担当編集者は知っている。



『絵解き図鑑 こんなふうに作られる!
 身のまわり69品のできるまで』

文:ビル&ジム・スレイヴィン
絵:ビル・スレイヴィン
訳:福本友美子
価格:¥ 3,990 (税込)
発行:玉川大学出版部
ISBN-13:978-4472403514
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クレヨンなどの「もの」から、食べ物はもちろん、
「石油」などの原材料までが、
どんなふうに作られているのかを
大判の書籍いっぱいに、
イラストと文字でわかりやすく教えてくれる本です。
分類は絵本ですが、
大人にとってもとても興味深い内容です。
うわー、知らなかったー! と
子どもたちと一緒に楽しむのもいいですね。
(難しめの漢字には読みがながふってあります。)
この本を担当された
玉川大学出版部の森さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」小川)


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担当編集者 /
 玉川大学出版部 森貴志


CDが何から作られているか、知っていますか?
ナイフやフォークは、
どんなふうに作られているのでしょう?

●はじまりはカナダの図書館

絵本『としょかんライオン』(岩崎書店)の訳者で、
今、最も注目されている翻訳家・福本友美子さん。
彼女がカナダを旅行していたときに
トロントの図書館ですすめられたのが、本書の原書
“Transformed: How Everyday Things Are Made”でした。
Kids Can Pressというカナダの児童書出版社から
2005年に出されたものです。

これを気に入った福本さん。
翻訳して日本でも紹介しようということになりました。

僕もこれを見て、とても気に入りました。
よい本だと、直感で思いました。
調べると、カナダでは「優良図書」に選ばれるなど、
数多くの賞を受賞しており、
また2006年にはイギリスでも刊行されていました。



原書の“Transformed”

 

 



イギリス版の“Transform!”


●暮らしのなかの知らないこと

たとえば、CDが砂からできているなんて、
僕はまったく知りませんでした。
ナイフやフォークに模様をつける「打ち型」が
アフリカゾウ30頭分の重さがあることも。
硬式野球ボールの縫い目の数が108に決まっているなど、
気にもかけたことがありませんでした。

科学の発展により、
技術のブラックボックス化が進んでいます。
物事が複雑化し、そもそもの起源や
結果までのプロセスが、不透明になっています。
もしかしたら、子どもの理科離れには
こんな背景があるのかもしれません。
私たちはものの製造過程を知らず、
そこに完成された「もの」があることを
当然に思っているのです。

食べるもの、飲むもの、着るもの、遊ぶもの‥‥。
この本は、そんな私たちに身近なものが
どう作られているのかを
子ども向けに見開きで図解した一冊です。

●子どもに「ひと目」で伝える工夫

ケチャップにはもともとトマトが使われていなかった!
20世紀はじめの人はテディベアを
どこにでも連れていっていた!!
この本ではただ単にものづくりの工程を示すだけでなく
ものの歴史、背景などのエピソードを紹介し、
日常の謎解きをしています。
これは、子どもたちの好奇心をくすぐるはずです。

また、この本のおもしろさはイラストにあります。
ものを作る工程上で、
かわいい小人たちが作業をしているのです。
おそろいのオーバーオールを着て、キャップをかぶった
大勢の小人たちが、一生懸命ものを作っています。
このユーモアにあふれたイラストがかわいく、
子どもたちが楽しく読めるようになっています。
小人たちが読者をもの作りの世界へ導きます。

いわゆる「知育絵本」「学習絵本」と呼ばれるものには、
“お勉強”というイメージがつきものですが、
本書にはこういった「へぇー」と思わせる内容、
くすっと笑わせる要素が散りばめられており、
それが特徴となっています。



「CD」。
左ページでは、小人たちが歌っています。
右には、CDを鏡にしてポーズをとっている小人がいます。


●大学出版部と児童書

ところで、「大学出版」というと
難解な研究書ばかりを出している出版社だと
思われがちです。
もちろん、大学出版の役割のひとつには
専門書を出すことがあります。
玉川大学出版部でも、硬質な学術書を刊行しています。

実は、僕はほかの出版社から移ってきたのですが、
やはりこういった印象をもっていました。
そして、僕自身、それまで人文書と呼ばれるものを
多くつくっていたので、
引き続きそれをつくりたいと考えていました。

しかし玉川は、日本ではじめて子ども向けの百科事典
『児童百科大辞典』(全30巻、1932年)を出版したところ。
このことを知り、さらに2002年に刊行した
谷川俊太郎さんと和田誠さんによる絵本『ともだち』
多くの方に受け入れられていると知ったとき、
子どもの本の奥深さに気づき、
僕は子どもの本をつくりたいと思うようになりました。

現在、日本の大学出版部の数は50を超えますが、
児童書を出しているのは玉川だけ。
幼稚部から大学院までをもつ
総合学園のなかにある玉川大学出版部では、
今後さらにこのジャンルを
大切にしていきたいと考えています。
ちなみに、先に触れたこの本のイギリス版を出したのは、
歴史ある大学出版局Oxford University Pressです。

●「考えるひと」に

とはいえ、児童書の刊行点数は年々増えており、
小さな大学出版部が子ども向けの本で
児童書専門の出版社に対抗できるはずはありません。
そこで、教育の現場から発信するという特色で
企画を厳選しています。

「教養」というと古臭く、
そもそもその実体もわかりませんが
(人文書編集者としていえば、
 実は現在「教養論」は隆盛なのですが)、
子どもの教養を広げる、
考える土台を提供するという視点で、
そのラインナップを考えています。
そこには、「考えるひと」になってほしいという願い、
「考えるひと」に届けたいという気持ちを込めています。

そういう意味では、この本は「考える」材料を
たくさん提供しています。
私たちの毎日使っているものが、
実はすべて自然界の資源が形を変えて
製品に生まれ変わっていると知ることができるからです。

ナイフやフォークの原料であるステンレス鋼も、
さかのぼれば石という自然の材料から作られています。
本書の後半部では、「原料となるもの」として
鉄や鋼、石油、ガラスなどの製造法が示されていますので、
そういった循環を知ることができます。
さらに「リサイクル」という項目まであり、
昨今の環境問題を考える入口になると思います。

そう、ものの成り立ちは複雑化して
わかりづらくなっていますが、
決して魔法が使われているわけではなく、
その基本的な流れは昔とそんなに変わっていないのです。
本書では、そういうことも教えてくれます。
何事にも、考えるためには知らなければなりません。
この本がそのきっかけになると確信しています。



「リサイクル」のページでは、
ゴミ問題について考えさせられます。



  *  *  *

本書は刊行して半年。
おかげさまで、多方面で好評です。
すでに重版もしました。
この本は、学ぶ本である一方で、
読んでいておもしろいのが好評の理由だと思います。
NPO図書館の学校が選んだ「200選」にも入り、
書店員さんには「こういう本を待っていた」、
「おすすめの一冊」などの声をいただいています。

もの作りの百科事典的絵本。
おもに小学校中〜高学年生を対象にしたものですが、
大人にも新発見満載の、魅力的な本です。
ぜひ手にとっていただき、
知る喜び、考える楽しみを得ていただければうれしいです。


本書に掲載されている「69品」については、
 こちらをご覧ください。
玉川大学出版部の〈子どもの本〉については、
 こちらをご覧ください。


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『絵解き図鑑 こんなふうに作られる!
 身のまわり69品のできるまで』

文:ビル&ジム・スレイヴィン
絵:ビル・スレイヴィン
訳:福本友美子
価格:¥ 3,990 (税込)
発行:玉川大学出版部
ISBN-13:978-4472403514
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2008-06-17-TUE

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