担当編集者は知っている。


『旅の仲間
 澁澤龍彦 堀内誠一往復書簡』

著者:澁澤 龍彦、堀内 誠一
編者:巖谷 國士
価格:¥ 4,200 (税込)
発行:晶文社
ISBN-13:978-4794967251
【Amazon.co.jpはこちら】


いまなお根強い人気のある二人が
1960年代後半〜80年代後半にかけて交わした
往復書簡89通をカラーで掲載。
編者による、丁寧で詳細な解説もはいった本です。
堀内さんからのお手紙には、
パリの風景を中心に色鮮やかな絵が添えられており、
澁澤さんからのお手紙には、
当時の仕事や文化について、
ほかの本では書かれていないようなことが読めたりします。
資料としてはもちろん、お二人の
親しい間柄が伝わる手紙を眺めるだけでも満足の1冊です。
この本を担当された晶文社の
宮里さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」小川)


*********************************************


担当編集者 /
   晶文社 宮里潤



大きな展覧会の開催や文庫の再刊などで、
いまも熱い読者を持つ作家・澁澤龍彦。
「血と薔薇」「アンアン」「ポパイ」など、
時代を画した雑誌のアート・ディレクターをつとめ、
絵本作家としても著名な堀内誠一。
ふたりの間に深い交流があったのをご存知の方は、
どれくらいおられるでしょうか。
それほど多くはないと思います。
かくいう僕自身も、
恥ずかしながら最近まで知りませんでした。
そんな人間が、なぜ
ふたりの往復書簡集を担当することになったのか?

きっかけは昨年三月、とある場所で、
中京大学にあるギャラリー・C・スクエアのキュレーター・
森本悟郎さんとお会いしたことでした。
そのときはじめて、六月に開かれる
「澁澤龍彦・堀内誠一 旅の仲間」展のことを
お聞きしたのです。
お話によれば約二十年分の往復書簡があり、
しかも堀内さんのものには、
ほとんどにカラーイラストが入っているとのこと。
それなのに、図録を作る予定はない
というではありませんか。
なんともったいない! 実物を目にする前から
「これは絶対に面白い本になる」と確信。
さっそく森本さんから、
展覧会の企画者である巖谷國士先生、また澁澤龍子さん、
堀内路子さん、堀内花子さんを紹介していただき、
晶文社での書籍化をお願いしたというわけです。
幸いにもみなさんからのお許しが得られた上、
巖谷先生には
編者のお仕事も引き受けていただくことができました。

堀内さんの美しいイラストと澁澤さんの端正な書き文字は、
この書簡集の大きな魅力です。
そこで本書では、第一部に
全書簡をそのままカラー図版として収録しました。
電子メールでは味わえない、
手書き書簡の生き生きとした楽しさを感じてください。
また書簡を活字化した第二部では、巖谷先生が
全書簡に加えた注釈も読みものです。
ただ詳しいというだけではありません。
巖谷先生がふたりの対話を楽しみながら、
ご自身もその対話に加わるように書かれた
素晴らしいガイドになっているのです。
澁澤さんと堀内さんを通して見た、
ヨーロッパの絵画・映画・文学案内の趣もあります。
膨大な固有名詞が溢れる本文の記述を
見事に読み解いた巖谷先生は、その意味でも
本書の三人目の著者といっていいでしょう。



堀内誠一より澁澤龍彦へ、1974年12月18日付
(クリックすると大きい画像でご覧いただけます)




澁澤龍彦より堀内誠一へ、1974年12月23日付
(クリックすると大きい画像でご覧いただけます)



仲の良い友人同士のやりとりは、
傍で見ていてもなんだか楽しくなってくるものです。
ふたりの親密な私信もそう。
読む人間をリラックスさせてくれます。
なにしろふたりとも、いつも上機嫌です。
巻末の解説で巖谷先生が書かれている通り、ふたりが
「生き方や仕事の方向や主義や好みの違いを」こえて
「子どものようにともに遊ぶ」仲間だったことが
よくわかります。

「貴兄の手紙をみると、
 絵描きは絵が描けていいなァ、と思います。
 いつも楽しい絵をありがとう。」
(澁澤龍彦より堀内誠一へ、一九七五年四月一日付)

「拝啓 お元気ですか。
 こちらはもう梅、桃、アンズ、
 ミモザなどの樹の花が咲き出して、
 皆の頭の中は
 パックのバカンスのことしかないようです。」
(堀内誠一より澁澤龍彦へ、一九七七年三月十一日付)




堀内誠一より澁澤龍彦へ、1975年1月6日付
(クリックすると大きい画像でご覧いただけます)




澁澤龍彦より堀内誠一へ、1975年4月1日付
(クリックすると大きい画像でご覧いただけます)



思いがけない幸運もありました。
展覧会後に未発見だった書簡が数通、見つかったのです。
なかでも、八七年五月八日付の堀内さんの最後の書簡
(澁澤さんも堀内さんも八七年八月に亡くなります)。
かつて「血と薔薇」の撮影で訪れた
三井倶楽部を再訪して、
風景がすっかり変わってしまったことを語るくだりは、
胸をうちます。
そもそも、ふたりが親交を深めるきっかけになったのが
「血と薔薇」でした。
本書冒頭でも、澁澤さんが堀内さんにあてた
「血と薔薇」責任編集者辞任の挨拶状が登場します。
冒頭の記述とリンクする、この書簡が見つかったおかげで、
本書全体がきれいに輪を閉じて完成した気がしています。

もとの企画から、注釈、年譜、解説と全体にわたって
厳密、精緻なお仕事をしてくださった巖谷先生はもちろん、
貴重な資料を快く提供してくださった澁澤龍子さん、
堀内路子さん、堀内花子さんには
心から感謝したいと思います。
澁澤さん、堀内さんたちには、
本文の疑問点の解読や誤読の訂正などでも
大変なお世話になりました。

白地に金の箔押しタイトルというシックな装丁は、
間村俊一さん。
本の内容とぴったりの
美しい装丁に仕上げてくださいました。
コンピュータを一切使わず、手作業にこだわる間村さん。
そのお仕事ぶりを間近で見られたのも、得がたい経験でした。

個人的なことですが、僕は七四年生まれ、
澁澤さんも堀内さんもリアルタイムでは知らない世代です。
そんな僕も、本書を作っている間、
ふたりの対話をそばで聞いているような
濃密でワクワクする時間を堪能しました。
僕と同じ後追い世代の若い読者にも、
稀有なアーティストだったふたりの世界を
ぜひ楽しんでほしいと思います。

*********************************************



『旅の仲間
 澁澤龍彦 堀内誠一往復書簡』

著者:澁澤 龍彦、堀内 誠一
編者:巖谷 國士
価格:¥ 4,200 (税込)
発行:晶文社
ISBN-13:978-4794967251
【Amazon.co.jpはこちら】

担当編集者さんへの激励や感想などは、
メールの題名に本のタイトルを入れて、
postman@1101.comに送ってください。

2008-09-12-FRI

BACK
戻る