担当編集者は知っている。


『ウタノタネ
 だれでも歌人、どこでも短歌』

著者:天野慶
価格:1,575円(税込)
発行:ポプラ社
ISBN-13: 978-4591101827
【Amazon.co.jpはこちら】


短歌は、今の言葉で書いていいし、
俳句と違って季語なんてない。
それでも、なかなか「趣味は短歌です」という人、
多くはありません。
みんな学校の授業で詠んだことあるのに、
どうして辞めちゃうんでしょうね??
素敵な先生がいないからでしょうか?
天野慶さんは、素敵な素敵な先生です。
その、天野慶さんが、短歌の本を書きました。
この本を片手に短歌を詠む人が増えますように……。
(ツルミ)

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担当編集者/
   牧野出版 小田部信英



天野慶は、短歌界の米村でんじろうである――
キテレツなセッティングの科学実験マジックで、
教科書から溢れてしまった科学の魅力を伝える
米村でんじろう先生。
彼の活動を短歌の世界に置き換えると、
この本の著者・天野慶さんの
お仕事になるのです。

でんじろう先生のアイテムが
水鉄砲やしゃぼん玉なら、
天野さんのアイテムは、
携帯やグッズやアニメーションや喫茶店。
教科書じゃないものに短歌の新しい魅力をのせて、
遠くまで飛ばして、大きく広げてゆく。
それが、天野さんです。

綿菓子へザラメが変わる力学を
   /明日の私に向けて応用


思えば、最初の印象も「先生」でした。

「はじめまして、天野慶です」
(はじめまして、小田部です)

と挨拶を交わす私たちの間には、
“はじめまして、短歌です”
と題された原稿がありました。
ソフトで優しい物腰の文章に、
繊細でどこかノスタルジックな気持ちを呼び起こす
短歌が散りばめられています。
私が原稿に目を落とすと
ストローでアイスティーの氷をゆっくり動かします。
そのしぐさもたおやかで、
原稿で得ていた“お行儀のよい国語の先生”
というイメージは、
お目にかかってなお濃くなりました。
私も珍しくおっとりとかまえて、
打ち合わせにとりかかったのでした。

今はもう団地の底で眠ってる
   /秘密基地には神様がいた


“先生”は、打ち合わせのたびに、
面白い話をしてくれます。

スノードームってご存知ですか。
(あ、夏でもスキーできる‥‥)
ちがいますちがいます、透明な玉に水と、
雪のような白いかけらがたくさん入っている――
(ああ、わかります。)
それに、短歌を入れたんですよ。
(え?)
短歌を入れたんです。
(はあ。)
わたし、スノードームが好きなんです。
(はい。)
だから、入れました。
(えっと‥‥どうやって?)
短歌を小さな色紙に印刷してコーティングして、
水と色ガラスと一緒にですね、入れるんです。
(入れて、どうしましたか。)
机の上で転がすと、転がります。
(球ですからね。)
名づけて、「コトダマ」です。
(ほほう。)――

街角に占いの人が座っていますよね。
(繁華街にいますよね。ナントカの母とか言って。)
あなたの将来、占います、って。
(そうですね。)
あれを短歌でやったんです。
(え?)
あなたの気持ち、短歌にします、って。
(天野さんが、詠む?)
そうです、詠むんです。
(はあ。)
その人のこと、今思ってることだとか、悩みとか、
そういうのを聴いて。
(ヒアリングする、と。)
それで、それにあった歌をですね、
詠んで、紙に書いて、差し上げるんです。
(喜ばれますよね。)
喜ばれますね。
(お金、とるんですか。)
とりませんでしたけど。
(とれそうですよね。)
小田部さん、あなたの短歌を‥‥
(結構です。)――

“先生”は
「これらの実践活動を紹介する章を設けましょう、
 原稿はこれですが、どうでしょうか」
と言います。
(でもこれは天野さん以外の
 誰でもできることではありませんから、
 読者ができることを、
 もしくは、読者ができるように
 書いていただかないと‥‥。)
編集者は悩みます。

夕方は夕方用の地図があり
   /キヨスクなどに売っております


私鉄駅の踏切脇、
昔ながらの洋菓子屋の奥にある喫茶室で
向かい合う著者と編集者。
『ウタノタネ』とタイトルの変わった原稿と台割。
思い切った方向に舵を切りました。

(天野さんがそもそもどうして短歌が好きになって、
 どうして歌人になって、なぜこういうことを考えたり、
 実行したりする人になったか、それを書いてください。
 台割もずいぶん変わります。
 原稿も書き直してください。
 大幅に書き足してください。
 この段階での方針転換、おゆるしください――)

短歌入門基礎編「はじめまして、短歌です」は
第1章になりました。
実践編「うたのおけいこ帖」「短歌であそぼう」は
第2章と第4章。
そして、自らを語る第3章、
「短歌が好きな、わたしのはなし」。
結果的に第1章とほぼ同じ分量になりました。

日溜りに置けばたちまち音立てて
   /花咲くような手紙がほしい


じつは小田部さん、わたし、
でんじろう先生のファンだったんですよ。
(え?)
高校の物理の先生だったんです。
(ホントですか?)
結局授業は受け損ないましたけど。
(はー、それはそれは。)
短歌やっていなけりゃ、今、先生のアシスタントです。
(そうでしょうか‥。)

天野慶は、ほんとうに、
短歌界の米村でんじろうである。
そして、天野慶は、
教科書からこぼれてしまったウタノタネを蒔きつづけ、
飛ばしつづけ、広げつづける。
歌の花が咲き乱れる様子を、少女のように想いながら。


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『ウタノタネ
 だれでも歌人、どこでも短歌』

著者:天野慶
価格:1,575円(税込)
発行:ポプラ社
ISBN-13: 978-4591101827
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2008-02-15-FRI

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