![]() |
| 担当編集者は知っている。 |
|
世の中に「本」と名の付くものは多いが、 ある意味では、どの本だっておもしろい。 『つまらない本はない。 つまらなく読む読者がいるだけだ』 という意見だってあるくらいだ。 本を世に出すには、著者だけではどうにもならない。 どんな本にも担当編集者というパートナーがいる。 もしかしたら、その本のことを著者の次かそれ以上に 知っているのは、担当編集者かもしれない。 「ほぼ日」は、この担当編集者という人々に注目した。 この人たちの担当した「本」や「著者」への愛情を、 できるだけそのまま伝えてもらったら、 本は、もっともっと輝いて見えてくるのではないか。 ベストセラーも、古典も、学術書も、専門書も、 たった数百部しか流通していない本だって、 それの良さが愛情をもって語られたら、 もっと大勢の人たちのところに届けられるだろうし、 もっと深いところまで読みこんでもらえるにちがいない。 ここでは、いろんな本を、 いちばん熱心に読んでほしいと願っている担当編集者に、 ススメてもらいます。 担当は「空中ジーンズ工場」の担当でもあったツルミさん。 出版の世界を、企業間対立を考えずに飛び回ってもらいます。 どうか、各出版社の方々、よろしくご協力おねがいします。 また、 「ぜひこの本を紹介したい」という自薦も待っていますから postman@1101.comにメールをください。 |
ここ最近にオススメした5冊です
|
文学史ってこんなにおもしろかったっけ? と、びっくりした本です。ただの文学史ではありません。 ポー、フィッツジェラルド、サリンジャー、 ピンチョン、オースター‥‥ 著者の渡辺利雄先生の各作品解説を読むと、 なるほど、自分は この作家の「そこ」に惹かれていたんだ、と 気持ちよくストンッとフに落ちます。 歴史に残る偉大な作家たちの、 どこが人の心をとらえ、胸を打つのか、 それはどんな環境から生まれてきたのかを ずばりと解き明かしてくれている 作家論とも作品論ともいえる本です。 アメリカ文学をお好きな方はもちろん、 文を書くことに興味のある方も、ぜひ! この本を担当された研究社の 金子さんにお話をうかがいました。 (「ほぼ日」渡辺) ******************************************* 担当編集者/ 研究社 編集部 金子靖 「東大で20年近くアメリカ文学史の講義を続けまして、 その講義ノートが残っています」 渡辺利雄先生には以前からお話をうかがっていましたが、 実際にその講義ノートの一部を見せていただいたのは、 2005年の7月でした。 渡辺利雄先生は、大橋健三郎先生と並んで、 日本のアメリカ文学の重鎮と言うべき方です。 「学生時代に、大橋先生にアメリカ文学の 楽しみ方を教えていただき、 渡辺先生に英語の読み方を教えていただいたのは、 僕の人生で最も幸運なことの一つです」と 名翻訳者の柴田元幸先生もおっしゃっています。 いかにも、渡辺利雄先生は、 「テキストに書かれてあることを、 オックスフォード英語辞典をはじめとする辞書を しっかり引いて、完全に理解すること」 を徹底して指導されました。 現在アメリカ文学の研究者・翻訳者として 活躍している方の多くが、 学生時代にこの渡辺先生の教えを受けています。 アメリカ文学を含めて、外国語文学は、翻訳でなく、 実際にそのオリジナル言語で読んでみなければ、 完全には理解できません。 そうしてそのような「正確なリーディング」を 何年も積み重ねることで、 世界に通用する、揺るぎない英語力が身につくのです。 そういうことがあるからこそ、 各作品のさわりの英文を引用しつつ、 英語をじっくり読みながら、 その作品の特徴を味わうことができ、 同時にそれを書いた作家の背景を知ることができる 文学史を残したい。 渡辺利雄先生が目指す文学史は、このようなものでした。 『講義アメリカ文学史[全3巻]』は、 ピルグリム・ファーザーズの植民地時代から、 ポール・オースターらが活躍する21世紀まで、 アメリカ文学を89章に渡って 縦横無尽に論じています。 そして複数の執筆者による共同作業ではなく、 渡辺利雄先生ひとりの視点で アメリカの文学全体像をとらえています。 分量は多いですが、時代背景や文学史的に興味ある エピソードやゴシップもたくさん紹介しています。 また引用が非常に多く(約460)、 詩文選としても読めます。 引用の多くは、主要作品のさわりの部分、 海外の研究の定評のある論文の一部です。 本書で取り上げている作家など、 くわしくは弊社のホームページをご参照ください。 渡辺利雄先生は東大で20余年講義をされたわけで、 その約20年分をそのまま本にすれば、 500ページ×10巻本ぐらいになってしまいます。 ですので、まず先生には、 分量を調整していただくことをお願いしました。 そして2005年の9月に全体の構成を固めました。 これだけの大企画ですから、会社としても 相当の覚悟を決めて臨まなければなりませんが、 すぐにGOサインが出ました。 そして、われわれは大きな目標をひとつ立てました。 それは研究社の創立100周年の年にあたる 2007年中に出そう、それも3巻同時刊行で、 というものでした。 ![]() ▲「研究社創立100周年記念出版」の新聞広告。 朝日新聞広告賞11月月間賞と 読売新聞出版広告賞銅賞を受賞。 2005年10月から直ちに始めた編集作業は、 困難を極めました。 先生に手書きのノートをパソコンに入力して 原稿を作ってもらうことをお願いする一方で、 わたしは英文のハンドアウト(授業で配布する資料)を 電子データにする作業を進めました。 印刷会社にスキャナーで読み込んで 電子化してもらいながら、 社内で原典との照合を進めました。 同じ作品でも版によって、 表現が微妙に違っていたりします。 ですから、Library of America版のような 信用できるものに当らないといけません。 多くは渡辺先生のお手持ちのものや、 東大の図書館で借りていただいたもので 照合できたのですが、それでも照合できないものは、 アメリカのパウエル書店から取り寄せました。 パウエル書店では、アマゾンでも手に入らない洋書が 手に入りましたから、ほんとうに助かりました。 (パウエル書店はすばらしい書店です。 ぜひ一度のぞいてみてください。) ![]() ▲渡辺先生の手書きの原稿と東大の講義で使用した 英文ハンドアウトをデータ化するのは大変な作業だった。 本文のレイアウトもすごく大事です。 先生の解説と引用文をバランスよく 提示しなければなりません。 そして小見出し(これをご覧いただくだけで、 大まかな内容がわかるように配慮しました)にも インパクトを持たせないといけません。 レイアウターの古正佳緒里さんは 編集者でもありますので、 そこらへんを計算して 見事なレイアウトを作ってくれました。 そして(身内びいきになってしまいますが) 印刷会社の研究社印刷は、横組み欧文を打たせたら、 日本一どころか、世界でも有数の優秀な会社です。 古正さんと研究社印刷に、今回も大変助けられました。 2007年の1月からいよいよ入稿作業が始まりますが、 原稿用紙5000枚にもおよぶ大変な分量ですから、 なかなか思うように進みません。 5月ぐらいから、編集作業はいよいよ厳しくなりました。 入稿作業だけでなくゲラ校正も進めなければなりません。 そして専門書の場合、日本語の流れだけでなく、 事実確認もきっちりしなければなりません。 本書の場合、英文の記述が大変多い (作品名はすべて英語表記、人物名は各章の初出が 英語表記です)ので、 そのあたりももれなく確認しなければなりません。 さらに引用文や図版は一つひとつ海外の版元と交渉して、 使用権を得る必要があります。 そしてページ数が固まれば、 各巻に索引も作らないといけません。 渡辺先生と、そのあたりの編集・確認作業も 慎重に進めました。 研究社OBの山田浩平という 強力な助っ人を得られたことも大きかったです。 10月に、著者200名、780ページにおよぶ 『イギリス哲学・思想事典』 (これも研究社創立100周年の企画です)も 刊行したので、 9月ぐらいからは土日もまったくない状態になりました。 しかし、やはり渡辺先生は、 わたしよりずっと大変だったと思います。 先生は、原稿の作成、引用文の照合、ゲラ校正、 索引の確認など、すべて同時にこなされました。 昭和10年生まれの渡辺先生は 70歳を超えているはずですが、 一体このパワーはどこから来るのでしょうか? 2007年12月、研究社創立100周年の最後の月に、 本書、渡辺利雄著『講義アメリカ文学史[全3巻]』を なんとか刊行することができました。 A5判3巻本、89章、1500ページにおよぶ、 頁数の大変多いものです。 (各ページは、びっしり文字が詰まっています)。 作家の写真も、そして作品の引用文も、 たくさん入っています。 装丁家の久保和正さんが、 非常にクールな3巻本に仕上げてくれました。 ![]() ▲渡辺利雄著 『講義 アメリカ文学史[全3巻] 東京大学文学部英文科講義録』 photo ©Toru Suzuki 研究社のような専門出版社は、 部数こそ少ないかもしれないですが、 30年、50年と残るものを作らないといけません。 間違いは限りなく少なくしなければなりません。 しかし、同時に計画通りに刊行することが求められます。 記述が正確なものを、予定通りに刊行する。 これを常に目指しています。 本書の副題は、「東京大学文学部英文科講義録」です。 明治31年にラフカディオ・ハーンから始まり、 その後、齊藤勇教授に受け継がれ、現在に続く 東大のアメリカ文学講義の息吹を伝えるものです。 渡辺先生の『講義アメリカ文学史[全3巻]』は、 この先30年、50年と残るものでしょう。 渡辺利雄先生のこの大著を 弊社の創立100周年の年に刊行できたことを、 大変うれしく思います。 ![]() ▲2008年1月27日には出版記念会も行なわれ、 渡辺先生の元同僚や教え子 約90名が参加した。 photo ©Toru Suzuki *******************************************
|
担当編集者さんへの激励や感想などは、
メールの題名に本のタイトルを入れて、
postman@1101.comに送ってください。
2008-02-29-FRI
![]() ホーム |