江戸が知りたい。
東京ってなんだ?!



 

第5回です。
今日は、「コピーライター」のお話。
そう、源内は、コピーライターでもあったんですよ!




第5回
コピーライター、源内。

芳賀 源内のところには
いろんなお店の旦那さんもやってきて、
源内先生、ウチの商品がどうも売れないんだけど
何かないかなぁ? なんて。
それじゃあ、ウナギは土用の丑の日に、って。
糸井 あれは、ほんとの話なんですかね。
コピーライターっていう商売では
「土用の丑の日」っていうのを考えたの、
源内だということになっているんですよ。
土用にウナギを食べるのは
それより前からあるとも言われていて
ちょっと、あやしいんだけれど。
つまり、キャンペーンの始まりだと
いうことですよね。
芳賀 うん。なんで丑の日にウナギだったんだろう?
糸井 何も関係ないらしいですね。
芳賀 あ、そうですか。
何にも関係ないところがいいのかもしれませんね。
丑の日に、急に奮い立つんだね。
糸井 ええ。それ、素晴しいなと思うんですよ。
芳賀 頭文字の「う」だけがつながってるから。
「うし」と「うなぎ」とね。
糸井 そうですね(笑)。あ、それは、ありますね。
ウナギ屋なんかに、
「う」だけ書いてありますよね。
芳賀 あるかもしれませんね。
糸井 江戸文化って、言葉が重なってるだけのことで、
ずいぶんやってますからね。
芳賀 うん、そうそうそう。
そういう遊びをしょっちゅうやってますからね。
いい文化ですねぇ。いい時代ですよ。
糸井 面白いですね(笑)。
芳賀 糸井さんみたいなのが
何百人、何千人といたわけだ。
糸井 (笑)みんな、そんなバカなこと
考えてたわけですねぇ。
会場 (笑)
糸井 いや、素晴しいなと思うのが、
たとえばある町に、インテリたちが集まるだとか
文化人が集まるだとかっていうと、
たとえばサルトルとボーヴォワールがいた
喫茶店が、ラ・クーポールといいまして、とか、
よくそういう話がありますよね。
芳賀 うんうん。
糸井 だけど、なんか一色なんですよ、話が。
芳賀 うん、そうね。実存主義で一色ですね。
黒いシャツ着てね。
糸井 いわば、組織的なんですよね。
だけど、源内のところには、おしゃれがある、
西洋がある、国益がある(笑)。
芳賀 学問がある、蘭学がある。
国学だってあるし、絵もあるし、
エレキテルもあるし。
それから、寒暖計もあるし女の人の櫛もあるし。
あの、お財布も煙草入れもあるし。
源内はいつもあれは、いい着物着て、
恰幅が良かったそうですからね。

【闡幽編:安原枝澄ほか】 (財)鎌田共済会郷土博物館・個人蔵
糸井 バッラバラなものがぜんぶあるっていうのは、
「豊かさ」だと思うんですよ。
芳賀 ああ! ほんとだ。ほんとだ。
そうですよ。で、なんか、
排除したり整備したりしないですね。
糸井 しないですね。
芳賀 これそうすると、豊かにバラバラだと、
いつのまにかそのバラバラが
お互いに繋がったりするからね。
糸井 そうですね。
芳賀 それはいいんですね。
糸井 思いもつかない繋がり方が。
芳賀 人の頭は、考えたんじゃ出てこない繋がり方が、
雑然たるものがあることによって、
クシャッと磁石が変わるものですからね。
糸井 カオスですよね、いわばね。
芳賀 ね、うんうん。確かにそういうことはありました。
糸井 芳賀先生のお話に、そういうの、
とっても好きだっていう様子が、
よく表れてますよね(笑)。
芳賀 ああ、そうですか(笑)。
糸井 芳賀先生も、ご自分のお話ですから
言いにくいのかもしれないですけど、
興味の持ち方が、やっぱり飛び飛びに‥‥。
芳賀 あ、どうも、ほんとにすいません。
会場 (笑)
芳賀 で、飛んでった先でチョコチョコっとやって、
またこっち、チョコチョコっとかね。
糸井 で、そのへんで源内に共感なさるっていいますか。
芳賀 まぁ、どうでしょうか。いつかわたくしが
『平賀源内』っていう本を書いて、
サントリー学芸賞をもらったときに、
サントリー文化財団の専務の人が間違って、
平賀徹さん、って呼んだんです。
それはひじょうに嬉しかったです(笑)。
会場 (笑)
芳賀 芳賀源内、平賀徹というので。
まあ、でも、そういうこと大事ですね。
これからまだまだ大事ですよ。
あんまりこう、縦軸・横軸で整理せずに、
わざと雑然とさせる。
で、雑然としたところで、
思い掛けない繋がりが出てくる。
インターネットが形成される。
糸井 つまり、今っていうのは、
映画の『マトリックス』じゃありませんけども、
縦軸・横軸で、
中心軸からどのくらいの距離であるから、
どのくらいの番地であるというか、
碁盤の目の番地でしか、
表されないもの同士の関係ですね。
芳賀 うん、なるほどね。
糸井 大きさもわかんなければ、場所もわかんない。
だけど、これとこれは
ウナギと丑の「う」がいっしょだから
いいじゃないか、とか。
芳賀 ついでに、ウナギの蒲焼きのことを、
「サイテヤーク(裂いて焼く)」と、
源内が名付けたと言われますがね。
ありゃあ、ほんとかねぇ。
糸井 はぁ〜!
芳賀 いつかNHKの番組でね、その真偽を訊かれて、
ほんとに源内が「サイテヤーク」と言いましたか?
なんて。そんなの書いてないわけですよ。
糸井 これ、タモリさんのレベルですよね。
芳賀 しょうがないからわたくしが出て。
「えー、そんなふうに言った記録は、
 何もありませんが、
 しかし源内のことだから
 言ったかもしれません」と、
そうお答えしましたけどね。
いかにも面白いですね。
ウナギのことをサイテヤーク。
会場 (笑)
芳賀 それから、もうひとつあるのが、
源内が発明した機械をグルグル回して、
蚊取り機械があったんだそうです。
蚊取り線香じゃなくて。
糸井 蚊取り機械。
芳賀 うん、蚊を捕る機械。
それで、マーストカートル、
っていう名前を付けたんです。
それはほんとに、源内実記という、
源内没後にいろんなうわさ話を集めた本の中に
あるんですね。
ほんとに、いかに糸井さん式だったか。
だから今日は糸井さんが相棒で
ひじょうにいいなと思って。
糸井 あははは!
僕は芳賀先生が何でも知ってると思って、
もうあてにして来たんですけども、
やっぱり自分とも関係ありますね。
芳賀 ね、そうでしょ?
コピーライティングの走りですしね。
あの「清水餅」(きよみずもち)
っていうのも餅屋さんに頼まれて、
その宣伝文句を書いた。それから何でしたっけ、
歯磨き粉の宣伝文句。何か逆宣伝ですよ。
これを使えば、ほんとに歯がきれいになる。
口の臭いのもぜんぶ取れる。
だからやってみろ、
どうせ間違ったって安いもんだから損はしない、
とかいう、そういう広告。
清水餅のほうは、
これは甘くて美味しいというのが、
ワーッとこう書いておりますけどね。
糸井 春信から後ろの浮世絵っていうのも、
ちょうど今のブロマイドだとか、
広告のグラビアだとかの役割をしてたって
いうわけですから。
芳賀 ああ、そうですね。うんうん。
今よりもっとこう芸術品で、
もっと美しいですねぇ。
糸井 ですよね。
芳賀 あの春信が描いた、「柳家お藤」とか
「笠森お仙」。ねぇ。
糸井 春信はきれいですねぇ〜。

【採蓮美人:鈴木春信】 東京国立博物館蔵
芳賀 うん、ああいうのは、
ほんとに何でもない普通の人が買ったんですよ。
江戸見物に来た人、京都から江戸に下ってきた人、
そういう人が、最近大いに売れてる春信先生の
大和錦絵というんだそうだ、
といって買って帰る。なんでもない人々がね。
糸井 う〜ん、いいですねぇ!
芳賀 ねぇ! 文化の水準の高いこと。
源内、春信の時代の文化に比べると、
今の日本はなんと文化の地に落ちたことか。
糸井 つまらないですねぇー。
芳賀 だから糸井さん、頑張って下さいよ。
会場 (笑)
糸井 いやぁ、頑張りたいですよ、その‥‥。
芳賀 マーストカートル。サイテヤーク。うん。
我々は小さいころ、よく、スカートのことを
スワルトファーなんて言いましたよ。言いません?
会場 (笑)
糸井 ああ。ヒネルトジャー(水道)もありますね。
オストアンデルっていうのもありますよ。
芳賀 あれみんな平賀源内式。
糸井 外国語を学んでるうちに、
リズムに反応したんでしょうね。
芳賀 今、薬の名前っていうのは、
よくそういうのが多いですね。
糸井 ああ、ありますね。
芳賀 ノムトデールとか。
糸井 ケロリンなんていうのはもうすでに。
芳賀 うまいことやるね(笑)。
どうもやっぱり源内のころからの、
ああいう戯れ言葉、ダジャレの続きですね。

江戸はほんとうに、ゆたかだったんだなあと
芳賀先生のお話を聞いていると、実感します。
明日は、源内が住んだ江戸についてです。


2004-01-13-TUE
BACK
戻る