担当編集者は知っている。



『限界集落ーMarginal Village』
著者:梶井照陰
価格:¥ 1,470 (税込)
発行:フォイル
ISBN-13:978-4902943290
【Amazon.co.jpはこちら】


「今後10年以内に
 423の集落が消滅する可能性があるという。」
(本書、あとがきより)
この本は、僧侶であるかたわら
写真家としても活躍している著者が、
過疎化が進んでいたり、消滅してしまう可能性がある
全国12カ所を9カ月にわたり、歩いて取材した
“フォト+ルポタージュ”の本です。
「限界集落」と呼ばれる、
人知れず消えゆく土地があるということ。
わたしは、この本にふれるまで
この現実を知りませんでした。
この本を担当されたフォイル
中村さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」小川)


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担当編集者 /
   有限会社フォイル 中村水絵



梶井照陰(かじい しょういん)さんは
4年ほど前に日本海の波の写真をまとめた
写真集『NAMI』を発表し、国内外で活躍している
佐渡に住む31歳の写真家です。
佐渡では僧侶をする傍ら、日々作品を作り続けています。

「限界集落」という単語に最初に触れたとき
正直どきりとしました。
東京に住む私は
「限界」と付くほど過疎の進む土地の存在を
どこかで忘れてしまっていたのではないか
と思ったからです。

「限界集落」は、その言葉の通り
限界をむかえている集落のことです。
(65歳以上の高齢者が半数を超え
 一人暮らしのご老人が増え
 社会的共同生活の維持が難しくなった集落を
 そう呼びます。)



本書より(すべて著者撮影)

例えば一万人が生活をしている町には、
水道や電気も通って、郵便局や銀行や役所もあり
スーパーや、レストラン、
娯楽施設も当たり前にあると思います。

でも、そこが高齢者5人しかいない土地だとしたら?

公共施設は合併という名の下、自分たちの村からは撤退し
家から何キロも離れた町まで
食べ物を買いに出かけなくてはいけません。
また自ら農業などで生計を立てたいと思っても
高齢のため体が思うように動かず
都会に出た子供たちを呼び寄せようにも
その土地には生活をするための仕事がありません。

町おこしで
他の土地から人がやって来ることもあるそうです。
しかし、それは一時的なもので結局うまくいかず
期待を抱いてしまった分、その後の失望感に
以前よりも元気がなくなってしまうところもある、
と梶井さんは教えてくれました。

梶井さん自らも限界集落の予備軍にあたる土地で生活し
お年寄りと接していく中で
集落のおかれている現状に気づき、
今、伝えなくてはいけないことがあると思い
取材を始めました。

本書には、様々な人が登場します。
戦後開拓組として北海道へ移り住んだがうまくゆかず
最後に残されたおばあさんの
「ただただ苦労ばかりの人生だった」
という胸をえぐられるようなセリフ。
京都で農業を営んでいたおじいさんは
規制緩和や米の輸入で、今では
農業を続けるよりやめた方が得をする時代と
寂しげに言います。
高度成長期に林業のため熊本の山へ入った人たちは
外材が入ったことで価格が下落し採算が取れなくなり
みな出て行ってしまったそうです。
そこには、閉鎖された学校が寂しげに残されています。



本書より

過疎化の大半は、自らの意思とは関係なく
生活できない状況を強いられていっているのだ
ということを、この本を作っていく過程で教わりました。
そんな土地が日本にはたくさんあるということを。

一人で暮らすのは寂しいし
まして体が動かなかったら、思うようなこともできない。
それなのに、生活はどんどん不便になっていく‥‥。

弱いものはどんどん押しやられ、その存在は忘れ去られ、
一極集中型の町ばかりの中で
力とお金のある人だけが生きていける、
そんな世に向かっているように感じられてなりません。
守る、ということはとても難しいことです。
便利で簡単なほうが楽です。
でも、そこで失うものの大きさは?
本当に豊かなこととは?

同世代でこの本を見た人たちは
「故郷においてきた親や祖父母のことを思い出し
 感慨深いものがある」と言います。



本書より

梶井さんは、日本にある良い文化を
その土地に根付いている昔からの風習を
大切にしていきたいと言います。
熱弁をふるうわけでも
説教じみたことを言うわけでもありません。
その土地の美しさや歴史を、
そこに生きる人たちの言葉を、
純粋で柔軟な姿勢で、淡々と綴っていきます。

同じ時代を生きる人として
今起っていることを
一人でも多くの人に、私や梶井さんと同じ世代の人たちに
きちんと目撃してほしいと思います。
この本がそのきっかけになればと願っています。

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『限界集落ーMarginal Village』
著者:梶井照陰
価格:¥ 1,470 (税込)
発行:フォイル
ISBN-13:978-4902943290
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postman@1101.comに送ってください。

2008-05-23-FRI

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