担当編集者は知っている。


『復活 all for victory
 全日本男子バレーボールチームの挑戦』

著者:市川 忍
価格:¥ 1,890 (税込)
発行:角川書店
ISBN-13:978-4048839969
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先日閉幕した北京オリンピックでは、
予選敗退という結果で終わりはしましたが、
バルセロナオリンピック以来、16年ぶりに
オリンピックへの出場権を獲得という、快挙を成し遂げた
全日本男子バレーボールチーム。
その大舞台への立役者、14名の選手のそれまでを
試合で活躍する選手の写真とともに
選手本人はもちろん、コーチ陣含む
丹念な取材やインタビューでつづったのがこの本です。
できるかどうかわからなかった「復活」を目指し、
ひたむきに取り組むその姿を読むと、
これからも応援せずにはいられません。
この本を担当された角川書店の
松山さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」小川)


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担当編集者 /
   角川書店 第一編集部 松山加珠子



◎2006年プエルトリコ戦

2006年11月19日、世界バレー男子大会第1ラウンド
プエルトリコ戦の第4セット。
このセットを取れば日本が勝つ。
当時日本は世界ランキング10位、プエルトリコは16位。
バレーボールは、25点先取するか、
24:24以降は2点差で勝敗が決まるゲームだ。
プエルトリコに追いつかれた時、
また、セットを落とすのかと思った。
植田ジャパンは、
アジアで勝てても、世界ではなかなか勝てない。
しかし、この試合は36:34で日本が競り勝ち、
最終的に8位入賞。
植田ジャパンが始まって2年目のことである。
全日本男子バレーボールは
変わってきているのかもしれない。
さらにバレーボール王子を発見! 
越川優、22歳。
強い意志を感じさせる大きな目と大きな口、
つんつんしたヘアスタイル、
何といっても、日本最速サーブのトスを上げるときの
数秒間のかっこよさといったら。
そして、ゴッツと呼ばれるいかつい男、石島雄介、
同じく22歳。新しいスターが育ってきていた。

◎全日本男子バレーは大穴かも

アテネオリンピックの時、
本を作らなかったのが心残りだったので、
リサーチを始めた。
知りたかったのは、
サッカーでは金子達仁というような書き手は
男子バレーでは誰なのか? 
試合の動員数はどうなのか? どんな客層がきているのか? 
テレビの視聴率はどうなのか? 
ところが男子バレーボールの類書は
バルセロナで時間が止まっていた。
女子の柳本ジャパンは、監督本もアテネまでの道のり本も、
写真集も出ていた。仕方がない。
しかし、これは、大穴かも。
とにかく、町田の体育館で
V・プレミアリーグの試合を見る。
越川、山村、阿倍、甲斐など、全日本で活躍する選手が、
ふつうに体育館で見ることができた。
チケットは高いと思った。
企業の応援団と地元高校のバレー部と、
あとは純粋なバレーファンの人たちが来ていて、
たぶん、2000人くらいだったと思う。次に見た試合は、
2007年のV・プレミアリーグのファイナル。
この年、MVPを
優勝したサントリーの越川優がもらったのだが、
賞金が30万円。それは社長賞か?!
会場はさいたまマリーナ。
ざっと見渡したところ、6000人くらい。
初めて記者席で試合を見て、
なんとしても企画を通さなきゃと思った。
荻野正二選手は近くで見ると、ガンダムみたいだったし、
生で見る試合は、本当に面白かったのだ。

◎企画会議を通すデータと戦略

調べてわかったのは、たとえば
2007年ワールドカップの平均動員数は、
女子が7870人に対し、男子は9600人。
平均視聴率は女子が16.5%、男子が13%。
つまり、テレビで見る人たちではなく、
足を運ぶ人たちが男子は多いということだ。
そして、越川優はホリプロに所属しているから
露出も期待できる。
データ・バレーが主流となった今、
体格だけでバレーをするのではない。
データを読み、戦略を立てる。
平均身長が10センチも違っていれば、
無差別級で戦っているようなものだが、
サッカーやハンドボールと違って、
ネットを挟んだ競技では、直接組み合うことがない。
だから、絶対北京へ行きます! と
半ば脅すようにして通した企画だった。

◎市川忍さんのこと

男子バレーついて書く人といえば、市川忍さん。
お会いしてみると、とても小柄なかわいらしい女性だった。
バレー経験はない。
市川さんの文章は、数多くの試合をみて、分析をし、
その時の戦略を確かめ、選手の気持ちを確認し、
次につながる問題点が書かれている。
時にはグサリと痛いところを突く。
しかし、だからこそ選手からの信頼もある。
試合会場では一番端の記者席に座り、
試合後のミックス・ゾーンでは一番前でコメントをとり、
記者会見でたまに手をあげる。
帰る選手をうまくひきとめて、
他の人が聞いていないことを聞き、
全日本の合宿(公開練習もある)の取材では、
ボール拾いもする。
これをこの人はずっと10年間やってきたのだ。
北京に行ける可能性は、
「この16年間では最も高いが50%くらい」
と言われたと思う。その50%に賭けて、
『復活 all for victory 
 全日本男子バレーボールの挑戦』の取材はスタートする。
2007年夏、市川さんは全日本の合宿を訪ね、
じっくりとインタビューをしていく。暑い夏だった。

◎いい写真を載せる

今まで、ミュージシャンのライブレポートを
たくさんページにしてきた経験から、
試合の写真のみを載せようと思った。
小倉和徳さんにすべて撮り下ろしてもらう。
試合内容によって、選手の顔つきはまったく違ってくる。
2007年ワールドカップのブラジル戦の写真は、
本当にどの選手もかっこよかった。

◎そして、北京へ

世界最終予選のアルゼンチン戦。
このときにはすでに本は発売されていて、
しかも重版がかかるという、好スタート。
しかし、北京に行けなければ、それまでだ。
荻野選手が最後の1点を決めたとき、
奇跡が起こったと思った。
全日本男バレチームを応援してよかった。
この本を作ってよかったと心底思った。
後に市川さんは、
「北京に行けなかったら、
 この本のタイトル、シャレになんないよ」
と選手に笑われたそうだ。
しかも、この日の記者会見で、選手たちは
「復活」とプリントされたTシャツを着ていて笑えた。
2008年6月7日以降、この本は一人歩きを始める。
4版目もかかり、私は会社で
「北京おめでとう」と会う人ごとに言われ、
市川さんはものすごく忙しくなる。
16年ぶりの男バレ景気。
そして、見事にオリンピックでは予選で散った。
私の夏休みは終わった。

でも、新しい世代、清水邦広、福澤辰哉らがデビューし、
これからが日本男子バレーの正念場だ。
データ・バレーといっても、体格のいい男子が
バレーボールをやってくれるのに、越したことはない。
そして、その人たちをかっこいいと思う女子が、
この本を読んで増えてくれたら、と思う。
荻野選手が2007年ワールドカップ
最終のイタリア戦で負けた後、ミックス・ゾーンで
「日本はいいチームから
 勝つチームへならなければならない」と言った。
ロンドンはすぐやってくる。
がんばれ、日本!!

*市川忍さんのブログには、
 試合の見方なども書かれております。
 こちらからどうぞご覧ください。


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『復活 all for victory
 全日本男子バレーボールチームの挑戦』

著者:市川 忍
価格:¥ 1,890 (税込)
発行:角川書店
ISBN-13:978-4048839969
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2008-08-26-TUE

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