担当編集者は知っている。



『うつわの手帖ーー【1】お茶』
著者:日野 明子
価格:¥ 1,890 (税込)
発行:ラトルズ
ISBN-13:978-4899772064
【Amazon.co.jpはこちら】


著者の日野明子さんは、
好きなことを全部仕事にしてしまおうと、
うつわの仕入れから卸し、販売や企画まで、
ひとりでこなしていらっしゃいます。
掲載されているうつわが
「モノ」として魅力的なのはもちろんですが、
そのうつわを作った人たちのことも丁寧に描かれており、
よりうつわが愛おしくなります。
また、うつわ作製の工程や、お手入れ方法なども
載っており、参考になります。
この本を担当された
萩原さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」小川)


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担当編集者 /
   フリー編集者 萩原 百合



うつわ好きで、人と話すことが好き。
ついでに旅も好き。
「好きなことをいっしょにして無理矢理仕事にした」
という日野さんの仕事は、うつわの問屋業。
正確には、作り手の発掘から
百貨店などへの営業・納品・入金・在庫管理までを
たったひとりでやってのける自称「ひとり問屋」です。

問屋業以外にもアドバイザーを務めたり、
時には、店頭に立って販売員になったり。
産地のこと、うつわのこと、作り手のこと、
うつわを売る人・使う人、
いろいろな現場をよく知っているからか、
彼女の話は深くておもしろい。

一般の人はなかなか入り込めないものづくりの現場にも
どんどん入って工程をしっかと見てくるし、
作り手と酒を酌み交して語り合うことも多い。
単にうつわの知識があるだけでなく、
どの町の、どのような工房(工場)で、どんな人が、
どういった技法で作っているか、
ものづくりの背景がしっかり見えているのです。

こういった日野さんにしか見えない奥深いうつわの世界を
多くのうつわ好きに知らせたい。
そんな思いから、本づくりはスタートしました。

うつわといってもいろいろなアイテムがあるので、
テーマをひとつに絞ることになり、
話し合いの結果、『うつわの手帖』シリーズ第一弾は
お茶にまつわるうつわに決定。
急須や湯のみ、茶筒、茶托、茶匙など
日本茶をいれる時に使うものだけでなく、
グラス、ポット、コーヒードリッパー、あたため鍋など
さまざまな飲物を想定したセレクションになっています。

本のデザインと装幀を担当したのは
オチコチアパートメントの水野佳史さん。
写真は、新進気鋭の写真家、佐藤藍さん。
「ゆるくて甘い感じ」ではなく、
「グラフィカルで男っぽい、渋めの写真」。
そんなスタッフの期待に応えるかのように
しっとりと落ち着きのある写真が次々に上がり、
うつわの真の魅力を伝える文にふさわしいヴィジュアルが
実現しました。



加藤財さんの焼き締めの急須
©佐藤藍


じつは、版元のラトルズの社長、
黒田さんは大のうつわ好き。
企画の段階から積極的に打ち合わせに参加するなど、
とても熱心でした。
版元の親分に、これだけ思い入れがあるんだから
本も一生懸命売ってくれるにちがいない!
そう期待していた矢先、ちょっと困ったことが起きました。

本に掲載するうつわのリストを見た黒田さんが、
「人気作家の○○さんは入らないのですか?」
とか
「ボクは△△さんのうつわがいいと思うけど‥‥」
などと言い始めたのです。
そのたびに、
「これは日野さんが選んだうつわを紹介する本です!」
と、やんわり、いや、きっぱり突き放しました(笑)。

うつわ好きだから、つい言いたくなる。
その気持ちはわからなくもないですが、
「日野明子の目」という基準から外れたら
本の醍醐味がなくなってしまいます。

そういえば‥‥
撮影前にうつわの実物をチェックした時のこと。
手に吸いつくような焼き締めの急須とか、
洗練された形の鉄瓶、味わい深い粉引のポットなど
50点近くを足の踏み場もないほど並べて、
「どこで撮影する?」
「このうつわの魅力は何だろう?」と
真剣に話し合っていたんですが、
そのうち黒田さんの声が聞こえなくなった。
見ると、漆の茶托を手に取って、撫でまわしているんです。
そして、おもむろに
「ちなみに‥‥これ、おいくらですか?」
って、日野さんに聞くんですよ。

がちょーん!って感じです。
完全にうつわにやられちゃってて
打ち合わせに参加してない。
それからというもの、
「ちなみに‥‥これ、おいくらですか?」
のフレーズは、編集スタッフの間で流行語になりました。
まぁ、そういう和気あいあいとした雰囲気の中、
毎回の編集会議や撮影が行われていたってことです。



和田助製作所のステンレス製ポット。
佇まいがなんとなく日野明子さんに似ていて、
「著者近影」と言いたくなります。
ポットを製作した和田助製作所社長のお墨付き。
©佐藤藍


今回、編集を担当して実感したのは、
日本にはいいものを作る人が
たくさんいるということでした。
つまり、いいうつわは探せばたくさんあるということ。
作家ものだけでなく、工場で作られるものの中にも
質の高いものはたくさんあり、
さらに言うと、工場生産とはいえ、
ひとつひとつ手作りのものもあるんです。

日野明子さんの解説を読めば、
たったひとつのうつわにもストーリーがあるという
ごく当たり前なことに気づかされるでしょう。
そして、すでに知っているうつわも、
まったくちがったものに見えてくると思いますよ。

「うつわの実物を見たい!」という方は、
ぜひ巻末の取扱店リストを参照の上、
問い合わせてみてください。
本もいいけど、どのうつわも本当に魅力的ですから。

青山ブックセンター本店、丸ビル店にて
本書のパネル展示を行っております。
お近くにお寄りの際はどうぞご覧くださいませ。


●青山ブックセンター本店 
 開催中〜5月30日(金)予定

●青山ブックセンター丸ビル店 
 開催中〜5月末まで予定

詳しくは、各店舗までお問い合わせ願います。
青山ブックセンター


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『うつわの手帖ーー【1】お茶』
著者:日野 明子
価格:¥ 1,890 (税込)
発行:ラトルズ
ISBN-13:978-4899772064
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メールの題名に本のタイトルを入れて、
postman@1101.comに送ってください。

2008-05-13-TUE

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