担当編集者は知っている。


『曼谷(バンコク)シャワー』
著者:下関崇子
価格:1,260円(税込)
発行:平安工房
ISBN-13: 978-4902817034
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著者の下関さんは、ダイエット目的で始めた
キックボクシングにはまり、プロデビューまでされた方。
30歳を目前にして、
ムエタイの修行のため単身タイに渡り、
タイで試合をしたり、
タイ人のだんなさんと結婚、出産‥‥。
この本には、ガイドブックや旅行者として
旅をしたくらいでは知ることができない、
タイの生活やタイの人々の人情に溢れてます。
この本の著者であり、編集者でもある
下関さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」渡辺)

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著者・担当編集者/
    フリーライター 下関崇子



この本は、タイ、バンコクの
日本語情報誌「DACO」にて連載中の
生活コラム「曼谷(バンコク)シャワー」の
第100回まで(2001〜2005年連載)を
1冊にまとめたものです。

まず、この本の著者、つまり私について、
紹介させていただきますと、もともとは
東京のテレビのリサーチ会社で働いておりました。
クイズ番組の問題を作ったり、
情報番組の情報を集めたりする仕事です。
さらにフリーで、雑誌のライターや
書籍の企画執筆の仕事もしていました。

やりがいもあって、それなりに充実してはいるものの、
生活は不規則で食生活は不摂生。
運動不足で体重10キロ増になってしまうわ、
彼氏もいないし、これでいいのかっ? って、
独身女子の悩みをかかえていました。

で、友人に誘われて行ってみたのが、
女性向けフィットネスクラスのある
「キックボクシングジム」。
私だってスリムになって彼氏もゲット! 
そんな理由で通い始めたのです。

そう、ここに伏線があるのですが、
キックボクシングのルーツは
タイの国技「ムエタイ」と言われているんです。

ともかく、キックボクシングジムに通ううち、
ジムの同世代女子と、体育会系部活動のノリになり、
アマチュアの試合に出たりしていたら、
プロデビューの話が舞い込みました。

後楽園ホールで試合だなんて、一生に一度の記念になる!
と勢いでデビューしたものの、
プロの女子選手は、すごく少ないのです。
すでにバリバリのベテラン選手と
試合するほかありません。

もっと自分のレベルで、
アマチュアに毛が生えたくらいのレベルで楽しみたい!
ついでに人生もリセットしたい! と、
2000年のミレニアム、
30歳直前のパラサイトシングル(私です)が、
会社を辞めてバンコクに飛んでしまったわけなのです。

で、ムエタイ漬けの日々を過ごして半年ほどたったころ、
縁あって現地の日本語情報誌「DACO」で、
コラムを連載させてもらうことになりました。
これが「曼谷シャワー」のはじまりです。
内容は、ムエタイの話でもいいし、
日常生活のことでもいいし、
好きなことを書いてよい、とのこと。
約2年間の選手生活、トレーナーのタイ人と結婚、
2児をもうけ、2006年に一家で日本に帰国した
今も続く長寿連載となりました。


▲当時住んでいたアパートからの景色。
 けっこう高層ビル(コンドミニアム)が多いです。
 手前の空き地では週末になると闘鶏が行われます。


▲夫の田舎に帰省したときのこと。
 義弟がいとこたちをバイクの前後に乗せてお買い物。
 タイではよくある光景です。


この「曼谷シャワー」は、
連載当初からバンコク在住のみなさまに
ご好評をいただき、
周りのみんなに「単行本にすればいいのに」
と言われてきました。
社交辞令とは思いつつ、ひょっとして売れるかも!? 
なんて、かなりその気になったのですが、
いざ実行に移すとなると、
無名のライターが1冊の本を出すというのは、
並大抵のことじゃありません。

まず、たいていの出版社では、
紹介がないと原稿を見てもらえません。
運がよくても編集者の机の脇に“積読”です。
自力で門をくぐれそうなところに当たろうか、
と思ってネットをさまよっているうちに、
平安工房というオンライン古本屋さんが、
たったひとりでやっている、
“ひとり出版社”にたどりつきました。

なんと、出版社のポリシーが
□1円で売られない本作り
□おもしろければそれでいい
□出来ることは自分ひとりで
□頑張りすぎない
□帯は付けない

さすが古本屋さんだけあって、
「1円で売られない本作り」というのが身にしみます。

で、ハタと思ったのです。
「曼谷シャワー」は、本屋に平積みされて
大ベストセラーになってほしいわけじゃない。
ひっそりこっそり知れ渡ってくれればいい。
「本になるのを待っていた」
「こんな本が読みたかった」と言ってくれる、
数少ない大切な人たちに確実に伝われば、それでいい。
だから、こんなひとり出版社から出してもらうのが
一番お似合いなのでは、と。

「出来ることは自分ひとりで」なので、
編集、校正、デザイン案、イラスト発注などは、
すべて著者の私がやりました。
表紙デザイン、レイアウト、印刷所とのやりとり、
営業は、平安工房の榎本さんがひとりでやっています。

なので、それぞれのプロの方が見たら
「詰めが甘い」という部分も多いと思います。
さっそく誤字も見つかりました。
そんな手作り感があふれる本ですが、
それが「曼谷シャワー」のスパイスになり、
大事な味になっているのではと、
プラス思考をするようにしています。


▲もともとのコラムがタイ在住日本人向けだったので、
 本書には欄外に注釈やどーでもいい解説を
 たくさん加えました。
 「バンコクものしり選手権」に出られるくらい
 ムダ知識いっぱいで、読み応えがあります。



▲イラストはバンコク時代の友人のイラストレーター、
 すあみけいこさんにお願いしました。
 今回は、鉛筆描きのほんわかタッチで描いてくれました。


そうそう、肝心の内容ですが、
自分で自分の本の魅力を説明するのも照れてしまうので、
「DACO」の元編集長であり、
コラム連載時の担当編集者だった青山泉さんに、
バンコクから伝言をもらってきました。

「DACO」元編集長 青山泉

下関さんの「曼谷シャワー」をひとことで言えば、
スルメです。
噛めば噛むほど味がでる。
ぱっと見の派手より、
滋味豊かな笑いがたくさん詰まっている本です。
ムエタイ修行のためにタイに渡ったはずなのに、
「食べて痩せるムエタイ式減量法」のせいで
体重が8キロ増加。
タイ人女性は小柄なので対戦相手がなかなか見つからず、
とうとう男の選手と試合するハメに‥‥と
はじめから微妙にズレてる著者のバンコク生活は、
日タイ文化交流などという言葉が
似合わないほど普段着です。

例えば「タイ人とお習字」の話。
ボランティアで行ったタイの高校で、
タイ人の日本語の先生が用意した
「みせ」「てんぷら」という習字のお題を聞いて
「深い心の壁」を感じつつも
「うーん。そうだ! すしにしましょう、すし!」
と提案してしまう著者。
「すし」もかなり違うと思うんですけど。

ムエタイの師匠であるヨードさんが彼女の夫になると、
「文化交流」が大らかさを増していくのもポイントです。
宵越しの金を持たずにぱっぱと使い切る夫を評して
「唯一ヨードが持っている金目のものといったら
 臓器のみ!? こんな男を夫にするとは、
 私はなんて勇気があるのだろう」
と言い切る彼女の潔さ。

タイに興味がある人にとっては一級のタイ文化論、
クサクサしている人には「人生なんとかなるさ」と
背中を押してもらえる元気印エッセイ、
そしてスルメの味がわかる読書人は
四の五の言わずに読んでみてください。
味わい深い下関ワールドが、あなたを待っています。




▲タイの移動式遊園地。
 よく見ると後ろの回転木馬は、
 日本で見覚えのある風邪薬のキャラクターです。



▲通りには屋台が並び、タイの名物の野良犬も。
 なかには見るからにヤバそう(狂犬病)なのもいて、
 うっかり刺激すると大変なことに。


あれこれ試行錯誤をし、
わくわくしながら、本作りができたと思っています。
どうぞよろしくお願いいたします。

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『曼谷(バンコク)シャワー』
著者:下関崇子
価格:1,260円(税込)
発行:平安工房
ISBN-13: 978-4902817034
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担当編集者さんへの激励や感想などは、
メールの題名に本のタイトルを入れて、
postman@1101.comに送ってください。

2008-01-22-TUE

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