担当編集者は知っている。



『本の本
 書評集1994-2007』

著者:斎藤 美奈子
価格:¥ 2,940 (税込)
発行:筑摩書房
ISBN-13:978-4480814876
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さて、今回は『本の本』です。
著者は斎藤美奈子さん。
斎藤美奈子さんと言えば、書評。
しかし、その斎藤さん、
今まで1冊も書評集を出したことがなかった
というの、ご存知でしたか??
デビューして13年。初の書評集がこの本です。
13年分の書評が詰まった、
集大成とも言うべき本がこの本です。
くどくどと説明するのは無理(笑)。
とにかくすごい。量も中身も装丁も!
本の魅力&苦労については、
担当編集者の喜入さんに聞いてみましょう!!
(鶴見)


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担当編集者 / 筑摩書房 喜入冬子


この本は、740頁あります。
原稿の総枚数は400字詰めで約1700枚。
もー感無量です。よくできたものです。

この本の醍醐味は、13年分の読書が
ぎっちり詰まっていること。
目次と索引で、どこからでもどのようにでも読めること。

どんな本が出てたっけ、
あの本、どういう本だったっけ、
そうそうこの本、読みそびれたんだった、
等々、いろんな楽しみ方ができます。


△本を横から見た図
 あの本もこの本もぎっちり詰まってます。


しかし、この形になるまでには、
さまざまな苦難がありました。

斎藤美奈子さんは、1994年に『妊娠小説』という本を
筑摩書房から出して、デビューしています。
その時の担当編集者がMさん。
じつはこの本は当初、その彼が定年を迎える前に、
なにか1冊記念的な仕事をしましょう、
ということで始まった企画でした。
デビュー作を作った編集者と、
それ以後の仕事をすべてまとめた本を作る。
美しい計画でした。

時は2004年。デビュー後ちょうど10年でした。

しかし、2006年、Mさんは定年を迎えます。
本は出来ていませんでした。
なぜなら。

斎藤美奈子さんは、まずは、10年分の書評原稿のデータを
コンピュータからサルベージしました。
(もちろん掲載誌などはありません)
そして思ったそうです。
「この作業は、明日にしよう」

データは、カオスでした。
長さも書き方もいろいろ。
初出掲載年月日も掲載誌も、記述がもあったりなかったり。
なかには、書評されている本が何なのか
書いてない原稿すらあります。
もちろんタイトルの付け方も、バラバラ。
‥‥というわけで、そのまま2年が過ぎ、
そして2年分の書評もまた、蓄積されました。
(もちろんデータで)

Xデーを迎えてしまい、当初の目標を失ったこの本は、
ますます成立が危ぶまれてきました。

このままでは、まずい。

Mさんから引き継いで担当になった私は、2007年、
とにかく全てのデータを強引に手元に引き取りました。
そして、いくつもの原稿がつらなったデータを
1つごとに切り分け、すべて1原稿1文書に整理。
それをエクセルの表にしました。
文書名、タイトル、取り上げた本、初出年月日・初出誌、
これらを一覧できる表にしたのです。
(もちろん、歯ヌケですが)
この表を、書評の膨大なプリントアウトとともに
ダンボールで斎藤さんに送り、
とにかく分類してくれ、とお願いしました。
2007年春のことでした。

カオスに地図ができたのです。一歩前進。

それからも決して順調とは行きませんでしたが、
夏にはとにもかくにも構成案が出来上がりました。
2007年の春までの分を入れて、
2008年の早いうちには必ず出そう、と誓いました。
ここまで行けば、もう少し。
そんな気分でした。

しかしそこに、第2の困難が待ち受けていたのです。
なにしろ、手元にあるのはデータ。
初出誌はありません。
斎藤さんは
「書評のような原稿は、
 ゲラでそんなに手を入れてはいないし、
 わたしがOKなんだから、このデータでいいわよ」
と言います。
でも、初出不明のものは?
転載許可は??
調べないわけには行きません。
そんなに違わないというのならと入稿はデータで済ませ、
ゲラを待つ間に、初出記事を集めることにしました。

大宅文庫と国会図書館に入り浸り、
他社の編集者の協力も仰ぐこと2週間。
なんとか9割がたの記事が集まりました。
表の歯ヌケもだいぶ埋まりました。
そうして、出てきたゲラと突き合わせ。

ゲラは真っ赤に染まりました‥‥。

その後も、初出が判明するたびに順番を入れ替えたり、
やっぱり違ったとまた順番を入れ替えたり、
三校になって間違いに気が付き
またまた順番を入れ替えたり、と作業が続きました。

そうして迎えた2007年年末、目次をつくりました。
「やっとこの本がどういう本なのか分かったね」

‥‥それまでは? 

そうなんです。
目の前に積み重なった
膨大なデータを整理することに精一杯で、
群盲(といっても、著者と編集者のふたりですが)
象を撫でる状態。
この本はどういう特徴と魅力のある本なのか、
いまひとつ確信のないまま、
手探りで前へ前へと進んでいた感があったのです。
深夜のファミレスで、斎藤さんとふたりで、
ほっと安堵のため息をついたのでした。

「ここまで読めたら、すごい。ここまで言えたら、面白い。」
(帯コピーより)

この醍醐味を、ぜひ味わっていただければと思います。


△表紙カバーをとった図
 祖父江慎さんの装幀もどうぞお楽しみあれ。



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『本の本
 書評集1994-2007』

著者:斎藤 美奈子
価格:¥ 2,940 (税込)
発行:筑摩書房
ISBN-13:978-4480814876
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担当編集者さんへの激励や感想などは、
メールの題名に本のタイトルを入れて、
postman@1101.comに送ってください。

2008-04-22-TUE

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