担当編集者は知っている。


『TOKYO 0円ハウス 0円生活』
著者:坂口恭平
価格:1,575円(税込)
発行:大和書房
ISBN-13: 978-4479391678
【Amazon.co.jpはこちら】


人が住むためにはどれだけの空間が必要なのか?
お金はかけてないけど、
自分の頭で考えて、
自分で家やモノを作っている
路上で生活する人たちから、
家や建築の原点が見えてくるのではないか?
そう考えた建築探検家の著者・坂口さん
ホームレスの住まいを「0円ハウス」と名付け、
隅田川沿いに暮らす鈴木さんに密着取材。
「イロイロ工夫して生きるのは楽しいよ」と語る
鈴木さんの住まいと暮らしから見えてきたものとは?
この本を担当された大和書房の
増渕さんからお話をうかがいました。
(「ほぼ日」渡辺)

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担当編集者/
   大和書房 第二編集局 増渕有



いっそ堕ちるところまで堕ちてしまいたい。
堕ちてしまえば、どんなにラクだろう。
そんな転落願望にとりつかれたこと、ありませんか?
ワタクシは、あります。
そんなワタクシの目は、
雑誌「AERA」のある記事に吸い寄せられました。
記事のタイトルは
「0円生活の方法
 大切なことが全部学べる隅田川の青い家暮らし」。
ブルーシートハウスに住む
ホームレスの生活ノウハウが
書かれているではありませんか!



なるほど、ブルーシートは
花火大会のあとに捨てられたものを拾うんだ。
そうか、クルマ用のバッテリーで電化製品を動かすのか。

ライトなんか当たり前、テレビまであるんだ。
で、バッテリーはガソリンスタンドで
不要になったものを入手する、と。



ふんふん、アルミ缶を拾って稼いだおカネで
食材を買うのか。
焼酎飲みながら、おでんの手料理か〜。
食生活は豊かだな〜。
うーん、これはすごいっ!
もっと詳しく知りたいっ!

そんなわけで、記事を書いた坂口恭平さんに会いました。

会ってみると、坂口さんのキャラがまたおもしろい。
何者なのか、とらえどころのない感じもあるのですが、
情熱、エネルギーがほとばしっています。
さっそく本の執筆を依頼しました。

後日、出てきた原稿を読んでビックリ。
期待を裏切られました。いい意味で。
やはり、これはすごいっ!
ワタクシの頭の中で革命が起きました。
「堕ちるところまで堕ちる=ホームレス」
なんていう考えはとんでもない。
自らの意志と器量で、
自由人として生きているのがホームレスなのです。
坂口さんは、そういう視点でとらえているのです。
実際、坂口さんが密着取材した
隅田川の達人「鈴木さん」の生き方は、
ものすごく魅力的です。
ある意味、なにものにもとらわれず
自由に生きたいという
オトコの願望(オンナもそうか?)を、
鈴木さんは実現してしまっているのです。
「誰にも左右されない、
 自分にすべて決定権がある生活は、
 自分から動かないと大変だけど、
 それなりにイイことも多い」
鈴木さんはそう断言します。
うーん、すばらしい。
それに比べて、オレにはどれほどの決定権があるだろう?
‥‥‥‥‥。
いまは深く考えるまい。

とにかく、既成概念にとらわれていた自分を恥じつつ、
夢中で原稿を読んでしまったわけです。
頭の中の革命は、それだけにとどまりません。
坂口さんは早大の建築学科出身。
ブルーシートハウスを「0円ハウス」と名付け、
建築学的な視点から考察、
「家」というものに関する既成概念に
揺さぶりをかけてきます。
業者任せで建築された現在の「家」よりも、
工夫を凝らして自力で作られる0円ハウスのほうが、
理想の家といえるのではないか。
現在の「家」は、建てるのはおろか、
修理・改築だって人任せになっています。
「家」というものと人間との間に
距離ができてしまっています。
ところが、鈴木さんにとっての「家」は非常に近い。
修理・改築はお手の物。
それどころか、しょっちゅう家を壊して
また建て直しているのです。
というのも、1ヵ月に1回
国土交通省がチェックに来るので
家を一時撤去しなければないから。





鈴木さんは、
「自分は住んでいる家のことをすべて知っている」
と言います。
これこそが「家」のあるべき姿ではないでしょうか。
そう、「ホームレス」は「ホーム」を持っているのです。

本書は、現代建築のあり方について
問題提起をしている本でもあるのです。

坂口さんは早大に在学中から、
こうした問題提起をしてきました。
ですが、こんなラジカルな主張は
そうそう理解してもらえません。
そこであきらめないのが坂口さんのすごいところ。
日本ですぐに理解してもらえないなら
理解してくれるところを探せばいい、と考えました。
卒業後に出版した写真集
『0円ハウス』(リトル・モア)を持って海外に雄飛。
パリやロンドン、ニューヨークの美術館、書店、
ギャラリー、建築学校をグルグル回ったのです。
この狙いは見事に的中、
2006年にはバンクーバー州立美術館で
個展を開くことに。
反響は非常に大きく、
美術学校で講義までしてきたそうです。
その後もケニアのナイロビや
フランスのサン・ナザーレなどで作品展を開催。
世界をまたにかけて活躍し、
鋭い問題提起を続けているのです。





そうした大テーマはさておいても、
0円ハウスって、おもしろいのです。
あえて所々に隙間が空けられていたりします。
夏は涼しく、冬は暖かくするために。
夏には隙間から風が吹き抜けます。
冬にはその隙間を新聞で密閉すれば、
まったく風を通さない。
いわば、伝統的な日本民家のように
作られているわけです。



鈴木さんの家のほかにも、
おもしろい家はいくらでもあります。
なかには、ソーラーシステムを
完備した家まであるのです。

本書では、坂口さん自ら撮影した写真や、
自ら描いたイラストを多数掲載。
0円ハウスの技術と0円生活の方法を
余すところなく描ききっています。
ぜひ手にとってみてください。


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『TOKYO 0円ハウス 0円生活』
著者:坂口恭平
価格:1,575円(税込)
発行:大和書房
ISBN-13: 978-4479391678
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メールの題名に本のタイトルを入れて、
postman@1101.comに送ってください。

2008-02-22-FRI

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