YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson 13  彼女を飽きさせないメールってありますか?
       ----読者と山田の往復メール その1----


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Lesson12「メール入門」を読んで、
感想を持ちました。
僕は、23歳の大学生です。
知り合って1年半、告白してふられて半年の女の子と、
友だちとして続いていて、
いまだに好きなのだけれど、
どうしたらよいか、というメールを、
編集部のみなさまに
以前に出したことがあります。

「飽きる」ことと、メールを出すこととは、
大いに関係があると思います。

彼女とは、半年間、
メールのやりとりを「ほぼ毎日」続けているのですが、
さすがに「ほぼ毎日」になると、
話す(書く?)内容も限られてきます。

彼女が、メールのやりとりに飽きてきているのが、
僕にはなんとなく伝わってきていて、
返事がない日があったり、
お義理程度の短いメールであることも、
しばしばです。

彼女に飽きられてしまうことは、
僕にとっては「死」を意味します。

だから、彼女との間には、
オンライン上でも、
何らかのイベントを発生させる必要が
出てくるのです。

僕が、
「カゼをひいてめちゃ苦しいよお」とか、
「どーうしても重要な相談がある」とか、
多少、大げさにでも、伝えていかないと、
彼女は、僕のメールに飽きてしまうからです。

ときどき、
そんなことをやっている僕って、
なんなのだろう?」
と、ふと我に立ち返ったりしてしまうこともあります。

僕も、彼女に飽きているのかな?

つきあう前からこれじゃ、
万が一つき合っても、
その後が長く続かない気がしてきた。

ズーニー山田先生、どうでしょう?

M


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Mさんへ

ズーニー山田です。
この気持ち、すごいわかります。
ああ、むずかしいなあ…。

根本的な問題解決はとてもできないので、
小論文の延長で言えることだけ書きます。
参考になんないです。

私は常ひごろ、
表現というものは、「なにを言うか」より
「どんな気持ちで言うか」がすごく大事だと思っています。
その人の根っこにある想い・動機。
これを「根本思想」と言います。

根っこの気持ちがLOVEだったら
「バカ!」って言ってもあったかいし、
根っこの気持ちが軽蔑だったら
「おりこうさん」と言っても冷たいんです。
さらに、根っこに軽蔑をためた人から発せられる言葉は、
何を言っても、どう言っても、冷たいんです。

そこで、Mさんの、根本思想は、
…よくMさんのこと知らないのに、憶測で言う失礼、
お許しくださいね。まちがってるかもしれませんが…

「恐れ」ではないかと思うんです。
飽きられたらどうしよう…という恐れ。

個人的なことで恐縮ですが、
私はものを書くとき、絶対、
「…たらどうしよう」の気持ちで
書かないようにしています。
それは「恐れ」を行動動機とすることで、
恐れの支配下になるような気がするからです。

エゴから発した表現は人に伝わりません。

そういう気持ちにとらわれた時は、
書くのをやめ、
少し、根本思想が変わるのを待ちます。
「根本思想」を変えないかぎり、
話題を変えても、読み手への印象を
変えることはできません。

人や、社会に対して、
何か、あたたかいもの、ポジティブなものが、
根っこに沸いたら、思いきって書きます。

好きな人にメールを書くのだから、
勇気とか、希望とか、やさしさとか遊び心とか、
そういう気持ちが芽生えたときに、
お書きになってはどうでしょう?
検討はずれだったら、ホントすいません。
またメールください。

恋の相談にはからっきし弱いズーニーより

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友だちとの会話がちょっと息詰まった…
という数年まえのある日、
私は、自分の発言の動機を探ってみたことがあります。
いやな自分を見てしまいました。

それは、私の方がすごいのよを相手にみせつけたい、
という自慢でした。

話題は、昨日観た映画から、
友だちと行ったレストラン、
最近の仕事、

と移っていくのだけど、
何を言っても、どう言っても、
自慢たらしいのです。

これでは、相手への信号は同じ、
会話がはずまないのも当たり前だと。

で、私は、なんで、目の前の友だちに、
仕事の内容や、
自由時間の過ごし方で
勝とうとしてんのか?
あるいは、勝ちを誇示しなきゃなんないのか?

はっとして、ポカンとしました。

それから、折にふれて、
私を今、この会話に向かわせている「根本思想」
私を今、この仕事に向かわせている「根本思想」
を探るようになりました。

意見は、ちょうど氷山の見えるところのようなもので
水面下には、その人の思想・価値観が、
大きく横たわっています。

自分の根本思想を探りあてるのは、
そんなに難しいことじゃなくて、
文章を読んで要約をするという
トレーニングをやっていくとできるようになります。
いつか、この教室で
トレーニングしてみたいと思っています。

最近、恋人が冷たくなった、もしや浮気?
を心配する人が。

「昨日、どこいってたの?」
「私の誕生日、覚えてる?」
「ねえ、二股かける人をどう思う?」

っていうように、他に好きな人いないか?
私のことを好きか? を
「試すモード」に入ってしまうことがあります。

根本思想が同じですから、どんなに話題を変えても
相手は常に同じ「試されている」という
印象を受けることになり、そのたびに、
ハンコを押すような行為を迫られることになります。

執拗につづくと、飽きるか、うんざりするか、
愉快な根本思想の持ち主から繰り出される
楽しい会話に惹かれていくかになります。

そういう悪いモードに入ったら、
スイッチを切り替えるか、
いったん発言スイッチを切って休むことをおすすめします。

引き続き、メールに関する
悩み募集中です→ postman@1101.com

2000-08-23-WED

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