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| 担当編集者は知っている。 |
著者は彫刻家の三沢厚彦さん。 本を開くとシロクマや犬、猫、うさぎ、キリンなど たくさんの動物たちの迫力ある彫刻作品がいっぱい! がっちりして、ごついようでいて、とても繊細。 ユーモラスで、ドキッとする、木でできた動物たちです。 この本は三沢さんの作品集でもあり、 今年、各地で開催されている展覧会、 三沢厚彦展「ANIMALS+」の カタログでもあります。 担当された求龍堂の佐藤さんにお話をうかがいました。 (「ほぼ日」渡辺) *********************************** 担当編集者/ 求龍堂 編集部 佐藤佳子 展覧会カタログの代わりに作品集を 今回の本は2002年に求龍堂から刊行した、 彫刻家三沢厚彦さんの作品集 『ANIMALS』の第2弾となり、 2002年以降から新作までの主要作品を掲載しています。 三沢氏は動物をテーマに創作活動を続けている作家で、 今は初の全国巡回展の真っ最中です。 通常では展覧会カタログは会場で販売されるのみですが、 今回は書店でも買える作品集を刊行し、 それを展覧会会場でも販売するという形をとっています。 展覧会が終わってしまうと、 たいてい展覧会のカタログは その後、手に入らなくなってしまいます。 ですが、せっかく作るのであれば たくさんの読者に見て欲しいと思い、 後々でも手に入るような作品集にしました。 ですからこの本は、 三沢作品を世に送り出した西村画廊や、 平塚市美術館、旭川美術館、伊丹市立美術館などの たくさんの方が関わって作った作品集なんです。 ![]() ▲本の表紙にもなったシロクマ。 背景に材木があるのはこの場所が製材所だから。 大きいものはここで作るそうです。 撮影から立ち会い 編集作業は、まず、近作の作品の撮影から始まりました。 展覧会最初の会場となる 平塚市美術館に続々と作品が運びこまれ、 開梱されていきます。 絵画と違って立体の彫刻は 移動するのにも手がかかります。 ほぼ等身大の象やユニコーン (ユニコーンの実物は想像でしかありませんけれど)は 数百キロの重量があるため、動かすだけでも大変です。 それらの動物の群れを1つ1つ撮影するのには セッティングから撮影まで約1日がかりという 大変な作業でした。 彫刻は全方向から見ることができるため、 角度が違えば印象も変わって見えます。 そのためライティングから置き位置などの指示も 三沢氏自身が全て出していました。 展覧会会場自体も三沢氏のプロデュースで行われました。 この後の本の編集制作にも三沢氏は細かいところまで 目を光らせていくのです。 ところで、その時、初めてわかったことがあります。 三沢氏の彫刻は素材が木でできているため、 できたばかりの彫刻には、 見えない場所に割れ目をいれています。 湿気が抜けて、彫刻が安定してから そこを埋めるそうです。 また、彫刻の素材にはくすのきを使っているので 独特のいい香りがします。 展覧会に行かれた方は気が付いたかもしれませんが、 会場自体に、ほのかに木の良い香りがします。 ![]() ▲三沢氏の彫刻は目に特徴あり。 向き合うと見つめられている気がします。 彫刻家の粘り腰 作品集を制作するにあたって、 三沢氏には何度も打ち合わせに来ていただきました。 そのときに思ったことは 「彫刻家とはこういうものか!」 と思えるほどに、粘り強い、ということ。 ざっくり全体を決めて細かいところを煮詰めていく という方法ではなく、 三沢氏は最初の1ページから、 きっちり内容を詰めてレイアウトを決めていく という方法をとり、 いつ終わりが来るのかと思うほど 気の遠くなるような作業を 繰り返し、繰り返し行うのです。 それも、掲載図版が変更になると その度にまた一からスタートという調子です。 普段から1本の丸太を、ノミで削って削って、 形を作っていくという作業をやっている人でないと こんなやり方はできないだろうなぁと思って 感心するばかりでした。 刊行までのスケジュールは非常にタイトでしたが、 作品集の中扉に使う文字や 作品集の裏表紙のユニコーンの ドローイングもお願いすると 「いい本ができるなら」 と快く本のために描いてくださいました。 ![]() ▲「かわいい」ワケではないけれど 心ひかれる不思議なポーズ。 作品集なのに対談3本 三沢氏はもともと大学時代に ラグビーをやっていたスポーツマンで 「兄貴!」と呼びたくなるような風貌なのですが、 実際は大変繊細な人です。 今回の本には美術評論家の酒井忠康氏、 『ぐりとぐら』の中川李枝子さん、 写真家の森山大道氏との対談が3本収録されています。 なかでも三沢氏が大ファンであった 森山氏との対談は、今回の一番の肝でした。 対談は、森山氏の行きつけの 新宿ゴールデン街のとあるバーで夜に収録しました。 緊張のせいか三沢さんの語りも 最初のうちはあまり進まず、 時間が流れて行くばかり。 森山氏も饒舌な方ではないので、ハラハラしていました。 しかしお二方とも メイプルソープやウォーホルが大好きだとわかり、 その共通点をきっかけに、話が弾みはじめました。 お酒もまわって夜も更けた頃には、 今度はレコーダーのバッテリーの残量を 心配しながらの収録となりました。 ![]() ▲三沢自筆メモ。 打ち合わせ中でも紙があれば絵をかいてしまう。 実物もすごいが作品集もすごい! と言ってもらえるために 三沢氏の作る動物は、写実的な動物ではなく、 三沢氏の目を通した三沢氏独自の動物ですが、 今にも動き出しそうな躍動感を感じる作品です。 実際に作品を見ると、彫刻刀の削り跡一つ一つが 生きている動物のように呼吸している気さえします。 その立体作品を作品集という平面に落しこむ際には、 とにかくその躍動感を失くさないようにしようと、 気を付けました。 撮影の段階から、置く場所やライティングに 細心の注意を払い、 写真になった段階でも、 動物たちの呼吸が感じられるようにしました。 さらにどういった並びで動物を配置すれば 読む人が気持ち良く動物たちを好きになってくれるか、 図版の大きさも、小さくしたり、大きくしたり、 横にずらしたり、バックの色を変えたりと、 細やかに細やかに作業しました。 実際に展覧会をご覧になれなかった方たちでも 三沢氏の世界を感じてもらえる 作品集になったのではないかと自負しています(笑)。 本を見てくださる読者の方に 三沢氏のアトリエに行くと、 まるでおもちゃ箱をひっくりかえしたような状態です。 制作中の作品やドローイング、大好きな音楽のCDや本。 見ているだけで、知らない世界に 踏み込んでしまったような気分になります。 この本をきっかけに、そんな三沢氏の独特の世界を 読者のみなさまに想像して、 楽しんでいただければ幸いです。 ![]() ▲三沢氏のアトリエ。 いろいろな作品がここから生まれました。
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2007-06-22-FRI
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