担当編集者は知っている。



『バタフライハンター
 ――10のとても奇妙で素敵な仕事の物語』

著者:クリス・バラード
翻訳者:渡辺 佐智江
価格:¥ 1,890(税込)
発行:日経BP社
ISBN-13:978-4822246105
【Amazon.co.jpはこちら】


「目玉職人」、「きこりレディ」、
「バタフライハンター」‥‥
見るからに馴染みのないこれらの職業が、
実在することをご存知でしょうか。
あの有名な『ニューヨーク・タイムズ・マガジン』にも
多数の人物ルポを寄稿している著者が、
まるで物語の設定のような仕事に就いている、
その仕事以上にユニークな人々を描いた本書。
翻訳は、『グールド魚類画帖』など、
ちょっと変わった本を翻訳することで
定評のある渡辺佐智江さんが担当。
そして確立された世界観を持つ
クラフト・エヴィング商會が装丁を担当。
さらにその面白さを盛り上げます。
ここに収められた職業が、
物語ではなく、
実在していることにとても驚くことはもちろん、
働くことと、生きることは
こんなに繋がっているのだなと感じいる1冊です。
この本を担当された日経BP社の
川口さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」小川)

******************************************

担当編集者/
  日経BP社 出版局 編集第二部 川口 達也



「素敵な変人たちの本なんです。
 それぞれの話がまるで短編小説のようですが、
 みんな実話です。」
この本についてはそう切り出すことが多いのですが、
もう少しまっとうに言うなら、
テーマはその人にとっての「しごと」(職業)、
あるいは「生きること」、はたまたは、
その二つが表裏にくっ付いてしまった人たちの
人生の物語です。
ただし、こう表現すると、
職業についての“求道もの”のイメージを
もたれてしまいそうなので、急ぎつけ加えれば、
やはり、ユーモア溢れる魅力的な変人列伝なのです。
(こういう表現は真摯な彼ら=登場人物=には、
 本当は失礼なのかもしれませんが、
 この人たちが変人と見えてしまうほどに
 われわれの社会が息苦しいと言うことでしょう。)

本の裏帯のコピーでは、取り上げられている人々を、
「天賦の才? 過激なオタク?
 それとも単なる幸せモノ?」
と表現してみました。
著者クリス・バラードが
ルポした10人のラインナップは、以下の通りです。

「ひたすら高い所に登りたかった」
 スカイウォーカー
「眼球づくりをこよなく愛する」
 目玉職人
「全米きこり競技会で男としのぎを削る」
 きこりレディ
「気づいたら部室で30年が経っていた」
 鉄道模型製作者
「学会主流から離れて『働く意味』を追い求める」
 仕事学者
「映画予告編ナレーションの巨匠」
 声のセールスマン
「高価なキノコの発生をぴたりと当てる」
 キノコ採掘師
「文字からこころの深層を読み取る」
 筆跡探偵
「車椅子のNFLキッカーコーチ」
 アメフト伝道師
「青虫の歌を世界で初めて聴いた」
 バタフライハンター

冒頭に登場する
「スカイウォーカー」マルホランドは、
幼少時から木登りや高いところに上がるのが大好きで、
家族から「おサルさん」と呼ばれていた男性。
海兵隊の特殊訓練などを経たのち、
高層ビルによじ登って補修費用の保険査定などを行う
「スパイダーマン・サービス」という会社を
立ち上げる話です。
ホンマカイナという感じですが、
著者のバラードも、最初そう思ったそうです。
マルホランドさんは、
叫びながら話すような強烈なキャラですが、
歩んできたその人生も強烈至極です。
暴力三昧の悲惨な家庭に育ち、
預けられた里親の家からも追い出され、
路上暮らしでゴミ箱から食料をあさる日々も経験。
「強くなければ生きていけない」と思い、
軍で“殺人機械”並みの喧嘩術を身につけたのち、
ある日ふと天啓が下って、暴力ともLSDとも縁を切り、
大好きだった「高い所へ登る」しごとを極める話です。

「鉄道模型製作者」のネリッチは、
個人的には最も感情移入してしまった登場人物です。
若きネリッチは
ニューヨーク州の技術系大学に入るのですが、
その鉄道模型クラブの部室に入ったとたん、
そこにあったミニチュアの街のレイアウトに
取り憑かれてしまいます。
陶然とその製作に打ち込むうちに、時は流れ、
気づくとエンジニアの卵は、54歳になっていたのです。
途中何度か、これはマズイと考えたネリッチは、
鉄道模型のレイアウトと距離をおくべく、
「アルコール依存症更生会」に入ります。
酒も鉄道模型も、ある種の人々に猛烈な吸引力をもち、
更生会はそれに抗する工夫を授けてくれる点で
同じではないかと考えたからです。
ネリッチは下戸ですが、
依存症患者たちの話にも熱心に耳を傾けてあげます。
自らの貧しさにもかかわらず、帰宅時、
ホームレスにコンビニのドーナツを渡すのが習慣の
心やさしいネリッチ。
“レイアウト依存症”と、彼の人生は
果たして折り合いが付くのでしょうか‥‥。

10人の取材対象はみなかなりユニークなだけに、
その個性も実に様々です。
翻訳者の渡辺佐智江さんは、
障害を持ちながらも、ひたむきに
NFLのプロ選手のキッカーコーチに
這い上がろうとするブレヴィンズに
心打たれたとおっしゃっていました。
ブレヴィンズのすごさは、
ハンディキャップの存否にかかわりなく、
自分よりも優れたプロのキッカーコーチなどいないと
確信していることです。
そして、彼のたどってきたバックグラウンドから、
多くの読者もそれを納得させられてしまう点でしょう。

装丁は、お引き受けいただく前から、
クラフト・エヴィング商會さんしかないと
勝手に決めておりました。
ご覧の見事な出来栄えです。

******************************************



『バタフライハンター
 ――10のとても奇妙で素敵な仕事の物語』

著者:クリス・バラード
翻訳者:渡辺 佐智江
価格:¥ 1,890(税込)
発行:日経BP社
ISBN-13:978-4822246105
【Amazon.co.jpはこちら】

担当編集者さんへの激励や感想などは、
メールの題名に本のタイトルを入れて、
postman@1101.comに送ってください。

2008-04-11-FRI

BACK
戻る