担当編集者は知っている。



『社会起業家に学べ!』
著者:今 一生
価格:¥ 820 (税込)
発行:アスキー・メディアワークス
ISBN-13:978-4048671873
【Amazon.co.jpはこちら】


社会的な問題を解決するために、ボランティアではなく、
仕事をつくることで活動していく「社会起業家」。
この本では、その中でも日本の若い人たちに
スポットをあてて、21団体を紹介しています。
たとえば、おいしい豚を育てることで、
農業のイメージをも変えようとしている「みやじ豚」
実際の大学生や専門学校生と語り合うことで、高校生に
自分の進路を考える機会を提供する「NPOカタリ場」
などなど、それぞれは全然違いますが、
大変なことを乗り越えるのもたのしそうな
はたらきかたがここにはありました。
また、この本の著者印税のうち10%は(本体価格の1%)
社会起業家を育成する事業活動に寄付されます。
この本を担当されたアスキー・メディアワークスの
今村さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」小川)


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担当編集者 /
 アスキー・メディアワークス 今村 知子


「社会起業家」という、
まだ知る人の少ない言葉の意味を説明することから、
この本の紹介はいつもはじまります。
企画書、書籍内容のデータ、リリース、
カバーの袖の紹介文まで、
この本に関するあらゆる書類と文章で、
とにかく繰り返してきたのが、
まず、このテーマである「社会起業家」の説明です。

本書の中で紹介していますが、
日本では2008年2月に経済産業省が発表した報告書で、
社会起業家を知らない人は84%。
まだまだ多くの人にはなじみのない言葉のはずです
(なお、欧米では「ソーシャルビジネス」
 「チェンジメーカー」などと呼ばれています)。

そこで、とりあえず私が
一言で説明するためにつくった文は、
「社会起業家とは、利益のためではなく
 社会問題を解決するために、
 独自のビジネスモデルで事業を興す人たち」というもの。
ふー、硬いですね。教科書みたいですね。
でも、一文で表さなければいけないので、仕方ありません。

実際には、この本の中では21もの団体が登場し、
それぞれ目的もやり方もスタンスも違います。
一応、ジャンルで分けましたが、
それも「地域再生、キャリア支援、
ワークライフ・バランス、農業再生、在日外国人支援、
途上国支援、環境保護、NPO/NGO支援」‥‥
と多岐にわたっています。

文章では抽象的になってしまう、
「社会起業家」という存在。
これをどうイメージしてもらうか。
編集者としてはそれが終始、メインテーマでした。

たとえば、表紙カバーの帯で何を訴えるか。
いくつか案をつくったのですが、
そこに添える写真をどれにするかで、
印象はずいぶん違うと思います。



最終的に使用した写真がコレ。
バングラデシュの人々が自立するための
ビジネスを軌道に乗せた
「マザーハウス」の山口絵理子さんと現地の人々。


NPOやボランティアというと思い浮かぶのが、
こうした途上国の人々を支援する活動ではないでしょうか。
欧米の社会起業家として紹介される人々にも、
このような活動の方が多いようです。
実際、山口さんはまさに人生のすべてを賭けた情熱で、
数々の困難を乗り越え、若くして
治安のよくないアジア最貧国で仕事を続けている人。
その活動ぶりはテレビ(「情熱大陸」)や
自著(『裸でも生きる』 )でも紹介され、
感動を呼んでいます。

一方、もう一つの帯ビジュアル候補がこの写真でした。



秋葉原で環境問題を楽しく考えるイベントを手掛ける、
「リコリタ」の活動のひとつ。


リコリタは秋葉原を愛するメンバーが
少額の運営費を出して、
自分たちが“楽しみながら”活動を続けるNPO。
“人生を賭けて”途上国の人たちを支援する会社をつくった
山口さんのケースと比べて、ずっと身近な感じですよね。

帯のキャッチコピーは
「問題解決型ビジネスで世の中を変えていく」
に決めましたが、写真はじつは自分では
どちらにしてもいいと思っていました
(結果的に会議で意見を聞き、
 山口さんの写真を使わせていただいたのですが)。
それは、「世の中」というのが世界全体を指すのか、
自分がよく知っている身の回りを指すのか、
人によってとらえ方はいろいろだと思ったからです。
 
もし下の写真を帯に載せていたら、
「自分もちょっと行動を起こせば、
 社会を変えることができるのかな」と思う人が
手に取ってくれるかもしれないし、
「こんなことも社会起業なの?」と
軽く興味を持つ人がいるかもしれません。

どちらのイメージが、この本を
読みたい・読んでほしい読者により届いたのか、
答えは出ません。この本の中では、
どちらの活動も社会起業家の一例として紹介していますが、
それだけ登場する人たち・テーマの
バリエーションは豊富です。
ぜひ、ご自身で確かめてみていただけると幸いです。

ちなみに、読んだ後ちらりと、
どちらの写真がよかったのかな‥‥と
自分のイメージで選択してみるのも一興かもしれません。
編集者の仕事って、
なにかを切り取る(編集)作業なわけで、
最善を尽くしているつもりですが、
いつも「この道筋でよかったかな?」と
終着点で感じるので‥‥。


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『社会起業家に学べ!』
著者:今 一生
価格:¥ 820 (税込)
発行:アスキー・メディアワークス
ISBN-13:978-4048671873
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担当編集者さんへの激励や感想などは、
メールの題名に本のタイトルを入れて、
postman@1101.comに送ってください。

2008-06-20-FRI

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