところでは、できるだけ
「キーワード」を提示するようにしてみてください。

2の行きたい学部・学科について。

少なくとも、その学部で扱うテーマだけは押さえてください。
文学部に行きたいという「気持ち」だけあって、
文学部では、具体的に何を、どんなふうに学んでいくのか?
そもそも知らない、調べていない、という人が多くいます。

志望動機が書けない人には、
そこが原因の人が多いです。知らないのが原因。

知らないことに意欲はわきません。
知れば知るほど興味は出てきます。

たとえば、文学部では、「ことば」「文化」を学びます。
外国語学部では、その「言語」の習得だけでなくて、
「異文化をどう理解するか?」
「世界から見た日本とは? 日本語とは?」
といった問題関心からも学んでいきます。

行きたい学部・学科の学問内容については、
大学のパンフレットで調べる、
オープンキャンパスなどで、先輩や先生に直接聞く、
小論文の過去の入試問題を読む、
(よその大学の、志望する学部の出題でも効果がある)
などの方法で調べ、
人に説明できるようにしておいてください。

「調べた」という行動が、説得力となって
文章に表れます。

3のいまの社会を知る。

たとえば、教育学部を目指すのなら、
「教育」や「こども」をめぐって、
いまの社会はどうなっているのか?

経済学部を目指すのなら、
日本の経済はいまどうなのか?
国際社会はこれからどうなっていくのか?

ようするに、志望学部のメインテーマをめぐって、
いまの日本社会、あるいは世界をみたとき、
どうなっているのか、
ざっくりと自分の言葉で言えるようにしてください。

歴史の暗記ではないのですから、
細かいことはいいのです。
授業や本、新聞から得た知識も総動員して、
次の3つをざっくりと言えるようにすればいい。

いちばん何が問題なのか? (現状の問題点)
なぜ、そのような問題が起こっているのか? (原因・背景)
理想の社会が実現できるとしたら、どうあればいいか? 
(ビジョン)

以上、きっかけとなった自分自身の経験、
その大学の学部・学科は、具体的に何を学ぶところか、
テーマをめぐる現代社会認識、
の3つがそろったら、そこから、

未来に向けて自分はどうしたいか?

という自分の「意志」を打ち出してください。
「その学部.学科に進んで、これを学びたい。」あるいは、
「その学部.学科で学んで、このような仕事をしたい。」あるいは、
「その学部.学科で学んで人や社会にこのように貢献したい。」
というように、何をどうしたいか、具体的に打ち出すのです。

あとは、この意志を、
読み手である学部の先生にはっきりと示し、
論拠を筋道立てて説明していけばよいのです。

文章構成はいろいろアレンジできますが、
書きやすい型はこうなります。

[過去] 私はどのような経験からその学部を志望するように
     なったのか?

[現在] 私はテーマをめぐるいまの社会をどうみているか?

[未来] 私は将来、人や社会にどう貢献していきたいか?

以上のことから、私は、○○学部に進んでどうしていきたいか?

自分の経験に立脚して説明すること、
相手方の情報(学部・学科の情報)を
調べるという行動を起こしていること、
いまの社会に目を向けること、

これらが意欲として伝わり、
選ばれる志望動機のカギになります。



『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房1400円




『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
山田ズーニー著 PHP新書660円


内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの
痛みと歓びを問いかける、心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)

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2004-10-13-WED
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