YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson59  反省の方法
結果を出す!文章の書き方−(10)おわび


何かあったとき、
あなたは、大人として、
本当の「ごめんなさい」が言えますか?

おわびをするとき、

反省する、
あやまる、
つぐなう。

の三つが必要だ。

私は、このコラムで、
よく反省をする。
読んだ友人から、
「反省って、苦しくない?」と聞かれることがある。

確かに、痛い。

そんな痛いことを、なぜやるのか?

私は編集したり、ものを書く上で、
人の心に届くものを目指している。
そのためには、
ものごとを純粋に、
何ものにもとらわれずに見る「眼」が必要だ。

何か一つでも、自分の弱さや願望で、
事実をねじまげて映すと、
「眼」は、たちどころに濁ってしまう。

すると、何を言っても、何を書いても
もう、人の心に伝わらない。
それが、私には、いちばん恐い。

だから、何かやってしまったときほど、
自分の真実の姿と、
自分をとりまく状況を、
まっすぐ心から受け入れる行為が必要になる。

そのときは「痛てて…」と思うけど、
自由のために。

おわび文の書き方、2週目の今日は、
「反省」について考えてみよう。

あなたは、反省のやり方をならったことがありますか?

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反省の風景1−家族のため

出張旅費を水増しして、
公費を着服しました。

本当に申し訳ありませんでした。反省しています。

家のローンも大変で、
うちには、寝たきりの老人だっているんです。
娘は今年から大学で、とにかくお金がいるんです。

家族のために、しかたなくやったことです。

――悪いとわかってしているとき、どんな気持ちでしたか?
――悪いことをしていて、嬉しかったり、
   楽しかったりしたのは、どんなことですか?
――そのお金は、何に遣いましたか?

水増しの金額を申請するとき、
「みんなやってる、ばれなきゃいい」と思いました。
水増しの金だと思うと、飲み屋で、
高い酒でも何の気兼ねもなく頼め、
そういうときは、スカッとしました。
あ……。

金は……、ほとんど飲み屋に消えました。
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「悪かった」と心から感じること。
これが反省だ。
だから反省は、他から押しつけられるのじゃなく、
自分で感じないと意味がない。

自分がやったことを、やったとおりに見て、
受け入れればいいのだが、
ひとつ、やっかいなものがある。

防衛反応。

美しい言い訳を用意したり、
罪を合理化すること、あなたにはありませんか?

どうして、そんなことをするのだろう。
例えば、この風景にあるように、
悪いことをしているときの気持ち、
それを楽しんだり、嬉しがっている自分はいなかったか?
と、見ていくと、
どうしても、自分の汚い部分を見なくてはいけなくなる。

自分がいちばん認めたくない醜いもの。
認めたくないとふたをするから、
いつまでたっても、そこを根にトラブルが起き、
そこを素通りしようと防衛反応は強まる。

私は、つい言い訳しそうなとき、
「あ、これは防衛反応だな」と自分に言って自覚する
そうして、自分に時間を与えて、考えさせる。焦らずに。

「防衛反応」をいかに見破るか?
これが、反省の最初のキーだ。

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反省の風景2−自責

仕事で、大変なミスをだした。
ごはんものどを通らず、会社にもいけず、
自宅でひとり、
自分を責めては、泣いています。

ダメな私。
認識不足の私。
そのくせ、自分はできると思っていた私。

自分の何もかもがきらいです。
自分で自分が許せません。
いてもたってもいられません。
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反省の二つ目のキーは、「他者性」。

反省の視野の中に、
他者がいるかどうか?

そのー件に関わった人がすべて洗い出せていますか?
それぞれに与えた影響を理解しましたか?
その人たちは、今、どんな気持ちでしょうか?
その人たちに自分は何ができますか?

反省とは、このように、視点を移動しながら、
問いを立て、考えを進める
能動的な作業だ。

反省には気力も体力も要る。
自分を痛めつけるという、
ぜいたくな遊びをしているひまはない。

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反省の風景3−心を入れ替える

職場で、また、大量の不良品が出た。
今度も、職員の手抜きだ。
最近、みんなたるんでる。
いつ、誰がミスを出してもおかしくない。

責任者の課長は、深々と頭を下げた。
「もう、2度とこういうミスは出しません。」
と、この光景をみるのは、3度目だ。

全員で反省会をもつ。

部長の訓話のあと、
グループに分かれて、最近の仕事について反省した。
最後は、ひとり一人、
「私は、手抜きをしません。
誠心誠意をこめて仕事をします。」
みたいな、決意表明のようになった。
それを聞いていると、なんか感動して涙が出てきた。

みんなで、心を入れ替えて、
仕事場に戻っていく。

これまでと同じメンバー、
これまでと同じやり方、
これまでと同じ管理体制、
これまでと同じ環境、

心を入れ替えた私たちの、
何ひとつ変わらない仕事が、またはじまった。
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まちがいを犯したのは、本来の自分ではない。
だから、気を引き締め、本来の自分を発揮すれば、
2度と同じまちがいは犯さない。と思いたい。

ところが、残念なことに、
間違いを犯したもの、それも、まぎれもなく自分自身だ。
自分の中に、そういう性質・習慣性・考え方があり、
自分をとりまく環境・人間関係・体制やフローの中に、
原因が潜んでいる。自分にないことは、起こせない。

その原因を分析して、何かを変えることだ。

反省の3つ目のキーは、
「将来に向けた修正」。
これができるかどうか。

次週は、謝罪・償い、
そこから人間の可能性について考えたい。

2001-08-29-WED

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