担当編集者は知っている。


『コウノトリ、再び』
著者:小野泰洋、久保嶋江実
価格:¥ 1,995 (税込)
発行:エクスナレッジ
ISBN-13:978-4767806549
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この本の舞台、豊岡市は
かつて日本各地の里山に生息していたニホンコウノトリが
最後まで生息していた場所です。
この豊岡市が町をあげて取り組み、
一度絶滅してしまったコウノトリを人の手で増やし
再び野生に戻すという夢のような話を
現実のものとしました。
このことを特集したNHKの番組をきっかけに、
24年間かえらぬ卵を見守り続けた青年、
行政にはたらきかけた市職員‥‥などなど
里山復活の舞台裏を描いたのがこの本です。
たくさんの人々の想いには、実話こその感動があります。
この本を担当されたエクスナレッジの
山浦さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」小川)


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担当編集者 /
   エクスナレッジ・書籍編集部 山浦礼子





空を舞うコウノトリ
(小野泰洋さん撮影)


「コウノトリだ! 4羽も。きれ〜い。
 あっ、降りてくる。すごいスピード。大きいんだぁ」

2006年9月23日、この本の舞台である
兵庫県豊岡市のコウノトリの郷公園を訪れた。

その前年、保護されてから34年ぶりに、
コウノトリは日本の空へ再び舞った。
郷公園はそのコウノトリの保護・増殖施設で、
採餌の時間になると、野生復帰したコウノトリが
どこからともなく現われる。

いくえにも連なる山並みを背景に、
稲刈りを終えた田んぼがどこまでも広がり、
秋の澄んだ空気のせいか、空がとても高い。
そんななかを4羽が一堂に会し、
ゆうゆうと空を舞っていた。
なんだか神々しい光景だった。

話はさらにさかのぼるが、この本
『コウノトリ、再び』を依頼することになったのは、
その1か月ほど前に見た、NHKスペシャル
『コウノトリがよみがえる里』
がきっかけだった。

この番組のテーマは農業や地域の再生。
コウノトリ復活という並大抵ではない努力に支えられ、
日本の新しい未来の姿が描かれているような気がした。
こころが温かくなる、いい話。だから、
「この話をもっと多くの人に伝えたい!」と思った。



豊岡の田園風景
(久保嶋江実さん撮影)


番組の翌日、さっそくNHKに電話。
ディレクターを紹介してもらい、
その2日後、会いに行った。
ディレクターの名前は小野泰洋さん。やさしい目をして、
コウノトリと復活プロジェクトについて語ってくれた。

小野さんはひょんなことから10年以上も前に
コウノトリの保護活動にかかわりをもつことになった。
以来、東京⇔名古屋と異動を繰り返すなか、
何度も提出してようやく通ったのが、
あの「Nスペ」だったのだ。
小野さんとの会話で、番組の背景には
伝えきれない、たくさんの物語があることを知った。

翌週、小野さんは、
現場を担当する女性ディレクターを紹介してくれた。
彼女の名前は、久保嶋江実さん。
すらっとした、知的な女性である。久保嶋さんは、
『ダーウィンが来た!』の番組も手がけるなど、
野生動物番組をずっと制作してきた。
だから、とても動物の生態に詳しい。



雪のなか電柱にとまるコウノトリ
(小野さん撮影)


小野さん、久保嶋さん、私の3人で話し合い、
本の構成は、この年の秋の終わりにはできた。
しかし、それからが長かった。

なぜなら、とにかく2人とも多忙だったのだ。
当時、小野さんは相当数の番組を抱えていたし、
久保嶋さんは長期海外取材や
短期の国内取材に出かけることが多かった。

それでも顔あわせだけは欠かさずにやってきた。
2週間に1度、お互いの進行をチェック。
原稿は遅々として進まなかったが、
コウノトリや豊岡の人々、生命の神秘など‥‥
話題は尽きることなく、楽しいひと時を過ごした。

そして2007年8月、カバー撮影のため、
写真家の本城直季氏とともに、空路豊岡へ。
その年の日本一の猛暑を記録した前日から、
撮影は敢行された。
本城さんは何時間も炎天下でその一瞬を狙った。
写真家はたいへんな仕事なのだ。
ところで、初日の晩、真鶴産の岩ガキを食べた。
豊岡は城之崎温泉を抱え、冬の松葉ガニは有名。
しかし、この岩ガキも絶品! おススメである。

ようやく全体が見渡せるようになった2007年12月、
著者たちと豊岡市を訪問。
駆け足で最後の追加取材を行った。
この晩、運よく農家の方の忘年会に同席することができた。
その年、稲作に活躍した
(実際はあまり働かなかったらしい)アイガモの
鍋をごちそうになった。アイガモ農法のカモが
こうして食されることをはじめて知った。
意外と合理的なのだ。





上から順に
豊岡の田植えの風景、
収穫量を調査する農家の方々
(2点とも久保嶋さん撮影)


話がだいぶ長くなったのだが、
そんなこんなで、この本は誕生した。
コウノトリという地域再生のシンボルとともに、
そこに込められた、人々の熱い想いがこの本の主役である。
コウノトリ捕獲開始からすでに40数年のときをへて、
時代は随分と変わった。

しかし、それでもなお、善く生きたいと想い、
自分たちが安心して暮らすことのできる
豊かなふるさとを追い求める姿は、永遠だ。
この本にはそうやって生きている人たちの姿が
描き出されているのではないかと思う。

機会がありましたら、本書をお手にとってみてください。
そして、コウノトリの舞う里山、
豊岡へ、ぜひお出かけください。


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『コウノトリ、再び』
著者:小野泰洋、久保嶋江実
価格:¥ 1,995 (税込)
発行:エクスナレッジ
ISBN-13:978-4767806549
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2008-10-21-TUE

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