担当編集者は知っている。



『食堂かたつむり』
著者:小川 糸
価格:¥ 1,365 (税込)
発行:ポプラ社
ISBN-13:978-4591100639
【Amazon.co.jpはこちら】


この本は、これまでに
『ちょうちょ』という絵本を出されたことのある
作者・小川糸さんの小説デビュー作です。
悲しみを含むのに、どこかおとぎ話のような設定、
愛を抱きつつ、それぞれに事情を抱える登場人物たち、
実物が見えなくとも、輝かしい料理の数々。
しかしなによりも、この小説が魅力的なのは、
「食べる」とは、奪うことと与えること、
両方を等分に備えているという、とても大事なことを
かくしていないことではないかと思います。
瑞々しい文章で綴られる、かわいらしくも強いお話。
これからのご活躍が楽しみです。
この本を担当されたポプラ社の
吉田さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」小川)


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担当編集者 / ポプラ社 一般書編集部 吉田元子


仕事から家に帰ったら、一緒に住んでいた恋人もろとも
一切の家財が消えていて、
外のガスメーターのボックスに入れていた
ぬか床だけが無事だった。

そんな場面から、この物語は始まります。
茫然とするしかないような、
激しく一方的な形で何もかもを失った主人公の倫子は、
十年ぶりに実家に帰り、
離れを借りて小さな食堂を始めます。
それが、「食堂かたつむり」です。

お世話になった人へ作る、あるものの入ったカレー。
恋人を亡くし、喪に服し続ける老婦人のための
刺激的なフルコース。
高校生のカップルのためのジュテームスープ。

一日一組限定のお客さま
それぞれに合わせて作られる料理は、
どこまでもおいしそうでそそられます。

この食堂で食事をした人には、
ささやかながら不思議な出来事が起こり、
ここを訪れると願いが叶うという噂がたつようにもなります。

‥‥と説明すると、穏やかな癒しの物語のようですが、
そうひと言でくくれないのが、この作品の魅力です。

後半、物語はさらに大胆な展開を見せ、読む私たちを、
予想を越える場所まで連れて行ってくれます。

おいしいものを描いた物語でもありながら、
人が、生きている限りどんな形であれ
必ずし続けなくてはならない
「食べる」ということをつきつめた物語であり、
母と娘の物語でもあり‥‥
甘い、とか、辛い、といった単純な味でなく、
いろいろな味覚が複雑に合わさったうえに
スパイスも効いたひと皿のような物語になっています。

著者の小川さん自身も、まさにそんな人。
一見、おっとりした女性のようで、でも話すうちに、
鋭さ、強さを合わせもつ人であることがわかります。
この作品を読むと誰もが確信すると思われますが、
かなりの「食いしん坊なお料理上手」でもあります。

そんな『食堂かたつむり』の最初の原稿との出逢いは、
しばらく前のこと。
小説の賞への応募作品として届いたものだったのです。
残念ながら受賞にはいたらず、
でも個人的には魅力を感じていたので、
じっくり手をかけて本にしませんか、とお話ししました。
そこから、少しずつ、
時には大胆に手を入れていただいて今の形になりました。
それは、ちょうどスープが煮込まれておいしくなるような、
そんな時間だったのかもしれません。

「ボタンのかけちがい」という表現がありますが、
それで言うなら、この作品は
「次々とボタンがかけられた」感じのする作品です。
本になる過程でも、装丁、装画、オビにいただいたコメント、
どれもが最高の形になったと思っています。
刊行後も、ありがたいことに
たくさんの方の応援を得ています。

ぜひ、魅力的な作家の誕生を、
目撃していただけたらと思います。


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『食堂かたつむり』
著者:小川 糸
価格:¥ 1,365 (税込)
発行:ポプラ社
ISBN-13:978-4591100639
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2008-05-02-FRI

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