担当編集者は知っている。


『まんがキッチン』
著者:福田里香
価格:1,680円(税込)
発行:アスペクト
ISBN-13: 978-4757213104
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著者は料理研究家の福田里香さん。
この本はまんがとお菓子をテーマにした
レシピ&エッセイで、
作品に登場する食べ物を軸にまんがを論じる
新しいまんが評論としても興味深いです。
対談では羽海野チカさん、萩尾望都さん、
くらもちふさこさん、よしながふみさんが登場。
まんがをお好きな方にも、
お菓子がお好きな方にも
ぜひ読んでいただきたい1冊です。
この本を担当されたアスペクトの
田尻さんにお話をうかがいました。
(「ほぼ日」渡辺)

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担当編集者/
アスペクト 田尻彩子


著者の福田里香さんは、
お菓子と果物を専門とした可愛いレシピと、
素敵なスタイリングで多くのファンをもつ料理研究家。
その福田さんの最新著作が、なぜ「まんが」? 
‥‥答えはいたってかんたん。
福田さんが「お菓子」と同じぐらい
愛している存在が「まんが」だからです。
そもそも、福田さんがお菓子に目覚めたのは、
萩尾望都先生のまんが『ケーキ ケーキ ケーキ』が
きっかけということですから、
福田さんの中で、「まんが」と「お菓子」は
分けて考えられない存在なのかもしれません。

さて、この本は、タイトルの通り
「少女まんが」と「お菓子」を組み合わせた
レシピ本ですが、ここで少し補足を。

まずひとつは、この本で紹介されているまんがは、
お菓子や食べ物そのものを主役にした作品が
ほとんどないということです。
それは、著者のまんが家さん本人が
ほとんど無意識に食べ物を
コマに描き込んでいるにも関わらず、
食べ物や食卓のシーンで
人間関係や人物の気持ちが
驚くほど鮮明に読み取れる作品を選んでいるからです。
それが福田さんの考える「フードまんが」です。

そしてもうひとつ、
この本で紹介しているレシピは、
まんがの中に出てくるお菓子を
再現したものではありません。
『ハチミツとクローバー』のはぐちゃんに似せた
「はぐちゃん☆コロボックル飴」、
『エマ』の世界で作られていそうな
「新米メイドさんのビスケット」、
なかには『のだめカンタービレ』の主人公
のだめの口癖の「ぎゃぼ!」から生まれた
「ぎゃ棒」なんてダジャレ交じりのお菓子もあります。
これらのメニューは、
すべて福田さんが作品を読み込み、
イメージを膨らませて作りあげたものです。
「まんがに出てくるお菓子」のレシピを
紹介する本にしたほうが、
わかりやすい本になったかもしれません。
でも福田さんはこう言います。
「まんがの中に登場する食べ物は、
 その関係性の中にあるからこそ、
 読者がおいしそうと感じるんです。
 安易に三次元へ置き換えるべきではない
 と思ったんです」と。
 

▲「はぐちゃん☆コロボックル飴」のページ。

この本について、福田さん自身は
「他人のふんどし(=名作まんが)で
 相撲をとってしまって申し訳ない」と
何度も言っていました。
しかしこれは、
福田さんが愛してやまないまんがの中でも、
特に愛おしい30作品にむけての、
渾身の力を込めて書かれたラブレターであり、
食べ物を通して読み解いた
斬新な少女まんが評論であり、
そこに福田さんのレシピが花を添えた、
1冊で2度も3度もおいしい本なのです。

超多忙な身なのに、
とてもとても可愛いイラストを
描き下ろしてくださった羽海野チカ先生、
突然の申し入れに、
快く対談を引き受けてくださった
萩尾望都先生、くらもちふさこ先生には
企画の内容をほめていただきました
(そこで福田さんが
 感極まって泣きだすハプニングも)。
自身の作品について冷静に分析しつつも、
福田さんと熱いトークを繰り広げる姿が
カッコよかった、よしながふみ先生。
まるで福田さんの生態(!?)を見てきたような
描きおろしまんが「Rサン」を描いてくださった
やまだないと先生。
そして作品の掲載を快諾してくだった先生方。
これほどたくさんの、
そして素晴らしい方々にご協力いただけたのも、
福田さんの「まんが愛」の賜物だと思っています。


▲「ライ麦と塩の、西洋眼鏡プレッツェル」のページ。

雑誌「ガーリー」連載時から担当を務め、
編集&カメラマンという大変な仕事を
ふたつも背負ってがんばってくださった藤本昌さん
(写真も、それはそれはキュートです)、
私たち(主に福田さん)の
「文字はまんが風のゴシック体と
 明朝体が混ざったフォントにしてほしい」、
「レイアウトイメージはまんがのコマに。
 いやいやこの絵はもっと大きく」‥‥などの
細かい注文にこたえた上で、
ご自身も細部にこだわって
素敵な本に仕上げてくださった
デザイナーの中村善郎さん。
そして、制作時はもちろん、
書店への挨拶回りや出版記念イベントまで
率先して行ってくださった福田さんと、
関わった人すべてが、
全力でぶつかってできあがった本です。
そんな気合を、誌面の濃さから
感じとっていただければ幸いです。


▲ギャラリー・artdishで開催した『まんがキッチン展』。
福田さんの写真・原画の展示と
福田さんのインスタレーションのほか、
やまだないと先生と福田さんの
トークショーなども行いました。
撮影:藤本昌



▲会場には掲載まんがの一部を読めるスペースも。
 テーマは「世界一素敵なまんが喫茶」
 撮影:藤本昌


さて、長々と書いてしまいましたが、
最後にこの本でとりあげている
少女まんがの一覧をご覧ください。
この本の福田さんの熱いまんが論を読めば、
まんがを読みたくなるのはもちろん、
誰かとまんがについて語り合いたくなること
うけあいです。

『ハチミツとクローバー』羽海野チカ
『のだめカンタービレ』二ノ宮知子
『笑う大天使』川原泉
『D班レポート』坂田靖子
『はみだしっ子』三原順
『西荻夫婦』やまだないと
『くちびるから散弾銃』岡崎京子
『いちご物語』 『グーグーだって猫である』大島弓子
『天然コケッコー』くらもちふさこ
『時をかける少女』細田守
『Landreaall』 おがきちか
『エマ』森薫
『Under the Rose』船戸明里
『ベルサイユのばら』池田理代子
『放浪息子』志村貴子
『アラベスク』 『舞姫 テレプシコーラ』山岸涼子
『アナスタシアとおとなり』花郁悠紀子
『Papa told me』榛野なな恵
『マルメロジャムをひとすくい』田渕由美子
(田渕由美子作品集★1『フランス窓便り』に収録)
『おいしい恋グスリ』陸奥A子
『たそがれ時に見つけたの』に収録)
『西洋骨董洋菓子店』よしながふみ
『百鬼夜行抄』今市子
『バスで四時に』高野文子(『棒がいっぽん』に収録)
『蟲師』漆原友紀
『リストランテ・パラディーゾ』オノ・ナツメ
『コダマの谷』入江亜季
『トーマの心臓』 『バルバラ異界』萩尾望都

『まんがキッチン』は少女まんがの名作の
手引き書にもなります。
好きなまんがばかりが載っている
という方はもちろんですが、
未読のまんがばかりだなと思われた方も、
『まんがキッチン』とともに、
『まんがキッチン』の中で紹介されているまんがを
ぜひ読んでいただきたいと思います。
まだ読んでいない魅力的な作品が、
たくさんあるってことは幸せなことですから!

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『まんがキッチン』
著者:福田里香
価格:1,680円(税込)
発行:アスペクト
ISBN-13: 978-4757213104
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2007-07-20-FRI

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