担当編集者は知っている。



『BONES
 動物の骨格と機能美』

写真:湯沢英治
著者:東野晃典
監修:遠藤秀紀
価格:¥ 3,675 (税込)
発行:早川書房
ISBN-13:978-4152089335
【Amazon.co.jpはこちら】


動物は動物でも、その骨をみたことはありますか?
この本は、さまざまな動物の骨の姿をうつした、
モノクロの写真集です。
ぱっとみて、なんの動物かわからなくとも
白くうかびあがった骨は、とても美しく
そのかっこよさにため息がでます。
また、巻末には、骨の特徴や役割の解説も収録。
動物の意外な一面を教えてくれる本です。
この本を担当された早川書房の
三浦さんにお話をうかがいました。
今回は、下のボタンから
中身の写真をさらにご紹介いたします。
いろんな骨をどうぞご覧くださいね。

(「ほぼ日」小川)



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担当編集者 /
    早川書房 第三編集部 三浦由香子


●これなんだ?

まずは、ちょっとしたクイズから始めてもいいでしょうか。
以下にあるのは、どれも
『BONES』におさめられた写真です。

それぞれ何の骨だと思いますか?

















1 フンボルトペンギン

まるで恐竜のようなふてぶてしさを感じさせる背中と、
ごつい足。
これが、あのヨチヨチ歩くかわいいペンギンの骨格です。

この長い脚は普通、写真のように中腰のような状態で、
皮膚の下にくるまれてしまっているんです。
おそらく水の抵抗を少なくするためだと考えられています。

また、もともと鳥類として飛ぶために
軽くできていた骨は、太く頑丈になりました。
他の鳥類の写真と比べると、
明らかにどっしりとして見えるんですよ。



2 レッサーパンダ(前肢)

これが、あのかわいいレッサーパンダ!?
そうなんです、木の上で生活するために、
実はこんなに大きくて鋭い爪を持っているのです。

そして、「立つ」ことで人気のこの動物ですが、
本当はもっとすごいことをしているんです。

それが、大好きなササを前肢で引き寄せる動作。
食肉目のなかで、ものをつかんで引き寄せるという
複雑な動作ができる動物は少ないんですよ。

写真の手首部分をよく見ると、
もう1本の親指のように小さく出っ張った骨が
ありますよね?

この橈側種子骨(とうそくしゅしこつ)という
小さなでっぱりが、
レッサーパンダがササを上手に引き寄せるときの
支えになっているのです。

小さいけど、非常に重要なでっぱりなんですね。



3 ハブ

カッと開いた口の、下あごを見てください。
なんと、ヘビのあごはつながっていないんです。
伸縮するじん帯でつながっているだけなので、
自分の頭より大きな獲物を飲み込むことができるんです。

内側に曲がった歯でしっかりと獲物にかみつき、
左右の下あごを交互に動かしながら、
少しずつ喉側へ引き込んでいきます。

胴体部分の腹側を見ると、骨がまったくありません。
(たとえばヒトには、胸骨があります。)
そのため、肋骨が左右に広がり、
大きな獲物を飲み込んでも大丈夫なんです。

すべては効率よく獲物を食べるための
必然的な姿だというわけです。



いかがでしたか?
私は、個人的にペンギンの後ろ姿がお気に入りです。
丸まった背中に、何かを語りたそうな、
哀愁を感じてしまうんですよね。

『BONES』では、こんな面白い写真155点と、
それぞれの写真についての詳しい解説が
ご覧いただけます。


●キーワードは「機能美」

それにしても、こうしてみていくと、
動物の骨格には全てきちんと意味があることが
わかりますよね。

骨は筋肉のつく土台であり、
体を動かすための支持装置です。
その動物の生態や進化の影響が
最も如実に表れます。

そのため、骨格は自然淘汰によって、
その動物に一番効率のいい形になっていく。
結果的に、もっとも洗練された形、
デザインとして残っていくのです。

それはまさに「機能美」。
メカのように精巧な、
そしてかっこいい造形をもった骨たちが、
動物の体のなかに埋まっているのです。
すごいでしょう?


『BONES』では、そういう骨の魅力をお伝えするために
アートとして撮られた写真と、
生物学的な視点からそのしくみを解説した文章を
収録しました。

どちらかが欠けても、「機能美」は伝わりません。

解説文は、
専門的な部分もできるだけ妥協せずに、
ただし一般の方にもわかるよう工夫をこらしました。

写真では、
その骨格の最も機能的な部分を強調しつつ、
アート的な美しさを追求しました。

また、標本の選定にも大変気をつかっています。
それぞれの分類の特徴をよく表している動物の標本で、
かつ、支柱やねじのない美しいものを選びました。

アートと生物学、
このふたつの微妙なバランスを保った本づくりが、
この本の大きな課題でした。

それは、写真家の湯沢さんと、
解説文を書かれた東野さんの
お二人のコンビネーションがなければ、
実現できないことだったと思います。


●動物は美しい

東野さんは、横浜市野毛山動物園の獣医さんです。
園の動物の治療や
野生動物の保護に従事していらっしゃいます。

はじめてこの解説文の執筆をお願いしたとき、
東野さんは「この本で動物たちの美しさを伝えたい」
と引き受けてくださいました。

動物園で働いていて感じるのは、
「動物をかわいい」ととらえる見方が
多すぎることだそうです。

「かわいい」だけでは、そこで理解が止まってしまう。
動物の体のしくみや生態を理解したうえで、
「美しい」と感じてほしい。

動物園は、野生動物について理解を深める場所であり、
そこに携わる者として、
動物という存在のかけがえのなさ、美しさを
発信したいと話してくださいました。

そして、この「美しさ」を伝えるために
素晴らしい写真を撮ってくださったのが湯沢さんです。

湯沢さんは別に動物がお好きなわけではありません。
「生きた動物はこわいし、あまり好きじゃないかも」
とおっしゃっていたくらい。

でも、題材としての骨格にほれ込み、
多大な情熱をもって、各地の博物館や施設を訪ねては
撮影に励んでくださいました。

湯沢さんにとって、骨格標本は星のように見える、
とのこと。
確かに、深い闇のなかで微かな光源に照らされた
骨たちを見ていると、
まるで宇宙に浮かぶ未知の造形物のように思えてきます。

この陰影の深さと柔らかい光は、
全て自然光のみで撮影されたことによって実現されました。



このような、全く別の方面から
「動物の骨格の美しさ」に魅入られたお二人が
揃ったことで『BONES』ができあがったのです。

教科書的に骨のしくみを説いた本や、
骨から進化を読み解く本はありますが、
ここまでストイックに「骨の機能美」に
こだわった本は他にありません。

さらに監修として『解剖男』で有名な
東大の遺体科学者、遠藤秀紀氏からさまざまな
御教示をいただきました。
ほぼ日でもご活躍の養老孟司先生は、
推薦文をくださいました。

著名な先生方のお墨付きもいただいて、
自信をもってみなさんにお届けいたします。

これだけの写真が入って、
さらに面白い解説もついて、3675円。
CD1枚分とちょっと、
というのはいいお値段かなと思うんです。

ぜひお手にとって、
写真と解説文を行ったりきたりしながら、
見て、読んで楽しんでいただければ幸いです。

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『BONES
 動物の骨格と機能美』

写真:湯沢英治
著者:東野晃典
監修:遠藤秀紀
価格:¥ 3,675 (税込)
発行:早川書房
ISBN-13:978-4152089335
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2008-07-22-TUE

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