YAMADA
おとなの小論文教室。
感じる・考える・伝わる!

Lesson7 会議を開こう!

生徒会や家族会議、仲間の話し合い…。
私たちは、わりとたくさん、
会議をしてるんじゃないでしょうか。

こんな会議は困りものです。
・みんなの話のレベルがちょっとづつずれている。
・なんとなく立場の強い人の意見で決まってしまう。
 (=キャリアやバックボーンの違う人が
   同じ土俵に立てない。対等でない。)
・マンネリ。次に誰が何を言うか、
 だいたい予測ができてしまう。

今日は、「問い」に着目して、会議を活性化させる
ちょっとしたヒントを探っていきたいと思います。

●議題を疑問文の形ではっきりさせる,

たまに、「秋の特別企画について」というような
あいまいな議題を設定している人を見かけます。
しかし、このまま会議をすると大変。例えば、

Aさん「キャラクターグッズのプレゼントを提案します。」
Bさん「10月に入ると顧客が忙しくなるので、
    9月に実行できないだろうか。」
Cさん「いや、ライバルに差をつけるには、競合他社と同じ
    10月にぶつけてインパクトを出した方がいい。」
Dさん「昨年の特別企画は予算の割には効果がなかった。
    この時期に、本当に特別企画が必要か。」

こんな、バラバラな発言が飛び出すのは、
議題が漠然としていて、ここからいくつも、
「問い」ができてしまうからです。
A〜Dの人物が取り上げた
「問い」をチェックしてみましょう。
(「発言」をひっくり返すと、「問い」が割り出せます。)

A・特別企画のアイデアとしては何があるか?
B・実行時期はいつか?
C・競合他社に差をつけるにはどうしたらいいか?
                ↑
D・秋の特別企画はいるか、いらないか?

*Dの「問い」に対する「答え」によっては、
 A,B,Cの問いは意味をなさなくなる。
*B、Cはともに時期について発言しているが、
 問題意識は違う。

こうなってしまうと、発言の交通整理だけでも大変だし、
会議の終わりごろ、Dのような一段深いレベルの
問いが出てきてしまって、それまでの検討が
無意味になってしまうことさえあります(会議の転覆)。

議題は、単語ではなく、より具体的な疑問文の形で、
事前にメンバーに伝えておく必要があります。例えば、

例1.秋の特別企画のアイデアとしては何があるか?
 →「案だしの会議」をしますので、
1人1案以上持ち寄ってください。
この日は、決定はせず、できるだけ
多様な可能性を洗い出すことを目的とします。

この議題では、主宰は、あがったアイデアを、
自分で軸を設定して整理していくことになる。
そして、もれている観点はないか、
必要で十分な可能性が洗い出せているかが
確認できればいったん終了。
(それぞれの案の善し悪しに突っ込んでいくと、
会議がそれてしまう。)

例2.秋の特別企画の実行時期をいつにするか?
→「決定」の会議を持ちます。
この日結論を出しますので、各自、
自分の結論と、その根拠を用意してきてください。

この議題では主宰は、決定に
必要十分な人物を選ぶことがまず求められる
(決める会議なのに途中で
「あの人がいないと決められない」とならないように)。
判断の分かれるところ(争点)を整理しておくことと、
争点に関する判断材料を用意しておくことが必要になる。

このように「問い」をはっきりさせることで、
会議は誰の目にもわかりやすく、すすめやすくなります。

会議中、ずれた発言が出てきて困ったら、
発言から逆算して
その人が取り上げている「問い」を割り出し、
その「問い」と議題の「関係」を考えると、
うまく交通整理できます。

問いにふさわしい「メンバー」を選び抜き、
「立場」を明示する。


会議はメンバーありきではありません。
それだと、いつも 同じメンツで、
予定調和の会議に落ちいってしまいます。

メンバーは「問い」が決定します。
つまり、その「問い」を検討するために、
最も有効な人物を、主宰が、大胆に、
そして漏れがないように、毎回選び抜きます。

「だれと会議をするか?」
は成功のカギを握っています。

先ほど言ったように、決定の会議では
「決定権を持つ」人がこなければ始まらない。
また、「子ども会の旅行をどうするか?」を、
いつも大人だけで決めている人がいるとしたら、
当事者代表として子どもをメンバーに入れると、
会は違ったものになります。

また、テーマについて、幅広い知識や経験をもつ人に
ゲストとして来てもらうのも手。
素人だけであーだこーだ言っても埒があかないとき、
プロを一人呼ぶだけで、会議のレベルは変わります。

必要なのは、参加する人に、「問い」とともに、
その人の「立場」を明らかにしておくことです。
そして、その立場での準備をしてきてもらう。

先ほどの「子ども会」の例では、
「難しい話には、ついてこれなくてもOK。
でも旅行の計画が、子どもの気持ちとずれていないか、
そういう時は遠慮せず言って欲しい。だから、事前に、
みんなの思っていることをよく聞いておいてね。」
というように。

共通の「問い」があり、その問いと自分の「関係」がわかり、
適切な準備の余地が与えられれば、キャリアが違う人も、
はじめて会う人も、バックボーンが違う人も、
同じ土俵に立てるのでは。


●よい「問い」を発見する

以上のように「問い」をどう設定するかで、
準備も、メンツも、発言の整理の仕方も、
着地点も違ってきます。
まさに、会議を生かすも殺すも「問い」しだい。

いくら具体的でも、これからやろうとすることの
範囲を狭めてしまう「問い」では困ります。

例えば、お父さんの還暦祝いについて、
家族会議を主宰するときに、いきなり
「お父さんへのプレゼントを何にするか?」 
というような問いを立ててしまうと、
プレゼントありきで企画が進んでしまうので、
それ以外のいろいろな企画の芽をつむことになります。
要領よく話がすすんでも 、
これではメンバーの納得感が得られません。

具体性と価値をあわせもつ問い、例えば、
「お父さんが心から喜んでくれるのは、
どんなシチュエーションか?」という議題を
設定すれば、旅行や、ホームパーティ、
お父さんの旧友からのビデオレターなど、
多様な可能性を生かすこととなるでしょう。

自分の力だけで、「問い」が立たないときは、
事前にブレストや、テーマへの考えを散らかす
ミーティングを持って、衆知を集めてから
「問い」を立てるのも得策です。


●「問い」を目標に向けて配列する

「問い」を立てる順番が違っても困ります。
「実行する時期」を先に決定したが、
その後出たアイデアによって、
時期がまた動いてしまう、といったケースです。

問いと問いをうまく配列する。
目標までの、「流れ」をつくっておくことを進めます。

<会議アウトライン例−お父さんの還暦祝い>
第1回会議:「お父さんが心から喜んでくれるのは、
どんなシチュエーションか?」
ゲストで、近所のお父さんの飲み仲間も呼び、
思いのたけを語り合う。
           ↓
第2回会議:「具体的に何をやるか?−案だし会議」
前回決めた方向にそった具体案を出し合う。
           ↓
第3回会議:「最終的にどの案にするか?−決定会議」
           ↓
第4回会議:「いつ、だれが、どのように実行するか?
−詳細企画検討会議」
前回、案が採用された人が詳細企画を持ってきて、
みんなでそれをたたき、完成させる。
日程と分担、予算などを決めていく。
           ↓
      お父さんの誕生日に向けて実行

上記のように、今回の会議が、次の展開に
どうつながって目標にたどりつくのか、
「流れ」が見えると、メンバーのやる気も違ってきます。

完璧な流れができないときも、
せめて会議の前に、この会議の次にどうするか、
1手先を伝えるだけで、意味が見えてきます。

独自の「問い」を発見し、「メンバー」を選りすぐり、
知恵と工夫で、あなたにしかできない会議を開きましょう。

2000-07-12-WED
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