YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

春だし、
何か新しいことをはじめてみようか、
というあなた、

人事異動で1からスタート、
というあなた。

先週の17歳のビジネスマンを読んで、
友人が声をはずませて、こんなことを言った。

ねえ、
あの子が17歳でできたってことは、
年齢や経験に関係なく、
あたしたちも、
いつからでもはじめられるってことよね。


そっか! いつだって若い人は、
経験なく、道を歩くプロだ。

自分もそうだったはず。
十代のころは、何もわからず、
それでも、どうにか歩いていた。
その記憶は、からだのどっかに眠っている。

前に進むしかない若い人の姿は、
自分の中の十代をムクムクと起こしてくれる。

この感覚があれば、
いつからでも、何歳からでもはじめられそうだ。

今週もひきつづき、
十代のビジネスマン清水くんに話を聞いてみたい。
彼の姿に、あなたは、
自分の中の、どんな可能性を見つけるだろうか?

Lesson43 自分のフィールドを発見する
(2)面白い、からはじめてみよう!


PHOTO by BRUCE OSBORN

14歳、学校へ行かない中学生のとき、
はじめてインターネットに触れ、
15歳、ネットを通じて、今の社長と出会う。
2000年6月、17歳でネットビジネスの会社に
立ち上げメンバーとして加わる。
映画のプロ―モーションなどを企画・制作する
清水貴規くん、現在18歳。

●泣きそうになった、雪の日の映画館

23歳の社長を中心に、
ぼくらが会社を立ち上げて、この3月で10ヶ月、
いい方向にいっていると思います。
社長が地道にやってきた結果、
もうすぐ株式化、メンバーも創業時の倍になります。

いちばん印象に残っている仕事は、
映画『クリムゾン・リバー』のプロモーション、
初登場、第一位になりました。

宣伝全体の中で、
ぼくらは、インターネット部分を任せていただきました。

インターネット上で、どう宣伝を展開するか企画し、
公式サイトをつくり、
ネット上のできる限りの媒体に、情報を流していった。
テレビ・雑誌など他のメディアとも、
うまく連動できた、いい例だったと思います。

駅張りのポスターや、テレビCMや、
来日したジャン・レノ自ら配ったステッカーにも、
ぼくらがつくった公式サイトのURLが、
ガーンと載っていて。
自分の関わったものが世の中に出て行くっていうのは、
はじめての経験だったんで、すごかった。

公式サイトでは、
勝手にオフ会とかやってくれてるんですよ(笑)!
ぼくらは、フィールドを用意し、種をまいて、人を呼び込む。
果たして、そこで盛り上がってくださるかどうか、
神任せの部分ですから、
サイトにコミュニティーができたことは、
すっごいうれしかったですね。

でも、いちばんうれしかったのは公開初日。
スタッフで日比谷スカラ座に行ったんです。
そしたら、すごい雪の中、こう、
実際にお客さんが集まって来てくださるわけですよ。
終わった後、
「いやー恐かったよね」
「面白かったよね」
ってお客さん同志が話している声を聞いて、
ちょっと泣きそうになりました。

●ぼく自身、挫折は何回も感じました

まず、やり方がわからない。
サイトをつくるなど、一つ一つの仕事はやってきたんですけど、
トータルで、いつの時期に何がでるか
全部考えてやるっていうのは、
ぼく自身は経験がなかった。

それに、刻々と状況が変わるんです。
途中で公開が2週間早まるなんてことがあり得るわけですよ。
スケジュールをどう繰り上げるか?
時間がない中でもクオリティーの高いものを出したい。
あるいは、とにかく構成を重視して載せられるものから載せよう。
と、メンバーのビジョンもそれぞれですから。

ぼくが挫折を感じるのは「判断」の部分なんです。

メンバーの中でぼくが一番年下ですが、
仕事は年齢じゃないと思います。
例えばクリエイティブっていうのは、
センスだから年齢関係ない。
でも、判断は間違いなくセンスじゃない、「経験」です。

ぼくがこうだ、と思ったことがこうでないんです。
それは挫折ですよね。

だから、
判断は、今の自分の仕事ではないと思います。
プロデューサーの方とか、
もう何十年も映画業界で修羅場を経験している人の
判断に間違いはないと考えて、
いかに自分と自分の仕事に折り合いをつけ、
合わせていけるか、
極力努力するっていうのが、今の自分の仕事です。

自分よりゼンゼン年上の人と仕事をすると、
自分にはどれくらいの知識・技術があり、
社会の中でどれくらいの影響力をもち、
何ができるのか、
すごく明確に気づかせて、叱ってくださったりするんで、
後から考えるとうれしいですね。

立ち上げのころを考えると
あの頃はまったくまわりが見えてなかったです。

今すこしずつ、
メンバーにノウハウをシェアできるようになってきています。
例えば、WEBサイトに情報を載せてもらうには
どうしたらいいか。
どの媒体に出すとどのくらいの反響が見込めるか。
メールマガジンの制作・運営をどうするか。
すごく見えてきたんで。

あ、メールマガジンは半年で倍になりました。
10万にあと少し。これは日本で最大規模です。

できなかった仕事ができるようになるっていうのは、
次の仕事のことを悩みはじめてるときですよ、たぶん。

たとえば『クリムゾン・リバー』のときは、
僕はどうやってサイトに情報を掲載すればいいのか、
悩んだわけです。
でも今やってる『メキシカン』っていうブラピの作品とかは、
どうやって出せばいいかわかっているんで、
プラスα何やったらいいのか考えてる。

次の段階のことを悩んでいるときに、
ああ、できてるじゃん! って思います。
いつまでもおんなじ仕事に対して、
できない、できない、できない、って悩んでいたとしたら、
それは仕事ができないということなんでしょうね、たぶん。

●ネットは人を引きつける

いま僕らは、雑誌やテレビなどに、
コンテンツを提供できるようになりました。
そこに「パワー・ド・バイ・シネマカフェ」とあっても、
それが、もともとはインターネットから出てきたもので、
個人の映画好きの集まりが、
ただ好きでやっていたなんて、みんな思わないでしょう。

インターネットのすごいところは、
人を引きつける部分だと思います。
ぼく自身、引きつけられ、人と出会った結果、
14歳のときからの夢が、現実の仕事になっている。
でも、引きつけられたのは、ふわふわした夢じゃなくて、
「やったら面白い」という好奇心からでした。

仕事の現場でも、単純にこれをやったら「面白い」っていう
アイデアを集めて、盛り上がって…ってことが多いですね。
「ただ情報のせるんじゃつまんない」「ならこうしよう」って。
あんまり狙って、絶対これをするためにこうするんだ、
っていうのは、うちの会社的じゃないですね。
インターネット自体、こうすればこういう結果が出るっていう
確証なんかない、まだ、ほとんど感覚に近いわけですから。

面白い、と思ったら、あんまり難しく考えないで、
もっと素直になっていいと思います。
これやったらいけない、これやったらこうなる、
なんて、そこまで考えていたら何もできなくなる。
いま僕は、そんな心配できないほど忙しいっていうのも
あるんですけど(笑)。
好きだと思ったら、それをやるべきだと思います。

2001-03-28-WED
YAMADA
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