担当編集者は知っている。



『ナイフ投げ師』
著者:スティーヴン・ミルハウザー
翻訳者:柴田 元幸
価格:¥ 2,100 (税込)
発行:白水社
ISBN-13:978-4560092033
【Amazon.co.jpはこちら】



スティーヴン・ミルハウザー は、
『マーティン・ドレスラーの夢』
ピューリッツァー賞を受賞、
本作『ナイフ投げ師』では、
表題作でOヘンリー賞を受賞しています。
現実と夢想の間をゆくような、
不思議の一言で片づけるにはあまりに暴力的である、
ミルハウザーの世界観。
本作では、彼の美しい文章がより研ぎ澄まされており、
その境目が、いつも以上にわからなくなってしまいます。
ある世界にどっぷり浸かることが、
読書のたのしみのひとつであるとするならば、
このミルハウザーは、きっと、
あなたを満足ゆくまで、沈みこませてくれることでしょう。
『イン・ザ・ペニー・アーケード』

『三つの小さな王国』など
日本でのミルハウザーの翻訳のほとんどを務めており、
ポール・オースターの邦訳などでよく知られている、
柴田元幸先生訳で本作もお送りいたします。
漆黒の帯が美しい装丁も、ぜひご覧ください。
この本を担当された白水社の
藤波さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」小川)


******************************************

担当編集者/
  白水社 編集部 藤波健



11月16日、ナイフ投げ師がいる喫茶店

柴田元幸さんから、校正の打ち合わせ場所に、
京急某駅の商店街にある喫茶店を指定される。
初めて行く町と店。時間は午前11時前。
携帯プレーヤーはニール・イネス。

小さな改札を出ると、目の前には交番とハンバーガー屋、
続くアーケード商店街には、
おばさん、おっさん、母さん、坊さん!?
私鉄沿線ならどこにでもあるような町。
ほっとする町。いい町。

予定より早く着いたが店には行かず、
聞いたことがない名前の、大きめなスーパーに入る。
食材を見るのが好きなのだ。
気分高揚。仕事のことを忘れてしまう。

待ち合わせした喫茶店は、いわゆる洒落たカフェではなく、
店名もなんとなく「時代」を感じさせる
(たとえば「ハイライト」とか)、
古くから地元にある感じの店。
(思っていたとおり)
暗くて狭くて急な階段を昇った2階にあった。

カウンターとテーブルが3席ほどの細長い店内。
カウンター内にはマスターと、奥さんと思しき女性、
カウンター席に奥さんの友人と思しきおばさん、
テーブル席には背広姿のおっさん。
おっさんはドライカレーを食っている。旨そう。

テーブル席について、コーヒーを注文する。
女性たちの会話は、出身高校の話?
地元高校よりちょっと偏差値が高い、
ここよりちょっと都会な高校の制服の話。
BGM 代わりの、ちょうどいい音量。
窓の外は、向かいの店の看板。

柴田さん登場。
どさりと校正ゲラをテーブルの上に置く。
柴田さんの赤字は読みやすく、わかりやすく、好きだ。
(筆跡だけでなく、最高の翻訳、
 的確な校正であることは言うまでもありません。)
校正のほか、装丁やカバーのイラスト、
気になるアメリカ小説の話などなど打ち合わせ。
近々、始まるであろう
(大型! )企画に話が移り、熱がこもる。

突然、ドラム。カウンターにスポットライト。
マスターの手にはパン切りナイフ。
まぼろし。いい店。

**************

「ナイフ投げ師」 
ナイフ投げ師ヘンシュが町に公演にやってきた。
その技は見事なものだったが、
血の「しるし」を頂くための、
より危険な雰囲気が重くのしかかる。
「夜の姉妹団」
深夜、少女たちが人目のつかない場所で、
性的狂乱に満ちた集会を開いているという。
その秘密結社を追いかけた、医師の驚くべき告白とは?
「新自動人形劇場」
自動人形の魔力に取り憑かれた、名匠ハインリッヒの物語。
その神業ともいうべき、驚異の人形の数々を紹介する。
「協会の夢」
「協会」に買収された百貨店が新装開店する。
店に施された素晴らしき趣向の魅力は尽きることなく、
私たちを誘惑する。
「パラダイス・パーク」
1921年に開園した伝説の遊園地を回顧する。
遊園地はある種のどぎつさ、
過剰な施設や出し物によって大いに人気を博すが、
そこには意外な結末が待っていた。

「ミルハウザーを好きになることは、
 吸血鬼に噛まれることに似ている。」
と柴田さんが「あとがき」で述べるように、
本書は <ミルハウザーの世界> を堪能できる、
魔法のような12の短篇集です。

***************

新宿で立ち食い蕎麦。

午後、
ジャネット・ウィンターソンの『灯台守の話』
翻訳していただいた、岸本佐知子さんとともに、
新宿、吉祥寺、渋谷、恵比寿の書店さん営業。

夕方、岸本さんと
某駅構内の喫茶店で甘菓子を食し、糖分補給。

夜は会社の親睦会でワイン鯨飲。

11月16日は更けてゆく。いい日。
携帯プレーヤーはラモーンズ。


******************************************



『ナイフ投げ師』
著者:スティーヴン・ミルハウザー
翻訳者:柴田 元幸
価格:¥ 2,100 (税込)
発行:白水社
ISBN-13:978-4560092033
【Amazon.co.jpはこちら】

担当編集者さんへの激励や感想などは、
メールの題名に本のタイトルを入れて、
postman@1101.comに送ってください。

2008-04-15-TUE

BACK
戻る