担当編集者は知っている。


『プラネット・グーグル』
著者:ランダル・ストロス
翻訳者:吉田 晋治
価格:¥ 2,100 (税込)
発行:日本放送出版協会
ISBN-13:978-4140813225
【Amazon.co.jpはこちら】


グーグル(Google)が設立されて10年。
実際に使ったり、その名前を耳にすることは多いですよね。
でも、この「グーグル」ってなんなのでしょう。
検索エンジンとしてのグーグル、グーグルマップや
日本でも始動したことが話題になったばかりの
グーグル・ストリートビュー‥‥
いろんな面を持ち合わせ、話題にあふれるグーグルが
なにをしようとしているのか。
そんなことをひも解く、日米同時発売の1冊です。
この本を担当されたNHK出版の
松島さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」小川)


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担当編集者 /
   NHK出版 学芸図書編集部 松島倫明



とりあえず、最近のグーグルのニュースからランダムに‥‥

──Googleの世界制覇への先兵か?
  独自ブラウザ「Google Chrome」の明と暗

──「Google ストリートビュー」約7割が
  プライバシーの侵害に不安抱く

──グーグル、「ホワイト・スペース」開放案をFCCに提出
  ワイヤレス市場で次の一手

──グーグルの新OS「Android」搭載携帯、発売日決定

──グーグル、「世界を良くする」アイデアに
  賞金1000万ドル

──創業10周年のグーグル、エンタープライズ事業への
  注力をあらためて明言


さて、ここで質問です。
グーグルとは、いったい何の会社でしょうか?


身近なようでいて案外何をやってるかよく分からない、
グーグルとは典型的なそんな存在ではないでしょうか。
僕自身、いつも公私両面でグーグル検索や
グーグルマップを愛用している割には、
この問題にクリアに答えるのは難しく、
それは例えば「Web2.0とは何か?」という質問に
明解に答えづらいのと同様の居心地の悪さがありました。

そんな折、ちょうど去年の今ごろに、
エージェントからこんな企画があるよと紹介されたのが、
本書のアメリカ版原書『PLANET GOOGLE』でした。
まだ企画案段階で原稿は一部しかなく、
グーグル10周年となる2008年9月の刊行を目指して
これから執筆するとのこと。
著者はシリコンバレーのビジネスに精通していて
New York Timesでも連載を持つランダル・ストロス教授。



アメリカ版Planet Googleのカバー。
日米同時発売です。


その企画案では、グーグル革命と騒がれた
2005年ごろの時期を指して
「グーグルの幼年期を見ていたに過ぎない」
と述べていました。
では、青年期に達したグーグルとは何者なのでしょうか?

折しもグーグルはあのYouTube買収で世間を賑わし、
僕自身もグーグルアースの面白さに
文字通りぶっとんでいたころでもあり、
検索と広告モデルという従来のグーグル像に
収まりきらない何かを感じていた時でした。
けっきょく日本の出版社3社のオークションの末に
その版権を獲得することになったのです。

はたして今年4月にやっと送られてきた原稿には、
「グーグルという存在」への答えが
ごろごろと詰まっていました。
ともかく冒頭の問いに答えるとすれば、
グーグルとは

「世界中の情報を整理し、
 世界中の人々がアクセスできて
 使えるようにする」会社

と言えるでしょう。
これはグーグルのホームページにある
「Googleのミッション」に明記されているもので、
じつは設立以来ぶれていません。
グーグルスカイなど惑星情報をも取り入れているので
「世界中の情報」というより「全宇宙の情報」と
言えるかもしれませんね。

ですから冒頭のニュースのヘッドラインも、
すべてそのミッションに邁進するグーグルの
個々の場面を切り取っているのだと言えるでしょう。
実際、日々進化を続けるグーグルは
毎日のように新たなニュースを振りまきます。
版権をとった去年と比べても、
2008年に入ったグーグルは株価の低迷や広告収入の鈍化、
そして最近では夢のような社内の福利厚生を
カットするなど逆境を迎える一方で、
冒頭のように携帯電話のOSや独自のウェブブラウザを
公開したり、ストリートビュー上陸で日本を騒がせたり、
広告ビジネスでのYahoo!との提携を模索するなど
ますます多面展開の様相を呈してきました

その中でも僕が特に面白いなと思ったのは
企画案にはなかったのに急遽、本書の第一章として
加えられた、グーグルとFACEBOOKの「抗争」です。



世界的SNS、FACEBOOKのホームページ。
2008年5月には日本語版もスタート。


日本では mixi が有名なSNS=
ソーシャルネットワーキングサービスですが、
世界的には MySpaceとFACEBOOKが二強と言われています。
mixiの登録者が1500万人、FACEBOOKが7000万、
MySpaceはなんと2億人のアカウント数を誇ります。
僕自身も日本の友達用には mixi、
英語ネイティヴの友達用にはFACEBOOKと
使い分けているのですが、
この両方とも、じつはグーグルでは検索できないのです。

と言っても当然と言えば当然のことで、
友達同士の会話や写真のやりとりを
グーグルで他人に検索されたらたまらないわけですが、
「世界中の情報を整理する」ことをミッションとする
グーグルにとっては、そのお膝元である
インターネットの世界で、検索できない領域が
ますます広がっていることを看過できないのです。

これは「開放か閉鎖か」というインターネットにおける
神学論争のような深淵なテーマを含んでいて、
つまりグーグルが開放的なネットの世界を
自由にインデックスしていくことで世界中の情報を
検索可能なものにしていくのに対して、
SNSはちょうど昔のパソコン通信のBBSのように、
外からは入れないような、塀で囲われた庭の中で、
人びとが交流したり情報を交換する場になっている、
という対比関係にあります。

今後このグーグルとSNSの覇権争いが
どのような様相を呈するのか、
同じWeb2.0を標榜しながらもその趨勢を左右する
注目すべき点といえるでしょう。

本書『プラネット・グーグル』では、
これ以外にもグーグルブック検索vs.出版社
(書籍や雑誌の内容をも検索可能にしたい
 グーグルの前に立ち塞がる著作権の問題)
グーグルストリートビューvs.プライバシー
(公道でのプライバシーはどこまで認められるのか)
動画vs.検索アルゴリズム
(ますます当たり前になる動画。その内容は
 従来の「言葉」の検索技術では太刀打ちできない)
などなど、いま一番ホットといえる
グーグルのチャレンジの数々が詳しく描かれています。
そして、それらを紐解いていくことで、
この「惑星グーグル」の10年目の全体像が
浮かび上がってくるはずです。

本書の装幀ではこの惑星グーグルの野望、
遺伝子から惑星までを射程に
人も情報もすべてを呑み込んでいく
「終わらない試み」を表現できればと思い、
漫画界と美術界の双方でリスペクトされる
希有なアーティストである鬼才、横山裕一氏の
作品を使わせていただけました。
ヒトとモノと情報を融合しながら
まったく新しい世界像を描いていくという
現時点でのグーグルの野望を表現するのに、
これ以上フィットするものはないのではないかと、
その著書『NIWA』の図版使用許可をいただいた時は
デザイナーの水戸部功さんと二人で興奮したものです。
この場を借りて横山裕一氏とイースト・プレスさんに
お礼申し上げます。



横山裕一『NIWA』。名著です。


ところで最後にもうひとつ質問です。
「Google」の名前の由来をご存じでしょうか?

じつはまったくの造語ではなくて、
10の100乗を指す「googol(ゴーゴル)」という
数学用語をもじって名付けられました。
「ウェブ上で使用可能な
 膨大な量の情報を組織化する」
というグーグルの使命を反映したものです。

そして、この9月に10周年を迎えたグーグルは、
「プロジェクト10の100乗」という
期間限定の新しいプロジェクトを始めました。
必要最小限の物質的な豊かさの中で、
個人がより幸せを感じるのは人の役に立つことである、
という発見をもとに、世界から広く
「人に役立つ」アイデアを募集して、
グーグルがそれを実現しようというものです。



グーグルの「プロジェクト10の100乗」
ホームページ。10周年特別ページが開設中。

あれ、またグーグルが何の会社だか
分からなくなってきました‥‥。
ともあれ、プラネット・グーグルの可能性は
まだまだこれから宇宙規模で広がっていきそうです。


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『プラネット・グーグル』
ランダル・ストロス
翻訳者:吉田 晋治
価格:¥ 2,100 (税込)
発行:日本放送出版協会
ISBN-13:978-4140813225
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2008-10-07-TUE

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