担当編集者は知っている。



『昭和の玉手箱』
著者:赤瀬川 原平
価格:¥ 1,470 (税込)
発行:東京書籍
ISBN-13:978-4487802463
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「黄昏」シリーズなどにご登場いただき、
「ほぼ日」でもなじみ深い、
赤瀬川原平さんの昭和にまつわる随筆を集めた本書。
でてくるものは、
蓄音機や街頭テレビといった、
いまではあまりみかけなくなったものから、
インスタントラーメン、ジーパン、ラジオなど
いまでも、毎日の生活になじみあるものまであります。
新しいものがたくさん出てきた時代の興奮と、
過ぎ去っていった時代への懐かしさにあふれた1冊です。
この本を担当された東京書籍の
植草さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」小川)


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担当編集者 /
    東京書籍出版事業部 植草武士


本書のオビでは、
「紙芝居、メンコ、銭湯、手動式パチンコ‥‥
 あまりに貧しく、あまりに懐かしい、
 昭和世代のメモリアルブック」と入れました。
ほぼ日の読者の皆さんでも、20代ぐらいの方ですと、
実体験がないかもしれませんね。紙芝居は、
幼稚園や学童保育の記憶があるかもしれませんが、
ここでいう紙芝居はそれではありません。
見知らぬオジサンが公園にやってきて、
子どもたちの前でいきなり紙芝居を始めるのです。
昭和のひとつの風景でした。

一口に昭和といっても60年以上続いたのですから、
戦前と戦後では相当の幅があります。
イメージとしては
『ALWAYS 三丁目の夕日』
思い浮かべてください。
敗戦後から、日本が立ち直っていく昭和20〜30年代。
携帯もない、パソコンもない、
マンションもない、コンビニもない。今から思えば、
いったいどんな生活を送っていたのかと思えます。



「アーケード」(本書より)
すべて©赤瀬川原平


ところが、この頃の暮らしに登場してくる
モノや場所や建物が、実に味わい深いのです。
著者の赤瀬川さんは
1937年(昭和12年)の生まれですから、
まさにご自身の10代、20代が
昭和20〜30年代と重なります。
ですので、本書を読むと、昭和の頃の世間の様子と、
ヤング赤瀬川さんの暮らしぶりの両面が伝わってきます。
その暮らしぶりが、なんとも貧しくて
しみじみしてしまうのですが、赤瀬川さんの感覚や
発想の原点を垣間見ることにもなります。



「駅」(本書より)




「踏切」(本書より)


そして、ちょっぴり哲学のエッセンスを書き加えています。
たとえば「銭湯」の項目の最後の一文。
──脱衣所の板の間は、脱ぐ者、着る者、裸の者といて、
公共の場と私的な場とが入り混じり、
両方に広がっていく豊かな場所だった。
だから銭湯の習慣がなくなったのは寂しいことだ。
交通手段が発達して世界は広がったが、
銭湯がなくなったことで、
人々の世界がぐっと狭くなったともいえる。──
いかがですか。
現代の人間関係の希薄さを評論家はいろいろ言いますが、
「銭湯」と結び付けられるのは、
赤瀬川さんだけでしょうね。

また、『昭和の玉手箱』では
ビジュアルも楽しんでいただけます。
深夜喫茶、オート三輪、木製冷蔵庫、街頭テレビなど、
当時の写真を随所に入れました。
また、赤瀬川さんご自身も
たくさんのイラストを書き添えましたので、
ご期待ください。



「郵便ポスト」(本書より)




「ゴミ収集所」(本書より)




「マンホール」(本書より)


赤瀬川ファンには納得の1冊でしょう。
また、昭和世代の方はもちろん、
20代の若い読者の方にもおすすめします。

ところで、まったくの蛇足なのですが、
赤瀬川さんと私とのかかわりについて付け加えておきます。
おなじみの赤瀬川原平さんは、
すでに150冊以上の本を出しており、出版社の数も、
担当編集者の数もかなりの人数になっています。
東京書籍という、教科書会社で編集をしている私ですが、
150冊の歴代編集者の一人に加えていただき、
いままで5冊の本のお手伝いをしてきました。
はじめに作った本はもう17年前のこと、
『こいつらが日本語をダメにした』という本です。
赤瀬川さんとねじめ正一さん、南伸坊さんの3人による
日本語放談集です。(現在は「ちくま文庫」

次の本は「読む写真集」とうたった、『正体不明』
これも15年前になります。当時の赤瀬川さんは、
路上観察やトマソンを得意としていて、
その傑作選ともいうべき写真集に仕上げました。
著者紹介には顔写真を使わず、
「赤瀬川橋」と書かれた橋を掲載しました。
こういう本文以外でのユーモアも
赤瀬川さんのうまさのひとつで、『昭和の玉手箱』では
「あとがき」に隠し味が入っています。
『正体不明』はたいそう評判がよく、その後、
舞台を外国に移して、『イギリス正体不明』
『ベルリン正体不明』と作りました。
その当時の赤瀬川さんは、現在の「ニラハウス」ではなく、
町田の高台に住んでいらしており、
長い坂の道をせっせと歩いた記憶があります。
(「ニラハウス」へもちょっと坂を上がりますね)

その後はしばらくご無沙汰していたのですが、
2004年に書店の「丸善 丸の内本店」
新規オープンするということで、『新正体不明』を作り、
サイン会やミニ写真展を開催しました。
10年ぶりの再会でしたが、赤瀬川さんはいつも通りの
やわらかい雰囲気であり、また、
慣れ親しんだ「正体不明」の本作りということもあって、
10年の歳月をお互いにまったく感じませんでした。

この頃から「昭和」というキーワードが、
共通の話題になっていきました。

赤瀬川さんと私の年齢は26歳も違うのですが、
私の育った昭和40年代の下町の風景は、
意外に赤瀬川さんの体験と共通していたのです。
それだけ、昭和という時代は
ゆっくり流れていたのかもしれません。

こうして、とにもかくにも
6冊目の本を出すことができました。
赤瀬川さんの本はどれも思い出深く、読み返すたびに、
その当時の思い出がわきあがってきます。
まさに「赤瀬川原平の玉手箱」なのです。

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『昭和の玉手箱』
著者:赤瀬川 原平
価格:¥ 1,470 (税込)
発行:東京書籍
ISBN-13:978-4487802463
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2008-07-01-TUE

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